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暮しを楽しむの手帖
珈琲店ミック#1 昭和の時間が流れる八代の老舗喫茶店。半世紀以上にわたって愛され続ける魅力とは

熊本県第2の都市・八代市。その玄関口である八代駅から徒歩1分の場所に、地域の人々が毎日のように訪れる人気の喫茶店があります。「珈琲店ミック」。御年79歳を迎えるマスター・出水晃さんが京都大学在学中に通っていた喫茶店のような場所を故郷にも作りたいという想いで、昭和42年、22歳の時に創業しました。

取材のために扉を開けると「いらっしゃいませ」とにこやかな女性店員さんがお出迎え。カウンター11席、ボックス40席の広い店内には心地よいジャズが流れ、様々な年齢層のお客様がコーヒーを飲んだりスタッフと談笑したりと思い思いに過ごしています。

「父は大学在学中に非常にジャズに傾倒していて、自分の店ではジャズを流そうと考えたそうです。当時はジャズ自体が珍しい音楽だったので、その魅力を八代の人に伝えるためにレコードコンサートなどを企画していたと聞きました」

そう話すのはマスターとともに店を切り盛りしている娘の笠井麻衣さん。今回は半世紀以上に渡り八代市民に愛され続けている老舗喫茶店の魅力について、笠井さんに伺っていきたいと思います。

誰もが自然体でいられる、成熟した大人の距離感が心地いい。

八代の老舗喫茶店として知られるミック。普段はどんなお客様がいらっしゃるのでしょうか。

笠井さん:ウチの営業時間は朝から夕方なので平日は常連さんが多いです。休日には若い方や観光客がいらっしゃることもありますが、ほとんどは常連さん。創業の頃から通ってくださる方もいれば、子どもの頃に家族と一緒に連れてこられていたという方もいらっしゃいますね。

今いらっしゃるお客様も自宅のような感じでリラックスして過ごされているのが印象的です。

笠井さん:毎日決まった時間帯にいらっしゃる方が多いんですよ。今どきの若者や観光客にはジャズが流れるノスタルジックな喫茶店として映るようですが、いつものお客さまたちにとっては、ミックは当たり前にある生活の一部なんじゃないかなと思います。

日々の暮らしの中で足を運びたくなる喫茶店、というわけですね。

笠井さん:私たちが意識していることは「成熟したひとが集える空間」であること。誰もが何かしらの事情や想いを抱えながら生きているからこそ、いつも同じように「いらっしゃいませ」とお迎えすることが仕事だと思っています。。

ほどよい距離感。ただ同じ空間・時間を共有するというさらりとした関係性だからこそ、自宅のようにゆっくりと過ごせるのかもしれません。

笠井さん:家庭ではない、けれどゆっくりと過ごせる・・・。ある程度の緊張感を持つことでお互いにリスペクトが生まれます。家とは少し違うけれど、来れば気持ちを整理できる。お客様にとってそういう居場所になっていきたいですね。

コミュニケーションがなくても誰かとつながりを感じる居場所。繋がりが希薄になった現代だからこそ非常に魅力的です。

笠井さん:お客様が毎日のようにいらっしゃっても大丈夫なようにウチのメニューは「毎日食べても飽きない」がコンセプト。ひと口目で「う~ん」と唸るような美味しさより、食べ終わった後にほっとできるようなものが理想です。

今でもマスターの晃さんはカウンターに立っていらっしゃるんですね。

笠井さん:創業から半世紀以上が経ちますが今でもマスターに会いたいというお客様は多い。これからも地域の皆さんが安心してコーヒーを飲んだり食事を食べたりできる居場所であり続けられるよう、頑張っていきたいと思います。

いかがだったでしょうか。ご存知の方も多いかもしれませんが「珈琲店ミック」の屋号は、マスターが学生時代に通っていた京都の喫茶店の名前からインスパイアしたもの。そのルーツはカーソン・マッカラーズの小説『心は孤独な狩人』に登場する主人公のひとり、ミック・ケリーなのだと笠井さんは話します。

「学生時代の経験は父にとって非常に衝撃的だったのでしょうね。ジャズもそう。私の名前をモダン・ジャズの帝王と呼ばれているマイルス・デイヴィスからとって“麻衣(マイ)”と名付けるくらいなので、父のジャズ愛がどれくらい大きいかわかっていただけると思います」

マスターと笠井さん、そして女性スタッフが中心となって営業している「珈琲店ミック」。あなたもノスタルジックで居心地のいい空間で、ホッと一息、ついてみませんか?

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
珈琲店ミック

熊本県八代市萩原町1丁目2 ( Google MAP

営業時間:

9:00〜18:00(水曜定休)

TEL: 0965-32-2261