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暮しを楽しむの手帖
お茶処しまだ#4 サッカーサポーターを“茶パネット”がおもてなし!?スポーツが紡ぐ人と地域のあたたかな縁

長崎のスポーツチームと言えば、やっぱりプロサッカークラブのV・ファーレン長崎。本拠地である諫早市では、ホームゲーム開催日になるとJR諫早駅からトランスコスモススタジアム長崎まで続くV・ファーレンロードを大勢のサポーターが歩いている光景をよく目にします。

そんなV・ファーレンロードの名物と言えば地元・諫早の方々によるおもてなし。JR諫早駅からほど近いお茶の間通り商店街にある「お茶処しまだ」でも、店の前にチームカラーの青いテントを張って季節に合わせたお茶やお菓子、パンなどをふるまっています。

「観戦に向かうサポーターの皆さんのワクワクした表情がいいですよね」とほほ笑むのは6代目店主の嶋田祐子さん。今回はV・ファーレンロードでのおもてなしや商店街の若手が中心になって取り組む「4時からマルシェ」といった町おこしに関するお話、さらに今後の展望についてインタビューしていきたいと思います。

画像はInstagramより

若者の「日本茶に親しむ」という敷居をさげていきたい

V・ファーレンロードでのおもてなしはいつごろから取り組まれているのですか?

嶋田さん:J1に上がる前の年だから2017年かな。当時はサッカーのことは全く分からなかったのですが、せっかく観戦にくるサポーターの方たちが通るのだからお茶屋らしく飲み物をふるまおうと思ったんです。試合の日に歩くサポーターの皆さんの多さと熱量を初めて経験した時は「こんなにたくさんの人の流れを作るサッカーってすごい!」と感じたことを覚えています。

「勝とう茶」に「勝利のパンパカパン」「おからの勝んとう(かりんとう)」など、ふるまいアイテムのネーミングもサポーターの皆さんの後押ししているようで素敵です。

嶋田さん:ホームゲームの特別感を出したいなと思って。ちなみにおもてなしブースは親会社のジャパネットたかたさんをモチーフに「茶パネットシマダ」と呼んでいるんですよ。暑い時期は勝とう茶スカッシュや勝氷(かき氷)、寒くなったら温かい「勝ってスープ」と季節に合わせたおもてなしを続けています。

画像はInstagramより
おもてなしに関わるようになって良かったことはなんでしょうか。

嶋田さん:やっぱり全国津々浦々から諫早にいらっしゃるサポーターの皆さんやクラブ関係者の方々と交流できることですよね。普段はお茶屋に行かないような人たちが立ち寄ってくださったり、アカデミー所属の学生さんが手伝ってくださったり・・・。いろんな経験が私にとっての宝物。そうそう、J1昇格当時に社長だった高田明さんがお越しくださったときに「茶パネットの嶋田でございます」ってご挨拶したのも良い思い出ですね。

少し話は変わりますが、お茶処しまだがあるお茶の間通り商店街では諫早の新たなまちの賑わいづくりとして、今年(2023年)6月から毎週金曜日の夕方に「4時からマルシェ」が開催されています。

嶋田さん:「4時からマルシェ(https://www.instagram.com/pm4_marche/)」は学生さんや地域の皆さんからお聞きした「こうなったらいいな」というアイデアを基に生まれた企画。金曜日の夕方16~19時とすることで日常的な賑わいを演出しつつ、運営や出店者の負担を軽減して継続して取り組めるように配慮しています。

一過性のイベントにならないよう、商店街全体で工夫しながら取り組んでいらっしゃるんですね。

嶋田さん:中心になっているのは商店街の若手メンバーや学生ボランティアの皆さん。SNSで出店者の情報を発信したり、商品を紹介したりと精力的に動いてくださってだんだんとマルシェを目的に訪れる人も多くなってきたんですよ。当初は9月末までだった計画が10月以降も継続されることが決まり、私もすごく勉強になりました。

ベーグルやアクセサリー、スイーツに駄菓子、占い・・・と多様なお店が並ぶ「4時からマルシェ」。お茶処しまだではどのような商品を販売しているのですか?

嶋田さん:「こだわり抹茶の4時からパフェ」と「こだわりほうじ茶の4時からパフェ」の2種類。抹茶・ほうじ茶の風味とほどよい甘さがちょうど良い柔らかいシャーベットの上にアイスやあんこを乗せたお茶スイーツです。見た目も可愛いのでリピーターも多くて、4時からマルシェの時間になると足を運んでくれる高校生もいるくらいなんですよ。

画像はInstagramより
では最後に、今後の展望をお教えください。

嶋田さん:今、力を入れているのが「美味しいティーバッグ商品」の開発なんです。理由は若い方に日本茶に興味を持ってもらいたいから。自宅で急須に茶葉を入れてお茶を作るというご家庭が少なくなっている中で、気軽に作ることができるティーバッグは「お茶に親しむ」というハードルを下げてくれるのではないかと考えています。

手に取っていただきやすいパッケージデザインや若者が興味を持つネーミングからもその工夫が感じられます。

嶋田さん:ありがとうございます。お茶は知れば知るほど、飲めば飲むほど深みにはまっていってしまう、とても魅力的なもの。だからこそたくさんの人に伝えたい、広めたいと思っています。いつでもだれでもお茶を楽しめる博覧会のような場所をめざしてこれからも丁寧におもてなしをしていきたいですね。

東彼杵で茶工場・卸売を営んできた「しまだ」を自分の代で小売業へと切り替え、諫早の地で店舗を切り盛りしてきた嶋田さん。明治時代から続く老舗の店主として、20年以上活動してきた長崎県初の日本茶インストラクターとして、その魅力を伝えてきました。

優しいまなざしを浮かべながら「お茶が私の人生に宝物をくれたんです」と語る6代目。無駄のない洗練された手つきで急須からお茶を注ぐ姿から培った上品さを感じます。

「一服、どうぞ」

そういって差し出された湯呑を手に取り口元へ。ほのかな香りを楽しんで湯気が立つお茶を一口いただくと、茶葉の甘さとうま味のハーモニーが舌の上に広がります。ごくりと喉の奥に流し込んでも口の中に残る豊かな味わいに、嶋田さんの深いお茶愛を感じずにはいられませんでした。

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
お茶処しまだ

長崎県諫早市永昌東町7-10 ( Google MAP

営業時間:

10:00~18:00(日曜・祝日定休)

TEL: 0957-23-0246

URL:https://www.tea-shimada.com/