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暮しを楽しむの手帖
お茶処しまだ#2 長崎県の日本茶インストラクター第一号。20年来の活動から感じた日本茶の魅力とは

古くから茶葉の生産地として知られる長崎県東彼杵町。山あいの斜面に広がる茶畑で作られる長崎そのぎ茶はその品質の高さから日本一を受賞するなど、近年、注目を集めています。そんな東彼杵町で明治時代から茶工場を営む卸問屋をルーツとしているのが、諫早市のお茶の間通り商店街に店を構える「お茶処しまだ」。大きく“茶”と書かれた暖簾をくぐると、長崎そのぎ茶や福岡八女茶といった九州産の商品が整然と陳列されています。

「先代までは製造・卸売がメインでしたが、私の代で小売りへと業態を変えました。元々、家業を継ぐつもりはなかったのですが、お茶の老舗として先祖代々受け継いできた『しまだ』の屋号を守りたいという母の願いを叶えたいと思い、30代でこの店を開きました」

そう話すのは6代目店主の嶋田祐子さん。実は、嶋田さんは長崎県の“日本茶インストラクター”認定第一号で、自身が開催するセミナーや教育現場での講師として日本茶の魅力を伝える活動を続けていらっしゃいます。そこで今回は、嶋田さんの日本茶インストラクターとしての活動をお聞きしながら、改めて私たちの生活の中で身近な日本茶の魅力について考えてみたいと思います。

セミナーに出前授業、地域振興・・・。日々、お茶の魅力を精力的に伝えています。

日本茶インストラクターの資格を取ろうと思ったきっかけを教えてください

嶋田さん:日本茶の勉強をしなきゃいけない、と感じたことが大きいですね。家業を継いで小売業をメインでやり始めたものの、私自身、お茶に関する知識はあまりなくて。もちろん、先代の父や母が教えてくれることもたくさんあったのですが、6代目としてもっと広くお茶のことを知る必要があると考えるようになったんです。

資格が目的ではなく、日本茶についての知識を学びたいという想いが強かったわけですね。

嶋田さん:そうです。ただ、日本の西の果てにいながらどうやって勉強したらいいのか見当もつかなくて、当時は悶々としながら過ごしていました。そんなある日、たまたま送られてきた農業新聞に「日本茶インストラクター」の記事が書いてあったんです。通信教育で2期生の募集が始まるということで、これだ!と思ってすぐに申し込みましたね。

それが23年前。実際に学んでみていかがでしたか?

嶋田さん:最初にテキスト見た時はすごく感動しました。「こんなに勉強できることがあるんだ!」って。最初は講座だけを受けるつもりでしたが、せっかくなので資格試験も受けてみることにしたんです。一次は筆記、二次は品質鑑定などの実技。合格できた時は本当に嬉しかったですし、なにより日本各地のインストラクターの方々と交流する中で新しいお茶の世界に足を踏み入れたようで、とても良い経験になりました。

画像はInstagramより
それから20年以上、長崎県第一号の日本茶インストラクターとして日本茶の普及活動に努めていらっしゃいます。

嶋田さん:資格を取った当時、お茶の淹れ方セミナー開いたらたくさんの申込があって。それだけ興味がある人がいるんだなと嬉しさがこみ上げてきました。あとは、学校関係からの依頼で出張授業を開いたり・・・。子どもたちに日本茶文化を伝えるための活動が広がっていったのはインストラクター冥利につきますよね。

2017年に諫早商業高校の商業クラブがそのぎ茶の若手生産者とコラボレートして開発した“高校生が作った「ヤバイ」お茶”にも関わりがあると聞きました。

嶋田さん:実は、商業クラブと生産者それぞれに声をかけたのは私なんです。思いついたのはセミナーに参加した高校生の「日本茶、ヤバイ」という褒め言葉。そんな高校生たちがマイボトルに入れて学校に持っていきたくなるようなお茶ができたら地域活性化の1つのモデルになるな、と。

高校生が地元のお茶の研究をするきっかけにもなったわけですね。

嶋田さん:高校側も生産者も共同開発にすごく乗り気で、すごく良い商品ができたので提案して良かったと感じました。ウチはV・ファーレン長崎のホームゲームがあるときに駅からスタジアムに歩くサポーターの方々へおもてなしをしているのですが、商業クラブの子たちと一緒にヤバイお茶をふるまったのは良い思い出です。

画像はInstagramより
茶葉の卸問屋に生を受け、長年、日本茶インストラクターとして活動する嶋田さんにとって日本茶の魅力とは何でしょうか。

嶋田さん:やっぱり「ほっとするもの」だと思います。お茶にはテアニンといううま味成分が含まれていて、飲むことでリラックス効果があるとされています。加えて、日本の文化として来客があるとお茶を出しますよね。これには喉を潤すということだけでなく、「一服どうぞ」って落ち着いていただく意味合いもあるんですよ。

なるほど。

嶋田さん:だから、商談だったり家庭でも重要なことを話したりする場面では、まずはお互いにお茶を一口飲んでみる。すると心が落ち着いて相手にも自分にもしっかり向き合えることがあるんですよ。誰もが日ごろから口にする飲み物でありながら、そういう不思議な力があるのも日本茶の魅力じゃないかなと思います。

茶葉を急須に入れるベーシックな飲み方だけでなく、ティーバッグ、溶かして飲む粉末タイプ、ペットボトルなど私たちにとって身近な飲料である日本茶。幅広い世代がライフスタイルに合わせてお茶を飲むという文化があるということはとても素敵なことだと嶋田さんは話します。

「日本茶のうま味、というフレーズをよく耳にしますが、日本茶以外の飲料でうま味があるものはなかなかないんですよ。古くから食生活の中でうま味にふれてきた日本人だからこそ、日本茶独特のうま味に気づくことができたんじゃないか。そう考えるととてもユニークな飲み物ですし、他の飲料とは違う魅力の1つなのかもしれませんね」

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
お茶処しまだ

長崎県諫早市永昌東町7-10 ( Google MAP

営業時間:

10:00~18:00(日曜・祝日定休)

TEL: 0957-23-0246

URL:https://www.tea-shimada.com/