お茶処しまだ#1 ルーツは日本有数のお茶処・東彼杵。両親の想いを胸に6代目が営む諫早の茶葉販売店のヒストリー

お茶処しまだ

長崎新幹線の開業により新しくなったJR諫早駅。その東側には線路と並行するようにメインストリートが伸び、沿道にはさまざまなお店が軒を連ねています。そんなどこか懐かしさを感じる諫早駅前商店街（お茶の間通り商店街）に店を構えているのが茶葉販売店「お茶処しまだ」です。

お茶処しまだの発祥は佐賀県嬉野市と言われ、明治初期より東彼杵町に工場を構えて茶卸問屋を営んできました。今は諫早の地で長崎県のそのぎ茶や福岡県の八女茶を中心に取り扱う小売業へと業態を変えて店舗運営を行う傍ら、生産者との協同による自社ブランド商品の開発にも注力。その歴史を背景に製造された商品は高い評価を受け、2019年には個性的な日本茶を発掘・発信するコンテスト・日本茶アワードにおいて「八女伝統本玉露絶品」が日本茶大賞・農林水産大臣賞を獲得しています。

そんな選りすぐりの商品を取り扱っているお店におじゃますると、素敵な笑顔で出迎えてくれたのが6代目の嶋田祐子さん。先代より受け継いだお茶への想いを大切に選りすぐりのお茶を販売しているという嶋田さんに「お茶処しまだ」の歴史について伺いました。

両親の残したお茶のネットワークが私を支えてくれた

まずは先代、嶋田さんのお父様のことについてお聞かせください。

嶋田さん：父は元々、東京の大学に進学してそのまま向こうで就職したんです。でも、働き始めてすぐに私の祖父（4代目）が体調を崩してしまって。昭和30年代、老舗の茶工場として受け継がれてきた家業を守るため「すぐに帰ってきなさい」と言われ、20代で跡を継ぐことになりました。

跡取りとはいえ、修行を積んでいない若者が5代目となるのは大変だったと思います。

嶋田さん：当時は茶葉づくりの右も左もわからなかったので、茶業試験場に毎日通って勉強。特に仕上げ工程の「火入れ」について研究を重ね、奥ゆきのある香りと甘みを引き出す強火での仕上げが評価され、仕上げ部門の全国大会で入賞もしたんですよ。

若い頃から真摯にお茶に向き合っていらっしゃったんですね。

嶋田さん：そんな父の得意先のひとつが諫早のスーパーでした。そのスーパーが閉店することになった時に、「嶋田さんのお茶にはお得意様も付いてるし、この辺りで小売店やったらどうですか」って話があって。それで昭和45年頃に諫早に店舗を出しました。父はお茶職人だったので、母が彼杵から通って店を開いていたんです。

先代が手がける商品が「しまだ」と諫早の縁を結んだ、と。

嶋田さん：そうですね。そこから25年ほど経って平成元年に私が6代目を継ぐことになりました。ただ、父のお茶づくりをリスペクトしている反面、自分が製造・卸売でやっていくのは難しいと感じたのも事実。そこで、信頼できる製茶工場と一緒に自社ブランド製品を作る小売業という形でやっていこうと決意しました。

それを聞いたご両親の反応はどうだったのですか？

嶋田さん：任せるからあなたの好きなようにしていいよ、と。当時はアラサーだったので、今思えば怖いもの知らずというか、若さゆえの勢いというか（笑）。そんな自分を支えてくれたのが、両親が築いてくれていたいろんな方とのネットワーク。そのおかげで今があると感じています。

自社ブランド商品も日本茶アワードなどのコンテストでさまざまな賞を受賞し話題になりました。嶋田さんにとっておいしいお茶づくりとは？

嶋田さん：おいしいお茶は上質な原葉と仕上げ方。私が茶葉を作ることはできないので、しまだの好みを良く知る問屋さんのお力を借りて開発しました。受賞は私だけの力ではなく、親が残してくれた環境や支えてくださる方々のおかげ。こうして日本茶の魅力をたくさんの方にお伝えできることが嬉しく、本当に感謝しかないですね。