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暮しを楽しむの手帖
炭火焼鳥ひよっこ#1 諫早の古き良き商店街エリアに店を構える人気店。地域の方から愛される36歳の若きオーナーの素顔

島原鉄道の本諫早駅から徒歩1分。どこか昔懐かしい商店街エリアを歩いていると、どこからともなく食欲をそそる香ばしい匂いが漂ってきます。その匂いにつられて「炭火焼鳥ひよっこ」と書かれた看板をくぐると、「いらっしゃい!」と諫早出身のオーナーの宇土達也さんが笑顔で出迎えてくれます。

「母親が料理上手で、一緒にご飯を作っていたこともあって中学生の頃には飲食関係の仕事に進みたいなと思うようになりました。高校では大村城南高校で食品科学を専攻。卒業後は福岡の調理師専門学校に進学しい料理人としての基礎を身に着けました」

串物の旨さで地域の人たちが足しげく通う人気店となり、今年(2024年)は10周年を迎える「炭火焼鳥ひよっこ」。26歳で独立し故郷である諫早で開業した宇土さんの修業時代から今日までをインタビューしながら、多くのお客様が惚れるその人柄に迫ってみたいと思います。

調理師専門学校で学ばなかった“焼き鳥”の技法と奥深さに心を掴まれた20代

独立する前はどんなところで修業なさっていたのですか?

宇土さん:最初は福岡で病院調理師として働いていたのですが、自分のやりたいことと違うなと感じ1年くらいで退職。その後はラーメン屋とか焼鳥屋とかいろいろなところで経験を積ませてもらいました。その中でも料理学校で調理方法を学ばない焼鳥にハマってしまって。串の刺し方とか焼き方とか5年くらい修行したかな。

それから地元・諫早に戻ってこられて、2年くらい飲食店で働いた後に「炭火焼鳥ひよっこ」を2014年にオープンなさいます。

宇土さん:焼き方、刺し方、炭の組み方・・・。やっぱり焼鳥が一番おもしろくて奥深いと思ったので焼鳥屋をやろうと決めました。「ひよっこ」という屋号は“何年経っても初心を忘れない”という決意。この地域の人たちが仕事帰りにふらっと寄れる、リーズナブルで大衆的なお店にしたいと考えていました。

オープン当時の印象的な想い出があれば教えてください。

宇土さん:プレオープンの時は知り合いや友人が来て賑わったのですが、いざ本オープン初日を迎えると3人しかお客さんが来なくて。「これはダメか・・・」と不安になりました。でも、1週間後には満席になるくらい盛況で「あ、大丈夫だな」と。それから徐々に来店してくださる方が増えて安堵したのを覚えています。

本諫早エリアの人気として営業を続け、2022年には徒歩1分圏内の現在の場所に移転なさいます。

宇土さん:たくさんのお客様に来ていただけるようになった反面、最初の店ではちょっと手狭になってしまったんです。ただ、この地域のお客様に支えられてずっとやってきたので、できるだけ近い場所にしたかった。そんな時に偶然この物件を内覧して、場所も近いしここでリニューアルしようと決めたんです。

この地域で積み上げたものがあるからこそ、近い場所でのリニューアルを選んだ

リニューアルを決意されてからオープンまでどれくらい時間がかかったのでしょうか。

宇土さん:大体1年半くらいかな。「ここなら絶対にやっていける」という自信があったので、妻としっかりと話し合って購入しました。ちょうどその頃はコロナ禍まっただ中。休業期間中はある程度時間があったので、自分で店の解体作業をしてリニューアルの準備を進めていたんですよ。

コロナ禍でもアグレッシブ・・・!

宇土さん:ウチの父が建設関係の仕事をしていたので、解体と並行して図面を描いてもらいました。そういう土台を整えていたので、改装はいろいろとスムーズにいったのかなと感じています。毎日仕事で長崎まで通っていた妻も、このタイミングで職場を辞め、今では子育ての傍ら、営業前の掃除や経理などを手伝ってくれています。

旧店舗の目と鼻の先の場所で生まれ変わった「炭火焼鳥ひよっこ」。常連さんの反応はいかがでしたか?

宇土さん:「広くてきれいな店になったねえ」と。実は、前の店を閉めてからリニューアルオープンまでに大体2ヶ月くらい期間があったのですが、その間に驚くほどの予約を入れていただいたんです。それだけ新しい「ひよっこ」を楽しみにしてくださっているということですし、何よりこの地域で8年間積み上げてきた信頼を改めて感じることができました。

週末やゴールデンウィークやお盆、年末年始などのオンシーズンはたくさんのお客様で賑わっている「炭火焼鳥ひよっこ」。約半年かけて増築した2階の座敷スペースも6月末から稼働を始めました。

宇土さん:お酒が飲める焼鳥屋という性質上、平日のお客様はどうしても少なくなってしまう。じゃあ、来客数の多い週末や長期休暇の稼働をあげていくことで安定した売上に繋がると考えたんです。2階の広さは倍くらいになったかな。これまで以上に利用しやすくなりましたのでぜひ足を運んでいただければ嬉しいですね。

「完成したばかりなのでぜひ見てください」という宇土さんに案内され、店の奥にある階段を上って2階へ。天井板を外して梁を見せることで開放感な空間に仕上がった新スペースは、おしゃれなシーリングファンが回転しており、オーナーのセンスの良さを感じます。

「実は新しいスペースの図面も父が引いてくれたんですよ。なので、違和感のない仕上がりになったと思います。そうそう、こっち側のこだわりのひとつが天井。垂木に沿って“すだれ”を貼り付けることで和風感を演出しました」

増築されたスペースを見ながら満足そうに紹介する宇土さん。その視線の先には笑顔で焼き鳥をほおばりながら乾杯をしているお客様の姿がありました。地域の人たちが集う大衆的な焼鳥屋。10年経ってもまだまだ「ひよっこ」という初心を忘れずに、36歳の若き大将は焼き台の前で汗を流します。

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
炭火焼鳥ひよっこ

長崎県諫早市東小路町13-11 ( Google MAP

営業時間:

17:30~00:00(火曜定休)

TEL: 0957-47-6972