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落ち着いたジャズが流れるクラシックな店内でコーヒー片手にアート鑑賞・・・。そんな贅沢な時間を過ごすことができる老舗喫茶店が熊本県八代市にあります。「珈琲と画廊珈琲店ミック」。コレクション展や企画展はもちろん、多様なジャンルの芸術家が作品の展示会会場として使用することも多いギャラリー兼喫茶店です。
「ミックの創始者である現マスターとは故ママ(母)はアートにすごく興味がある人で、八代の若者が絵画にふれる機会を作りたいという想いから美術作品をかざるようになりました。店舗の設計も母自ら手掛け、倉敷市にある民藝館をオマージュした内装にしたそうです」
そう話すのは、ミックで展示企画を担当している笠井麻衣さん。長きにわたって八代でアートのある日常を提案し続けている笠井さんに、その魅力についてお伺いしました。
笠井さん:小学生の時ですね。当時、熊本出身の洋画家・坂本善三さんがお客さんとしていらっしゃっていたんですよ。母が坂本先生の大ファンで、よく先生に「ミックを絵画が鑑賞できる場所にしたい」と想いを語っていました。
笠井さん:展示会の企画・開催については坂本先生はじめたくさんの方がサポートしてくださった。私が展示会の手伝いをするようになったのは小学校高学年くらい。その頃には「美術を勉強しよう」「絵を描いてみよう」と周りの大人たちからいろんな手ほどきをうけていました(笑)。
笠井さん:特に坂本先生にはよくしていただいて、一緒に美術館に連れて行ってもらってアートの見方を1から教えてもらった。子どもながらに色んな作品にふれることで心が豊かになりましたし、今でも美術鑑賞は大好きですね。
笠井さん:高校生の頃には接客や展示会の手伝いなどさせられるようになって、やってみると自分が楽しむのとお客様を楽しませる企画を考えるのは大きな差。作品を提供してくださる作家さんやコレクターさんからは勉強させられることも多くて、本当に鍛えていただきました。
笠井さん:美術館は「作品が展示してある空間をギャラリー(観客)が訪れる」場所ですが、ミックは逆で「お客様が寛いでおられる場所に作品がやって来る」ということで「珈琲と画廊」とあえて称しています。コーヒーを飲んだり食事をとったりする常連さんが落ち着いて過ごすことができる雰囲気になるよう意識しています。
笠井さん:実は、展示作品以外にも、お客様から毎日のようにお届けいただく季節の花や飾りなども、ミックの毎日を豊かにしていく上で欠かせないものです。これらを使って空間をしつらえることで、展示してある「作品」に息が吹き込まれたり、自然に生活感覚から鑑賞することが出来るのではないかと思っています。肩肘張らず、日常の延長として様々な表現を楽しんでいただけるよう、これからも努めたいと思います。
ギャラリーのように展示する芸術作品を変えながら、お客様のコーヒータイムにアートを添える・・・。笠井様のお母様が願った想いは、半世紀を超える営業の中で「珈琲店ミック」のアイデンティティとして常連客の日常として受け入れられています。
最後に笠井さんに生まれ育った八代の魅力を尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「食べ物、歴史、文化、自然・・・。八代には良いところがたくさんあって、発掘して繋げていけばこんなにおもしろい地域はない。個人的にはユートピアだと思います。八代の宝を分け合って楽しむ・・・。ミックはそんな素敵な場所の一部であり続けたいですね」
取材・執筆/Komori Daigo
熊本県八代市萩原町1丁目2 ( Google MAP )
営業時間:
9:00〜18:00(水曜定休)
TEL: 0965-32-2261