空と海と夕日の宿寿楽

島原半島の西側、雲仙岳のふもとに位置する小浜温泉。潮の香りと湯けむりが立ちのぼり、橘湾の水面に反射する夕日の美しさが印象的な長崎県を代表する温泉郷の1つです。

昨年（2022年）、その小浜温泉に新たな温泉宿がグランドオープンしました。「空と海と夕日の宿寿楽（じゅらく）」。2021年に惜しまれながら閉館した被爆者の温泉保養所をリノベーションして誕生した寿楽は、源泉かけ流しの温泉と眼下に広がるオーシャンビューで話題を呼んでいます。

そんな寿楽のオーナーは地元企業「宅島グループ」の会長でもある宅島壽雄さん。地元の名士が廃業した保養所を購入し、ホテルとして蘇らせた理由はなんだったのか。支配人の岩中伸夫さんにお話を伺いました。

ゼロからのスタートだからこそお客様への真心を大切に

オーナーである宅島壽雄さんが「温泉保養所をリニューアルしよう」と考えたきっかけは何だったのでしょうか。

岩中さん：宅島グループは小浜町で1951年に創業（宅島建設株式会社）し、70年以上、長崎に根付いた仕事を行ってきました。その中でバブル崩壊以降、小浜温泉の旅館やお店等が少しずつ閉館。段々とさみしくなっていく様を見ていたオーナーの「街の復興に少しでも寄与できれば」という願いのもと、閉館した新大和荘の施設を活用したホテルを新規オープンすることになりました。

地元を活性化したいという溢れ出るアツい想い。まさに高温度で豊富な湯量を誇る小浜温泉のようです･･･！

岩中さん：オーナーのグランドデザイン、土地・建物というハード面のリソースはしっかりしていましたので計画が進むのは早かったですね。ただ、大変だったのが人材の確保。ホテルには受付・調理・清掃などさまざまな業務があるため、新大和荘で働いていた方を中心にお声をかけて体制を整えました。

新規オープンにあたりどのようなリノベーションを行われたのでしょうか？

岩中さん：この施設は2010年に建てられたものですので、外観や館内の間取りなどは基本的にそのまま活用しています。目玉のリノベーションはなんといっても新たに設置した4つの貸切風呂。檜の板材を敷いた床面と信楽焼の浴槽がくつろぎのプライベート空間を演出しています。ご宿泊のお客様は1回無料でご入浴いただけるサービスも大変ご好評をいただいているんですよ。

信楽焼の浴槽が設置された半露天風呂付客室もラグジュアリー感があって素敵ですね。オープン当初からたくさんのご予約があったのも頷けます。

岩中さん：ありがとうございます。ただ、母体の宅島グループは建設・土木業メインなのでホテル運営に関してはゼロからのスタートだったんです。ホテルのプロと呼べるスタッフが少ない中で、他の旅館の元女将に手伝っていただいたり、小浜温泉の同業者の皆さんにサポートしていただいたり･･･。地元の横のつながりを改めて実感した時期でもありました。

素敵な話だ･･･。

岩中さん：それでも最初の数か月は慣れないことも多くてバタバタしてしまいました。特に2・3月はご予約もたくさんいただいていましたので、スタッフ一同クタクタで。ただ、その経験を積めたことは非常に大きかったんじゃないかなと思います。

皆さんで協力しながら少しずつ成長していらっしゃる、と。

岩中さん：とはいえ、他のホテルや旅館さんに比べればまだまだ。お客様にとって我々の経験値は関係ないので、不手際をご指摘いただくこともたびたびあります。そういったご意見はスタッフ全体で共有し改善。一人一人がお客様に真摯に向き合い、「寿楽に泊まってよかった」と感じていただけるように真心こめて接客していきたいと思います。