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雲仙市小浜町で美味しい薬膳料理を味わうことができる「入潮食堂」。2023年に創業50年以上の歴史を持つ大衆的な食堂から海辺の薬膳レストランへとリニューアルしたことをきっかけに、テレビや雑誌などさまざまなメディアで取り上げられ話題となりました。
「薬膳の魅力はひとりひとりの体調や体質に合わせて作るオーダーメイドの料理ということ。ただ、飲食店でそれをやるのは難しいので、入潮食堂では四季(春夏秋冬+梅雨)と二十四節気にあわせた季節の薬膳メニュー(4種)を提供しています」
そう話すのは代表の林田裕子さん。国際薬膳師の資格を持つ彼女が季節ごとに考案する薬膳メニューは地元の方々はもちろん、旅行客からも人気を呼んでいます。そこで今回は薬膳料理の魅力について林田さんに教えていただきたいと思います。
林田さん:薬膳は中医学に基づいた「食の組み立て」と「調理法」で作られた料理のこと。季節や食べる人の体調に合わせて食材を組み合わせて調理することで、健康維持・未病・体質改善などをおいしく健康をサポートできるのが大きな特徴ですね。
林田さん:医食同源という五行の考えを取り入れた薬膳では、食材を四性(熱、温、涼、寒)と五味(酸、苦、甘、辛、鹹)に分類。スーパーで買えるようなお肉・魚介類・野菜・調味料など身近にある食材だけでも、その組み合わせと調理の仕方で薬膳料理を作ることができるんです。
林田さん:例えば、大根と鶏肉って煮物にすると美味しいじゃないですか。でも、薬膳では「鶏肉=身体を強壮する」「大根=気を下す」という反対の性質を持っているので効果を打ち消しあってしまいます。一方で相性が良いのが豚肉。大根と同じ胃腸の調子を整える作用を持っているので相乗効果を生み出すんですよ。
林田さん:1つは長く食の仕事に携わる中で食材の持つ栄養や効能、組み合わせによる働きに興味を持つようになったこと。もう1つは新型コロナの流行で飲食業界を取り巻く環境が変わったこと。両親の作り上げた料理や様式を変更することに葛藤もありましたが、地域の食堂としての役割は残しつつ薬膳という新しい風を入れることが大事なのではないかと考えました。
林田さん:せっかくなら国内でランクの高い資格に挑戦しようと思ったんです。1年間、福岡の教室に通って座学と調理実習で中医薬膳学を履修。そこから国際薬膳師になるためには卒業試験と国際薬膳師の資格認定試験をクリアしないといけなかった。今後の軸となる資格でしたのでプレッシャーも大きかったのですが、無事に合格することができてホッとしましたね。
林田さん:ありがとうございます。私たちの体は日々の食事のとり方で健康にも病気にもなる。身近な食材の持つ効能・作用や調理方法をご覧いただくことで、お客様がご自宅でもその季節に合った食事を摂るヒントになればと思い、内容をおしながきとInstagramで紹介しています。ぜひ一度、季節の薬膳メニューを味わっていただけたら嬉しいです。
2023年のリニューアルで今風のカフェのようなおしゃれな店舗に生まれ変わった入潮食堂。海を正面に眺めながら食事ができる窓際のカウンター席や窓が多く開放感のあるテーブル席など、内装や座席の配置にもこだわったと林田代表は微笑みます。
「素敵な景色を見ながら気持ちよく食べるというのも薬膳のひとつじゃないかなと考えたんです。目の前に広がる雄大な橘湾を楽しめるよう窓は大きめにし、反対に他の部分はできるだけシンプルに。そうすることでお客様が心を整えながら食事をしていただけるのではないかなと思っています」
国際薬膳師の林田さんが二十四節気にあわせて内容を考案している入潮食堂の薬膳メニュー。身近な食材を使った美味しい料理で身体バランスの崩れをニュートラルに戻してくれる絶品料理をぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
取材・執筆/Komori Daigo
長崎県雲仙市小浜町北木指3168−7 ( Google MAP )
営業時間:
11:30~14:00、17:00~21:00(木曜定休)
TEL: 0957-74-3610