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暮しを楽しむの手帖
一魚一恵 表参道店#3 魚屋でビールケースに座りながら味わう海鮮丼!目利きのプロが選んだ新鮮な八代の海の幸をいただきます♪

熊本県八代市の中心市街地にある鮮魚のセレクトショップ「一魚一恵表参道店」。店内には魚屋稼業30年の店主が仕入れた鮮魚のほか、手づくり総菜・弁当コーナーや食事ができるイートインスペースなどいかにも下町の魚屋という感じの人情味のある雰囲気が印象的です。

「熊本には豊かな漁場が多かとですよね。天草と八代に挟まれた不知火海(八代海)、浅井大陸棚が外海につながる天草灘、九州最大の湾である有明海…。そいけん、いろいろな魚介類が獲れるとが大きか魅力。まあ、僕が一番好いとっとは生まれ育った八代の目の前に広がる不知火海やね」

そういって笑うのは鮮魚商一魚一恵の代表を務める小川貴史さん。20代のころからベテランの仲買人に交じって競りに参加してきた経験を持つ小川さんに、良い魚を選ぶコツをインタビュー。記事後半では新鮮な地魚をふんだんに使った人気ナンバー1の海鮮丼とタチウオのフライも食レポしていきますよ。

原動力はお客さんの喜ぶ顔。宝石みたいにキラキラ輝く鮮魚の中から本物を見つける朝5時の宝探し

熊本有数の漁場・不知火海(八代海)。まずはどんな魚介類が獲れるのか、教えてください。

小川さん:遠浅の不知火海は母なる海と呼ばれるほど、いろんな魚の出産場所になっとっとですよ。コノシロ、タチウオ、サワラ、アジ、シラス…。特にタチウオは沖合で獲れたもんとは大違い。穏やかで餌の多い内海で育っとるけん、脂がのっとって包丁を入れるとスーッと切れる。郷土料理の姿寿司が有名なコノシロは、市場から関東へ空輸されとるのもよく見かけるね。

ちょうど今、市場という言葉が出てきました。小川さんも毎日、市場で競りに参加されているそうですね。

小川さん:そうやね。他の魚屋や仲買人と一緒に、「こいが欲しか」と思った魚介類に金額ば付ける。そいが最高値であれば競り落として購入できるわけやね。表参道店が11時営業開始なのも、その日の朝に田崎市場で仕入れた魚を並べとるから。気に入ったもんだけをお客さんに届けたかけん、商品が揃わない時は臨時休業すっこともあります。

魚屋としての長年の目利きを活かして仕入れをしている小川さん。良い魚を選ぶコツみたいなものはあるのでしょうか。

小川さん:ちょっと感覚的になるけど、選んでいるのは「こいば食べたら絶対に魚好きになってくれるよね」「こん魚はお客さんに幸せば届けてくれるな」と感じた商品。僕の場合は毎朝5時に市場に行って、その日水揚げされた魚を見てまわっとですよ。そいはまさに、お客さんの喜ぶ顔ば想像しながら楽しむ宝探し。「〇〇さん、こい喜びそうやな~」とワクワクしながら目利きしとっですね。

宝探し…!ちなみに、実際、良い魚って小川さんの目にはどう映っているんですか?

小川さん:新鮮で獲れたての魚介類。表面のキラキラした綺麗さは光り輝いていて、まるで宝石みたいで大好きなんよね。そん中でも良いやつっていうとは、向こうから僕に語り掛けてくるんですよ。「俺を持っていけ!」ってね。中には値が張るものもあっとけど、そいば工夫して手ごろな値段でお客さんに提供するとが僕の仕事。熟練の目利きでセレクトしとるけん、絶対に後悔はさせんですよ。

どんぶりの中に描かれたお刺身アート。九州の甘醤油をかけた酢飯と一緒に食べれば、豊かな海の多様性が広がります

小川さんの目利きで仕入れた魚が並ぶ一魚一恵表参道店。その中にはイートインスペース「海賊食堂一燐」が併設されています。

小川さん:一燐では数量限定の日替わり定食や新鮮な魚介類を使った海鮮丼といった食事メニューのほか、麺類・カレーライス・おつまみなど幅広い料理を提供しています。加えて、自慢の手づくり弁当や総菜もイートインOK。さらにお客さんが希望すれば、店で購入した魚をその場で調理してすぐに食べられるという最高の贅沢もお届けしとります。

せっかくなので一燐で一番人気という海鮮丼(税込1,620円)をいただいても良いでしょうか。

小川さん:今日の海鮮丼は天然のシマアジとヒラメ、天草のブランドマダイ・みやび鯛、新鮮な芦北のシラス、キハダマグロ、サーモン、イクラの7種。地元の田崎市場で朝から仕入れてきた魚と産地直送の魚介類、それぞれの旨さを存分に楽しめる贅沢などんぶりになっとっですよ。

酢飯の上に乗った色とりどりの刺身はまさに丼のアート。小川さんの匠の技を感じますね。食べるのがもったいないくらいですが、いただきます。……これ、めちゃくちゃ美味しいです!口の中で広がる豊かな海の香り、海鮮丼ならではの多様性のある味と食感…。ああ、幸せだ…。

小川さん:ありがとうございます。海鮮丼は在庫状況で中身が変わるので、季節や時期によって味わいが変わるのも魅力のひとつ。例えば、今日のシマアジは脂乗りが良く締まった身質がたまらんし、穏やかな内海で養殖されたみやび鯛は上品な甘みが最高やね。どの海幸も新鮮で臭みがなかけん、生魚が苦手な人でも食べてもらえるっちゃなかかと思うよ。

九州の甘醤油をかけた刺身を酢飯と一緒に口の中に書き込む…!これは反則級のウマさですね。では次に味噌汁はどうかな。…うわぁ~、魚の出汁がしっかりと出ていて心も温まる美味しさ。一口飲むごとに小川さんの丁寧な仕事が伝わってきます。

小川さん:天然のアラ骨だけで出汁をとっとるけん、ウマかでしょ。良かったら今日の手づくり総菜で出しとるタチウオのフライ(税込270円)も食べてみらっさんですか。

おお、半身で優に20センチを超えるフライ。では一口…。総菜なのに揚げたてみたいに衣がサクサク!身はふわっとしていて、食卓のおかずに出てきたら嬉しい一品ですね。

小川さん:下処理が面倒なタチウオも、お子さんから年配の人まで食べやすいようにプロの包丁さばきで丹精込めて三枚に。白身の上品な甘味と皮の旨味を持つタチウオをフライにすることで“香ばしさ”と“しっとりした柔らかさ”を楽しむことができるとですよ。新鮮な魚ば使った総菜はやっぱ美味しか。他にもいろんな手づくりの総菜と弁当があるけん、ぜひ一度食べてみてほしかね。

誰もが気軽に魚を買ったり、食べたりできる店にしたい。そんな代表の想いから誕生した「一魚一恵表参道」は、小川さんが毎日のように通っている田崎市場(卸売市場)がモチーフ。鮮魚も刺身もある、手作りの総菜も弁当もある。食事だってできる。2018年の創業当時から描いていた新しい形の魚屋にはたくさんの人が訪れています。

「一燐も市場の中にある食堂ばイメージして作った。そいけん、あえて会議室にあるようなキャスター付きのテーブルに、ビールケースを椅子代わりに使うことで市場食堂らしさば演出。営業時間(11~18時)内やったら調理できるけん、ランチはもちろん、ちょっと早めの晩御飯にも寄ってほしかね」

一魚一恵のInstagram公式アカウントでは、鮮魚の仕入れ情報と合わせて、その日のオススメ総菜・弁当の情報や日替わり定食の内容などを発信中。自分の好きな魚や総菜がある時に買い行くことができるので、ぜひフォローしてみてくださいね。

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
一魚一恵表参道店

熊本県八代市松江城町3-22 幸福屋百貨店1F ( Google MAP

営業時間:

11:00~18:00(定休日:日曜日・祝日・時化)
※土曜日のみ19:00迄飲食可

TEL: 0957-56-8982

URL:https://kumaon.kumamoto.jp/product/ichigyo-ichie