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暮しを楽しむの手帖
入潮食堂#4 ゆくゆくはお客様の体調や体質に合わせたオーダーメイドの料理を提供したい。小浜の国際薬膳師が夢見る未来

2023年にリニューアルオープンした雲仙市小浜町の「入潮食堂」。50年以上の歴史を持つ地域の大衆食堂から海辺の薬膳レストランへと様変わりした店内のカウンターには、おしゃれな瓶に入ったさまざまな生薬が並んでいます。

「リニューアルの理由のひとつがコロナ禍による外食スタイルの変化。両親が50年に渡って守ってきた店だからこそ、料理や様式を変えるということに大きな葛藤もありました。ただ、時代が移り変わっていく中で私たちも前向きな挑戦をすることが大切だと思い、薬膳を中心とした食事処として再スタートすることにしたんです」

2代目の林田裕子さんはリニューアルに向けて国際薬膳師の資格を取得。2023年9月のオープン以降、おいしい薬膳料理が食べられると徐々に人気が広がっています。そんな入潮食堂の今後の展望についてお話を伺っていきたいと思います。

薬膳料理店としては新参者だからこそ、お店や薬膳の魅力をどんどん発信していきたい

リニューアルから8ヶ月ほどが経過しましたが、手ごたえは感じていらっしゃいますか?

林田さん:最初は薬膳料理がどれくらい受け入れてもらえるのか不安な面もありました。でも、SNSなどで薬膳の魅力を発信すると興味のある方は想像よりもたくさんいらっしゃって。特に女性のお客様からは食後に薬膳についての質問をいただくこともあって、皆さん、健康に関心があるんだなと感じましたね。

テレビや雑誌などメディアでも小浜の薬膳レストランとして注目されています。

林田さん:県内でも薬膳料理をメインにした食事処は多くないですし、何より温泉地の薬膳料理の店というのがキャッチーで珍しかったのかなと。ただ、すごく話題になった分、プレッシャーも大きい。リピーターさんも増えてきていますので、1ヶ月に一度内容が変わる“季節の薬膳メニュー”は特に力を入れて取り組んでいます。

リニューアルしてからの客層を教えてください。

林田さん:基本的には地域の方が来てくださっています。最初は「薬膳?」というお客様もいらっしゃいましたが、少しずつ薬膳のことを理解していただけました。この店は温泉街から少し離れた場所にありますが、足を半込んでくださる観光客の方も多いんですよ。

定期的に長崎市や諫早市で開催されるマルシェなどのイベントにも出店されていますよね。

林田さん:イベントでは薬膳弁当を販売していて、予想以上に反応が良いんですよね。ウチの店は創業から50年以上の歴史があるとは言え、薬膳料理屋としては1年にも満たない新規店。小浜町外のイベントに出店することでリニューアルした入潮食堂のPRにもなりますし、何よりたくさんの方に薬膳を知っていただける機会になるのかなと考えています。

※画像はInstagramより
では最後に、今後の目標を教えてください。

林田さん:1つは自家製ちゃんぽん麺のブラッシュアップですね。リニューアルを機に導入した製麺機で季節ごとに生薬を練り込んだ薬膳麺を作っていたのですが、生薬によっては麺に癖が出すぎてしまったんです。日々の業務に追われている中ではありますが、まだまだ改良の余地がありますので機を見て3代目と一緒に麺づくりの研究をしたいなと思います。

あの薬膳ちゃんぽんがさらにおいしく・・・!?それは楽しみですね。

林田さん:もう1つは目標というよりは大きな夢なのですが、来店したお客様の体調や体質をヒアリングしてその方に一番あったオーダーメイドの料理を提供すること。やっぱりそれが薬膳最大の魅力なので、いつか予約制でそういう場を設けることができたら嬉しいですね。

「今はお客様ひとりひとりにあった食事を提供することは難しい。でも、入潮食堂で食べた料理がその方の健康に繋がる食事のヒントになれば」とほほ笑む林田さん。そんな2代目が考案したレシピを甥御さんが厨房で腕によりをかけて調理し、お姉さんと姪御さんがお客様に配膳しています。

「私の役割は先代と次の世代をつなぐこと。薬膳料理の店としてリニューアルしましたし60過ぎくらいまでは頑張っていきたい。その後は3代目に任せて、薬膳の講座を開いたり、プライベートで教えている書道に力を入れたりして過ごせたらいいなと思っています」

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
入潮食堂

長崎県雲仙市小浜町北木指3168−7 ( Google MAP

営業時間:

11:30~14:00、17:00~21:00(木曜定休)

TEL: 0957-74-3610