閉じる
日本三大急流の1つ、球磨川が流れる熊本県八代市。県内2位の人口を擁する同市では江戸時代の干拓によって広がった平野部では農業が盛んで、畳の材料となるいぐさの生産量は日本一を誇ります。そんな八代市に創業50年を越える老舗焼肉店があるのご存知でしょうか?
「やきにく平壌園 本店」。開業した1968年(昭和43年)は戦後の高度経済成長で国民総生産が世界2位になり、メキシコオリンピックで金メダルを8個獲得するなど日本の国力の高さを世界にアピールした年でした。
そこから昭和、平成、令和と3つの時代にわたって八代で本場の焼肉を提供してきた平壌園。その歴史について2代目店主の朱 永徳さんにお話を伺っていきます。
朱さん:先代である父は在日1世。「朝鮮料理と本場の焼肉を八代の皆さんに食べてほしい」という想いで平壌園を創業しました。ホルモンやカルビ、ロースといった焼肉を中心にビビンバ、クッパ、キムチなど非常にシンプルなメニューでやっていましたね。
朱さん:当時のことはよく覚えていますよ。お客さんは農業や土方といったブルーカラー職の方がほとんど。今のように無煙ロースターやダクト式換気扇はなかったので、満席になると店内にもくもくと煙が漂っているような状態でしたね。
朱さん:あの頃は流通も整備されていないし、チルド技術なんてないから八代で黒毛和牛なんて簡単に手に入るものじゃなかった。だから主に仕入れていたのはホルスタイン種の肉だったそうです。
朱さん:その通りです。味噌をベースにすることでホルスタインの乳臭さを消すことができることに加えて、肉体労働系のお客さんが多かったので濃い目の味付けがとてもウケました。
朱さん:ベースはそうですね。私が父からこの店を継いだのは35年ほど前になりますが、ホルスタインを使わなくなったこともあり、お客様の意見も参考にしながらまろやかでソフトな味わいになるように少しずつ改良を加えてきました。現在は味噌に加えて醤油とレモン、3種類のタレで焼肉を用意しています。
朱さん:味噌ダレは基本的にどのお肉にもマッチしますが、特に相性がいいのは「ホルモン」や「ミノ」といった内臓系と「ハラミ」。レモンダレはやっぱり「タン塩」が一番です。醬油ダレは黒毛和牛との相性が最高で、「ロース(並・上・特選)」や「カルビ(並・上・特上)」の味を引き立ててくれます。ぜひお好みの組み合わせで楽しんでいただければと思います。
「焼肉って適当に焼いて食べればいいって思っている人が多いんですがそうじゃないんです。焼き方次第で味がまるっきり変わってしまう。だから、ついつい『この肉はこういう風に焼くといいですよ』って教えちゃうんですよね」と笑う朱さん。そんなおせっかいを焼いてしまうのも厳選した食材をお客様に美味しく食べてほしいから。65年の歴史を持つ老舗焼肉屋には、今日も美味しい幸せスマイルが広がっています。
取材・執筆/Komori Daigo
熊本県八代市新町6-14 ( Google MAP )
営業時間:
ランチ/11:30~13:30
ディナー/17:00~22:00(定休日:水曜)
TEL: 0965-34-1967