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暮しを楽しむの手帖
いけす料理 宗弘#4 八代に里帰りしたら宗弘。スタッフとともに紡ぐ、地域に愛される店の未来

熊本県八代市本町

2026年で20年の節目を迎える「いけす料理 宗弘」。今でこそ、新鮮な旬の魚介類やこだわりの肉類を使用した和食・洋食が味わえる食事処として愛されている同店ですが、開業当初は思わぬ試練に直面したことがありました。

「“肥後の引き倒し”ってやつですね。当時は周辺の同業者からの風当たりが強かったので、一年目はとにかく生き残ることに必死でした。それから少しずつ軌道に乗り、八代一、熊本一の飲食店を目指すようになったんです」

そう振り返る代表の近宗道弘さんが大切にしているのは、長く働き続けるスタッフたちとの信頼関係。最終回となる今回は、20年を振り返る印象深いエピソードと、スタッフ育成、そして次の世代へ向けた展望について伺いました。

開業初年の“肥後の引き倒し”。逆境が仲買参入のきっかけに

この20年の歩みの中で、宗弘のターニングポイントを教えてください。

近宗さん:開業した最初の1年でしょうね。誰かが宗弘の存在を脅威に感じたのか、急に取引していた魚屋さんから仕入れを断られるようになったんですよ。でも、そのおかげで、自分たちで市場に参入するしかないと腹をくくることができました。本当にしんどかったですが、結果的に水産事業という柱ができたので、今は感謝しています。

「生産・流通・販売の一貫体制」は創業1年目での経験が大きかったのですね。もともと、水産事業における仲買の業務は代表が一手に引き受けていたそうですが、現在はどのような体制なのでしょうか。

近宗さん:基本的に近場の市場で開催される競りには、水産部門の従業員を派遣しています。もう目利きはしっかりしているからね。遠方の市場は競り子に入札代行を頼んでいるし、私は天気や時期を読んで指示をするくらいで、ほとんど仲買業務には関わっていない。その分、毎朝、漁師としての生業に精を出しているんですよ(笑)。

※Instagramより
地元テレビ局でのCM放映を10数年にわたり続けていらっしゃいます。この狙いをお聞かせください。

近宗さん:八代の人口は10万人ほど。熊本市や福岡市に比べて市場規模が小さいですので、ターゲットを市内に絞ってしまうと地元の飲食店同士でパイの奪い合いになってしまいます。そこで市外・県外のお客様をいかに呼び込むかを考えて、テレビCMを始めました。今ではCMが社会的な信用にもつながっていると感じています。

テレビをはじめ、さまざまなメディアで取り上げられることの多い宗弘。お客様の反応はいかがでしょうか。

近宗さん:7、8年くらいまでは私自身が顔出しで取材対応をしていたので、よく「この間テレビに出とったやろ!」と言われていましたね。驚いたのが、プライベートで入った熊本の飲食店で「八代の宗弘さんですよね」と言われたこと。恐縮してしまうことも多くなってきたので、今は従業員に任せるようにしています。

社員比率7割。長く働くスタッフたちと描く、次の時代への継承

スタッフの育成で大切にされていることを教えてください。

近宗さん:一番大切にしているのは、従業員自身がお客様の立場になって考えることです。ありがたいことにウチは長く働いてくれるスタッフが多く、社員比率が約7割と周辺の飲食店に比べると高め。なので、季節イベントの準備も「そろそろあの食材の時期ですね」と自分たちで動いてくれるので助かっています。

インターネットのクチコミでも、厨房・フロア問わず、スタッフの皆さんの対応が高く評価されています。

近宗さん:ありがとうございます。現在の厨房スタッフは12名体制。開業当初からの職人と中堅、若手の混在チームです。うまく世代交代をしながら味の継承をしていくところが課題ですね。フロアに関しては店長の存在が大きい。東京で培ったフロア力の高さを、今もお客様目線の細やかな指導という形で還元してくれています。

※Instagramより
今後、事業承継についてはどのようにお考えですか。

近宗さん:私は1店舗主義で20年やってきましたが、次の世代が熊本市などで多店舗展開したいと考えるなら、それはそれでありなんじゃないかな。社歴の長い幹部スタッフたちはその成長を見守ってきましたので、うまく力を合わせてくれれば、事業承継もうまくいくのではないかと考えています。

最後に、読者の皆様へメッセージをお願いします。

近宗さん:八代で開業して20年。開店当初にご両親と一緒に来てくれていた子どもたちが立派な成人となって、顔を出してくれています。市外・県外に出ても里帰りするたびに必ず「宗弘に行こう」と思ってくれる店になっている。それが本当に誇らしいですし、今後もそういう存在であり続けることが私たちの使命だと感じています。

スタッフたちとの信頼関係を築き上げながらも、次の世代への継承を見据える近宗さん。その中で大切にしているのは、「八代に残さなければならない店」という揺るぎない使命感でした。

「お客様の最高の笑顔が見たい、美味しいという声を聞きたい。一人ひとりがその想いを持ち、料理で、接客で、心を込めたおもてなしをしてくれるのは本当に心強い」

社長自らが漁師であり、八代・天草の魚市場で鮮魚仲買も担っている「いけす料理 宗弘」。これからも、八代の食と人々の記憶をつなぐ存在として、その歩みは続いていきます。

取材・執筆/Komori Daigo

当記事は2026年7月28日に発生した熊本地震の前に取材させていただいたものです。
店舗様の許可をいただき掲載しております。
なお、営業状況やメニュー等の最新情報については直接店舗へご確認ください。

INFORMATION
いけす料理宗弘

熊本県八代市本町3丁目2-26 ( Google MAP )

営業時間:

11:30~14:30(OS14:00)、17:00~21:30(OS20:30)

TEL: 0965-33-2730

URL:https://munehiro.co.jp/

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