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長崎県の穀倉地帯として知られる諫早市で「全てのものが資源である」という理念のもとに日本の伝統的農業に取り組んでいる土井農場。養豚と水田の総合農場のメリットを活かし、ブランド豚・諫美豚(かんびとん)や循環農法米を生産しています。
「諫早の素晴らしさは、ありのままの日本を継承しているところ。3つの海があって、山と川があって、平野がある。豊かな自然の中で育まれる謙虚さ、協調性、責任感。そういった日本人らしさを尊重する風土が私はすごく好きですね」
そう教えてくれたのは代表を務める土井賢一郎さん。鹿児島大学農学部を卒業後、帰郷して両親の跡を継ぎ、35年に渡り農業の酸いも甘いも経験なさってきました。一昨年からは看板商品である諫美豚の本格的な営業活動も始めたという土井代表に今後の展望を伺いました。
土井さん:以前は生産者と料理人をマッチングするような相談会に参加していました。美味しいとは言っていただけるものの金額の折り合いがつかないことも多くなかなかうまくいかなかった。県の物産ブランド振興課にどう展開するべきか相談したりもしましたね。
土井さん:そんな時に背中を押してくれたのが諫美豚を仕入れてくださっている地元の料理人さんからの言葉。「諫美豚は自分が食べた中でもトップクラス」「わかる人はわかるから東京でも大阪でもどんどん売り込みに行っていい」。諫美豚に一層の自信がもてましたし、すごく励みになりました。
土井さん:そうですね。先ほど紹介した言葉の主は、ながさきグルメセレクションに選ばれた長崎フレンチの店・ロジアス坂本(長崎市)やミシュラン一つ星を受けた小料理藤緒(長崎市)の方。長年、食に携わってきたプロに高く評価していただけるのはとても嬉しかったですね。
土井さん:印象に残っているのは東京のフレンチレストラン「カンテサンス」。ミシュランの三つ星を連続で獲得している有名店なので、緊張しながら電話をかけて諫美豚の説明をしたんです。すると岸田周三シェフが興味を持ってくださり、試食用サンプルをお送りすることに。今ではおまかせコースのメインとして黒豚諫美豚プレミアム100を時々使っていただいています。
土井さん:平成25年に法人化して去年(令和5年)でちょうど10年を迎えました。これからの1つの方向性としては諫美豚をもっともっと広めていって、「西のイベリコ、東の諫美豚」と評されるくらい世界規模のブランドにしていきたいと考えています。
土井さん:肉の味を決めるのは餌であり、米や野菜の味を決めるのは土。そういった自然の流れに沿うことで安心・安全でおいしいものができるということを35年かけて身をもって体験してきました。これからは国内・海外に向けてそれを証明していくターンなのかなと感じていますね。
土井さん:最近始めたのは諫美牛(かんびぎゅう)と資源循環野菜。どちらも収穫したタイミングで直売所にて販売し、お客様から好評をいただいています。この辺りが軌道に乗ってきたら、次は米づくりと親和性が高く、麦の若芽を食べるので現代農業において害鳥あつかいになっている鴨がいいかな。
土井さん:私たちが目指す資源循環型農業はまさにSDGs。でも、SDGsって何かを我慢することじゃないんですよ。美味しさと楽しさが循環する日本の伝統的農業。その魅力と価値を世界に発信していくことが土井農場の地域振興だと考えています。
自分たちが目指す資源循環型農業の将来像について、身振り手振りを交えながらわかりやすく教えてくださる土井代表。その姿から農業従事者として長年農業の課題と諫早の地域振興に向き合ってきた真摯な想いが感じられます。
日本一美味しく安心安全な豚肉を届けるために、餌となるブランド米の栽培、豚の健康に配慮した飼育方法、素材の味を最大限に引き出す加工・・・、と飽くなき探究を続けている土井農場。地方から世界のブランド豚を目指す、「養豚」と「稲作」の総合農場のさらなる進化に目が離せません。
取材・執筆/Komori Daigo
長崎県諫早市高城町8-10 ( Google MAP )
営業時間:
10:00~17:00(定休/日・祝)
TEL: 0957-22-2983