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暮しを楽しむの手帖
やきにく平壌園 本店#2 美味しいは幸せ。真摯に焼肉に向き合ってきた2代目の想い

熊本県八代市にある「やきにく平壌園 本店」。地元の人に本場の焼肉を味わってほしいという想いで1968年にオープンした老舗焼肉店を切り盛りしているのが、2代目店主の朱永徳さん(68歳)です。

若い頃は郷里を離れて東京で仕事をしていた朱さん。父であり創業者である在日1世の先代が病気を患ったことにより、店を引き継ぎ30年以上にわたって平壌園の味を守ってきました。そんな朱さんに2代目として歩んできた人生を振り返っていただきました。

厳選した食材を丁寧に仕込むことこそ老舗焼肉店としてのバリュー

朱さんはやきにく平壌園の2代目ですが、店を継ごうと考えたきっかけは何だったのでしょうか。

朱さん:元々、東京にある大学で統計やマーケティングといった経営学を教えていたんです。でも、私が30代の時に父が肝硬変で倒れてしまった。誰かが家業を継がなきゃいけないということで、福岡にいた弟と話し合って二人で八代に戻ることにしたんです。

30代の若さで大きな決断をなさったんですね。

朱さん:父は入退院を繰り返している状態でしたので本当に手探り状態。まずは肉のことを勉強しないといけないと考え、と畜場に通って牛の解体を見学していました。8年間、毎朝行って血まみれになりながら教えてもらいお肉を分けていただいていたんです。おかげで良い肉、良いホルモンを見分ける力が身につきました。

「命をいただく過程」を通して目利きのスキルを高められた、と。

朱さん:肉は畜産の盛んな鹿児島や宮崎を中心に佐賀、地元・熊本などほとんどが九州産です。長年の経験で良質な素材を厳選できるようになっていますので、仕入れ先との信頼関係も良好。自信を持って最高のお肉をお客様に提供しています。

画像は公式サイトより
こだわりぬいた本場の焼肉を味わえるわけですね。

朱さん:あと、全国各地の焼肉屋に行っていろんな研究もしました。東京での生活経験を活かして関東一円の有名店・高級店を巡ったり、友人に会ったついでにその土地の店に寄ったり。北は北海道、宮城、福島、新潟。新幹線が通っている愛知、京都、大阪、神戸広島、福岡・・・。たぶん1500~2000軒くらい行ってるんじゃないかな。

探求心がすごい。

朱さん:店を継いで最初に取り入れたのが「無煙ロースター」。ちょうど出始めた頃に無煙ロースターを設置した焼肉屋に行ってみると、それまで焼肉の煙や匂いを敬遠していたサラリーマンや女性客が結構入っていたんです。それで「焼肉の敷居が低くなるんじゃないか」と感じて、店の改装を機に設置しました。

画像は公式サイトより
焼肉の命ともいえるタレも研究を重ねられた。

朱さん:そうですね。父が創業当時から使っていた味噌ベースのタレはあったのですが、それに加えてあとはタン塩の旨さを引き出すレモンだれや黒毛和牛のロースやカルビに合う醤油だれの開発も行いました。

先代が作った老舗焼肉屋という土台の上に、朱さんがお肉・設備・タレ・時代といった様々な要素をリサーチする中でブラッシュアップされていった平壌園の歴史がよくわかります。

朱さん:ウチのモットーは「美味しさは幸せ!!」。本当に美味しいものを食べると、人ってハッピーで元気になると思うんです。良質な食材をひとつひとつ丁寧に仕込むのは時間がかかりますが、それを提供することこそ平壌園のバリュー。これからもお客様の高い満足度に繋がる焼肉を提供し続けていきたいですね。

インタビュー中、何度もおっしゃった「美味しいは幸せ」というフレーズ。実は、お客様から学んだことだと朱さんは振り返ります。

「20年ほど前ですかね。作業服を着た20代後半くらいの青年が後輩と一緒に来ていたんですよ。ボックス席で喋りながら肉をほおばっている姿を見ているとお客様が『オレはな、一生懸命働いてウマいものを食う時がいっちゃん(一番)幸せったい』と仰ったのです。私は『これだ!』と思いましたね」

先代が作った朝鮮料理屋というベースの上に、2代目の朱さんがお肉・設備・タレ・時代といった様々な要素をリサーチすることでラッシュアップされていった「平壌園」。半世紀以上の歴史が詰まった老舗焼肉店で、ぜひあなたも舌鼓を打ってみませんか?

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
やきにく平壌園 本店

熊本県八代市新町6-14 ( Google MAP

営業時間:

ランチ/11:30~13:30
ディナー/17:00~22:00(定休日:水曜)

TEL: 0965-34-1967

URL:https://heijoen.jimdofree.com/