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暮しを楽しむの手帖
旅庭 福の小径#2 風流な佇まいと自然と調和した美しさ。数寄屋造りをリノベーションした民泊をルームツアーでご紹介

皆さんは「数寄屋造り」という日本家屋をご存知でしょうか。数寄屋とは安土桃山時代に生まれた小規模な茶室のこと。質素でありながら洗練された美しさを見出した数寄屋の在り方を参考に、竹・杉皮の天井や土壁など自然素材を活かした間取りが考えられているのが数寄屋造りの特徴です。

そんな自然と調和した和風建築を1棟貸の民泊としてリノベーションしたのが諫早市福田町にある「旅庭 福の小径」。136㎡の建物には2間続きの和室、洋室2部屋(ラウンジ、オーディオルーム)、ダイニング、キッチンがあり、宿泊者は自由に過ごすことが可能です。

今年(2024年)5月にオープンしたばかりの「旅庭 福の小径」。オーナーの松尾さんの案内でそれぞれのお部屋を拝見させていただけることになりました。真新しい木材や畳の香りが漂うルームツアー。そこで目にしたのは、数寄屋造りを最大限に活かした和モダンな空間でした。

モリシゲのソファーで庭木を見ながらくつろぐ。旅の1ページに贅沢なひとときを。

オーナーが感じるこの建物の魅力は何でしょうか。

松尾オーナー:シンプルな空間、風流な佇まい、木を贅沢に使用した内装、そして自然と調和した庭の美しさ・・・。庭から設計し、その中に建物を配置するというユニークな方法で建てられており、初めて内見で一目惚れしました。リフォームをしてくださった大工さんは「今はもうこのような家はなかなか作れないんですよ」と仰っていましたね。

早速、玄関の中に入ってみたいと思います。・・・まるで親戚の家に来たような安心感のある雰囲気のエントランスですね。

松尾オーナー:玄関は外から最初に入る、いわば家の顔。お客様をお迎えする上がり框の木材(一枚板)は、この家の持つぬくもりや暖かみを感じていただけると思います。ご年配の方の靴の脱ぎ履きや複数人での出入りもしやすい広めのL字型になっています。玄関正面には、岡田真由子さんに作っていただいた「春降山」という着物のアート作品を飾っています。

玄関の右手にあるのがラウンジ(洋室)。格子状の格天井に吊るされたオシャレな照明の光が部屋全体に広がっています。

松尾オーナー:お客様がゆったりと過ごしていただけるよう、床には触感の良い無垢材を使用しています。海外からのお客様向けに英語の観光案内や書籍もご用意。日本の家具メーカー・モリシゲの漆塗りのソファーに座りながら本を読んだり、窓から見える庭園を楽しんだりしていただけますよ。

ラウンジの奥にはダイニング。大きめのダイニングテーブルはカップルやグループでも利用しやすそうですね。

松尾オーナー:床は檜、壁は檜と漆喰、天井も木が使用してあり、あたたかみのある空間になっています。その奥にあるキッチンには冷蔵庫や炊飯器、電子レンジ、トースター、電気ポットといった調理家電や調理器具を完備。有田焼や波佐見焼のお皿、ワイングラスやお猪口などの酒器もありますので料理やお酒を楽しんでいただくことも可能です。

アナログで聴くレコードの響き。詫び寂を感じる和の空間。和洋折衷を体感できる「旅庭 福の小径」

続いてのお部屋は・・・こちらも洋室ですね。

松尾オーナー:こちらはオーディオルーム。レコードプレーヤー、アムレック製アンプ、スピーカーをケーブルでつなぐことで味わい深いアナログの音が流れます。ラウンジと同じ無垢材のフローリングにモリシゲのソファー。ゆったりとした空間で音楽を楽しんでいただけると思います。せっかくなのでレコードを流してみましょうか。

・・・すごく聞き心地のいい音ですね。ソファーに座って目を閉じるとスピーカーから流れるやわらかな音楽に包まれているような感覚になります。

松尾オーナー:スピーカーは西海市にある体験型施設「音浴博物館」で購入しました。展示されている様々なスピーカーを試す中で出会ったのが、このスピーカー。ゆったりとした柔らかい音の質感が福の小径の雰囲気にぴったりで、聞いた瞬間「これだ!」と感じました。歴代の館長さんが愛用なさり、丁寧にメンテナンスされてきたものだとうかがい、福の小径でも長く大切に使わせていただきたいと思っています。

最高のチル体験ができそうですね。最後にご紹介いただくのが2間続きの和室。日本独特の侘び寂を感じられる素敵な空間になっています。

松尾オーナー:こちらの2部屋は数寄屋造りの雰囲気を最も味わえるのではないかと思います。柱や欄間、床の間など自然素材を活かした造りになっていて、シンプルな照明にすることでお部屋の風情と空間を演出しました。廊下側の障子は雪見障子になっており、畳に座りながら四季折々の庭木をお楽しみいただけるんですよ。

ラウンジやオーディオルームと違い、敢えて何も置かないことで和室の造りや庭の景色を楽しめる空間になっているんですね。

松尾オーナー:奥の和室は寝室となります。宿泊される方がゆっくり睡眠をとれるように寝具にもこだわりました。地元の小森ふとん店さんに仕立てていただいた綿布団は雲のようにふわふわ。羽毛布団や綿毛布など、体に優しい自然素材の寝具をご用意していますので、旅の疲れをゆっくりと癒してくださいね。

「ゆったりとした建物を1棟まるごと使えるので、ひとつの部屋に集まって皆で旅の計画を立てたり、それぞれの部屋で思い思いに過ごしたり・・・。どんなお客様にも寄り添える懐の深さも、福の小径の良いところだと感じています」と話す松尾オーナー。そんな松尾オーナーが特に力を入れた箇所のひとつが水回りです。

「日本の伝統や文化を感じていただけるよう浴室のタイルや洗面台のボウルは有田焼を採用。浴槽を利用しない方や高身長の海外からのお客様もリラックスして使用できるようオーバーヘッドシャワーを設置しました。シャワー・洗面ともに温浴効果や洗浄効果のあるウルトラファインバブルのお湯。浴槽ではマイクロファインバブルの乳白色のお湯をお楽しみいただけますよ」

伝統的な有田焼、漆喰、木材と現代の新しい素材をどうあわせるか。その課題をクリアするため、オーナーは東京でお世話になった建築デザイナーに依頼。都内のショールームに足を運び、素材や色味など実際に色合わせしながらデザインを決めたそう。松尾オーナー自慢の素敵な水回り。ご宿泊の際はぜひお試しくださいね。

取材・執筆/Komori Daigo          

INFORMATION
旅庭 福の小径

長崎県諫早市福田町

営業時間:

9時~18時

TEL: fuku.no.komichi@gmail.com

URL:https://sites.google.com/view/fukunokomichi