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使われなくなった町工場の中に小屋を建てて焙煎と販売を行っている長崎県諫早市のコーヒー豆専門店「nai」。#1、#2では、そんなユニークなお店を30歳という若さでオープンしたロースターの近藤彰さんの半生にスポットを当てて紹介してきました。
今回は20代前半からコーヒーに向き合ってきた近藤さんに、コーヒー豆や焙煎に関するこだわりについてインタビュー。プロが感じているコーヒーの魅力を教えていただきました。
近藤さん:“人”が見えるコーヒーがいいなと思っています。コーヒーって生産から私たちの手元に来るまでに本当にたくさんの人が関わっているので見えにくい。だからこそ農家やインポーターの方がわかる、トレーサビリティがしっかりと取れている豆にこだわっていますね。
近藤さん:もう1つ大きな観点があって、生産国のコーヒー豆農家が豊かになることが大切。実際、コーヒー豆よりも儲かる作物がでてきて現地の農家が鞍替えしてしまうということも起きています。コーヒー豆を生産してもらえなくなればコーヒー業界にとって死活問題。適正な価格で仕入れて販売することで、生産国の農家も私たちコーヒー豆専門店も豆を買うお客様も豊かになれると考えています。
近藤さん:きれいで風味豊かなコーヒーが好きなので、より素材の味が活きるような焙煎を心がけていますね。加えて、販売するときの基準を「焙煎してから10日」と決めているので、その期間で売り切れるくらいの量を定期的に焙煎しています。
近藤さん:実はコーヒーって焙煎から2、3週間置いた方が、ガスが抜けておいしくなるんです。毎日コーヒーを飲むよという方でも、豆がエイジングして風味が丸くなっていくのを味わっていただきたいので200gからの販売にしています。
近藤さん:文化的なところがかなり好きですね。コーヒーっていろんな「ハブ」になると思うんです。例えばレコードだったり、本だったり、アートだったり。その空間にコーヒーがあることでコミュニケーションが生まれ、人と文化、人と人をつなぐ役割を担っているんじゃないかなと感じていますね。
近藤さん:それともうひとつ、僕がコーヒーを通じて豊かになったなと思うのは、いろんな食が好きになったことです。
近藤さん:コーヒーを焙煎してカッピングで表現方法を追求していく中で、食べたことない味って表現できないじゃないですか。だから味わったことないものは「どんな感じなんだろう」ととりあえず口に入れるようになりました。それから、カッピングを繰り返して表現の細かな部分を調整するうちに味覚も鍛えられたみたいで、幸せで豊かだなぁと思っています。
町工場のむき出しの鉄骨、年代物のオーディオから響くレコード、コーヒーの香り。近藤さんが手がけたnaiの空間もゆったりとした時間が流れているなぁ、と感じながらノートに筆を走らせるのでした。
次回はいよいよ最終回。「nai」で販売している商品の紹介と近藤さんが考えているこれからの展望を伺います。
※取材・執筆/Komori Daigo
長崎県諫早市幸町13-17 ( Google MAP )
営業時間:
10:00~17:00/金曜のみ12:00~18:00(木曜定休)
TEL: 0957-46-5504