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暮しを楽しむの手帖
一魚一恵 表参道店#2 魚とお客さんとの出会いは一期一会。大切な命をいただくからこそ、最高の一匹を勧めたい

皆さんは普段、ご自宅で魚料理を作っていらっしゃいますか?「家族が食べない」「共働きで下処理が面倒」「美味しく調理できるか不安」など、いろいろな理由から家庭で魚を食べる機会が減っているという方も多いのではないでしょうか。

そんな方々の心強い味方が熊本県八代市にあります。それが鮮魚商「一魚一恵表参道店」。店内には料亭や専門店で扱われるほどの質の高い鮮魚がズラリと並び、オーナー・小川貴史さんが30年で培った熟練の目利きの良さを表しています。

鮮魚以外にも、刺身・切り身・下処理など魚屋ならではの対応はもちろん、広めの店内には手作りの総菜・お弁当が並ぶコーナーや定食や丼ものなど食事ができるイートインスペースが設けられており、まるで小さな市場のような雰囲気です。

2018年の創業当時は自宅の一部を改装しての営業だったという一魚一恵。今年(2024年)7月には2号店(表参道店)を構え、八代市民に愛される鮮魚のセレクトショップへと成長してきました。今回はそんな一魚一恵の創業から6年間のヒストリーを振り返っていきたいと思います。

スタートは2畳の納屋。資金も自信もなかったからこそ、作業場+移動販売というアイデアで勝負に出た

2018年に開業した「一魚一恵」。なんと最初は自宅での営業だったそうですね。

小川さん:独立するというても最初は資金も自信もなかったけんが、なんとか費用を抑えようといろいろと考えた結果、自宅の納屋ば改造して店舗にしました。広さは畳2畳分で、置いてあるのは家庭用冷蔵庫と作業台とまな板だけ。正直、自分でも「よう保健所の許可おりたな」と思うくらいの小さか店舗からスタートしたとですよ。

確かにInstagramの過去の投稿を拝見すると、いろんな工夫をしながら営業なさっていたことが伺えます。

小川さん:そうやね…。例えば、仕入れ用の冷蔵トラックで移動販売できるごと、保健所に届け出ば出したのも戦略のひとつ。仕入れが済んだトラックを自宅の庭に置いとくことで、本店で捌いた刺身・切り身や下処理した鮮魚を目の前の移動販売店に運んで販売するとですよ。本店は調理場、トラックは売り場。“狭さ”という弱みも工夫次第でなんとかなるもんやねと思ったよ。

※Instagramより
魚屋稼業30年。小川さんの実績を買われて地元スーパー等のテナントにも入られました。

小川さん:スーパーマーケットでも基本的にスタイルを変えんとが一魚一恵流。仕入れた魚はその日のうちに売り切ってしまう、売上ではなくなく今日のお客様の満足度を追いかける。お客さんたちもどんな鮮魚が並ぶのか、楽しみにしとる人も多かった。今年(2024年)開店した表参道店に重点をおくためにスーパーのテナントからは撤退したけど、魚屋としてすごく良か経験になった。

そして2020年6月には鏡町・県道14号沿いに「鮮魚商一魚一恵」(現・一魚一恵鏡町本店)がオープン。本格的な店舗販売をスタートします。

小川さん:鮮魚や刺身に加えて「天然の地魚を使った完全手作りのお惣菜を販売して更に便利で気軽にお魚を食べてもらえる魚屋を目指して行きたい」と考えたのが大きな理由。大流行したコロナウイルスの影響でオープンが4か月ほど伸びたけど、お客さんが来てくださるたびに「これからも八代で新しい魚屋の形をつくっていこう!」という想いが強くなっていったよね。

※Instagramより

鮮魚に刺身、総菜コーナー、イートインスペース…。表参道店は魚を“あーん”してあげるような場所

そして今年(2024年)、2号店となる「一魚一恵表参道店」をオープンなさったわけですが、なぜ八代の中心地に店舗を構えようと思われたのでしょうか。

小川さん:実は、僕の生家がこの近くなんですよ。デパートは売り場がキラキラしていたし、お祭りになると八代城跡に向かう参道に大勢の人が集まって、子ども心に「ここが八代の聖地だ」と思っとった。そんな場所にたまたま空き店舗が出たから、これはもうやるしかねぇ!って。ここを魚の食文化の発信基地にしてやるったい、という熱い想いで表参道店のオープンをきめました。

表参道店では鮮魚・刺身・総菜・弁当に加えて、イートインの「魚屋食堂一燐」を併設。店頭に並ぶ新鮮な魚介類をその場で調理して、すぐに味わえるという最高の贅沢を提供していらっしゃいます。

小川さん:独立を決めたきっかけが「日本の魚離れ」ということもあって、魚屋の役割は“うまい魚を売る”だけではなく、“魚に興味を持ってもらう”ことなんじゃなかかと考えた。やけん、創業当時からこのスタイルをやるのがひとつの目標。僕の中で表参道店のイメージは「魚をお客さんの口元に持って行って“あーん”してあげるような店」やね。

それはどういう…?

小川さん:世の中には誰もが知っとるメジャーな魚以外にも、おいしい魚はたくさんおる。ただ、そんなマイナーリーグの魚を鮮魚として並べてもあんまり売れん。でも、白身魚をフライにしたり、煮つけにしたりと調理加工するとほとんどの人が食べっとですよ。よーわからん魚でも美味けりゃ「この魚なんだ?」と興味を持ってもらえる。そういう小さな感動の積み重ねが大切やと思っとります。

美味しいのになぜ食べないんだと消費者のせいにするのではなく、美味しいから食べてごらんと具現化して提供する、と。

小川さん:それを実現するために思い描いたとが“競り場と商店街が一体になった市場のような店”やった。プロが買い付けに来る鮮魚、熟練の包丁さばが光る刺身、獲れたての魚を使った総菜や食事…。熊本の田崎市場のような魅力をぎゅっと詰め込んで誕生したのが一魚一恵表参道店。おすすめの魚や調理法も教えとるけん、ぜひ気軽に覗いてもらえたら嬉しかね。

あえてイートインスペースの椅子をビールケースにするなど、表参道店では市場のような雰囲気を演出していると笑う小川代表。ひとつひとつの魚介類、一人一人のお客様に対して真摯に向き合うという姿勢は“一魚一恵”という屋号にも表れています。

「僕らは普段、何気なく魚を食べとるけど、そいは人生で一度しか出会えないんですよ。魚もそれぞれ個体差があって1匹として同じものはおらん。大切な命をいただくからこそ、僕はその人にとって最高の一匹を勧めたい。そんな想いから一期一会をもじって“一魚一恵”と名付けました」

朝、市場に水揚げされた魚の中で、自分が気に入った魚だけを仕入れて販売している小川さん。お客さんに入荷情報をいち早く届けたい、と開業当初から仕入れた魚をInstagramで発信し続けています。魚と人にリスペクトを。新しい魚屋のカタチを目指して一魚一恵は今日も暖簾を掲げます。

※刺身盛りの予約注文も可能です

一魚一恵表参道店では、お盆やお正月といった長期休暇やお祝い事、ホームパーティーに最適な「お刺身盛り合わせ」の予約が可能です。小川代表おすすめの美味しいお魚を厳選して造りますので、ぜひご家族やご友人と一緒に本当に美味しい刺身を堪能してくださいね。

※公式サイトより

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
一魚一恵表参道店

熊本県八代市松江城町3-22 幸福屋百貨店1F ( Google MAP

営業時間:

11:00~18:00(定休日:日曜日・祝日・時化)
※土曜日のみ19:00迄飲食可

TEL: 0957-56-8982

URL:https://kumaon.kumamoto.jp/product/ichigyo-ichie