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JR新八代駅から車で約10分。市街地から少し離れた場所にコーヒー愛好家が注目する1軒のカフェがあります。レトロな裸電球の外灯に照らされた木目調の扉をくぐると、そこはレコードの重厚な音楽が流れる隠れ家のような空間。カウンター越しに「こんにちは」と声をかけてくれるオーナー・宮崎貴雄さんのやわらかな表情に安心感を覚えます。
元々、バイクの機械加工をしていた宮崎さん。30歳の時に「カフェをやってみたい」という想いで退職し、大手コーヒーチェーン店で働きながら独学で知識とスキルを勉強。日本スペシャルティコーヒー協会のアドバンスド・コーヒーマイスターなどの資格を取得して2017年、38歳で念願の「エンデレアコーヒー」をオープンしました。
今回のインタビューでは、こだわりのスペシャルティコーヒーと自家焙煎で多くのお客様を楽しませている宮崎さんの半生を紹介していきたいと思います。
宮崎さん:実はカフェで働き始めるまではコーヒーにそんなに興味はなくて、あまり好んで飲んでいなかったんですよ。自分の店を持つならカフェかなという感じだった。でも、大手コーヒーチェーン店に入ってからは、仕事をすればするほどコーヒーの奥深さに魅了されていきました。
宮崎さん:私、10代からバンドをやってきたのですが、すごく音楽に似てるんですよ。例えば、ライブでアンプにギターをつないで音を出すじゃないですか。アンプとギターの組み合わせや奏者の技量でそのクオリティが変わるように、コーヒーも豆の種類や焙煎、抽出方法でさまざまな味を表現できる。その共通点が私にとっては一番の魅力でした。
宮崎さん:あと、同じくらいの時期に、あるライフスタイル情報誌で海外のコーヒーシーンが紹介されていたんです。気になって読んでみると「スペシャルティコーヒー」の取り組みや日本の先駆者の記事が書かれていて、「コーヒーって音楽に似てるなあ」と、ますます興味が大きくなりました。
宮崎さん:私の場合は抽出が入口で、だんだんと焙煎に興味が移っていったので最初は手網焙煎から始めました。それから日本スペシャルティコーヒー協会の主催するセミナーやリトリート(焙煎合宿)へ参加したり、県外のコーヒーショップ巡りもしたり・・・。焙煎のスキルがある程度身についてからは、地元のマルシェや蚤の市に個人で出店して自家焙煎豆の販売もやっていました。
宮崎さん:当時は子どもも小さかったので、とにかく必死。セミナーはほとんど東京開催だったのですが年に数回しかないので、できる限り申し込んでコツコツ勉強を重ねました。知識やスキルが深まっていくのはすごく面白かったですし、何よりアドバンスド・コーヒーマイスターの資格が取れた時は本当に嬉しかったですね。
宮崎さん:元々この建物には洋服屋が入っていたんです。個人的にすごくいい場所だなと思っていたのでダメ元で突撃。事情を話して交渉したら「ここは物置だから使ってもいいよ」と言ってくださって、エンデレアコーヒーは現在の場所でオープンすることになりました。
宮崎さん:オープン当時は窓から外光を入れていたのですが、試しに塞いでみると個人的にすごくいいなと感じて。お客様からも「教えたいけど教えたくない、自分だけが知ってる秘密基地みたい」と言っていただきました。こぢんまりしている分、レコードで音楽を流したり、お気に入りのインテリアを飾ったりと自分の好きを詰め込んだ空間が演出できたと思います。
宮崎さん:うーん、どうですかね(笑)。でも、個人的にはお客様とコーヒーのことをお話しするのはすごく好きなので、コミュニケーションをとってもらえるのはすごく嬉しい。私が八代の本店に顔を出すのは基本的に水・木曜日の午後ですが、スタッフたちも優秀ですのでぜひ美味しいコーヒーを味わいに来てくださいね。
エンデレアコーヒーの運営で大切にしていることを尋ねると「わかりやすさと専門性のバランス」と力強く答えてくださった宮崎オーナー。そこには異業種から転身し、大手チェーンで働きながら独学で知識を深め、腕を磨いてきた宮崎さんの想いがありました。
「よく独学で専門性を追求したところをクローズアップしていただくのですが、私にとってお客様とのコミュニケーションに特化した大手コーヒーチェーンでの仕事も大きな経験。もちろん、協会で学んだ専門的な知識も大切。だからこそ、私は『わかりやすさ』と『専門性』の両輪でやっていけたらと考えています」
取材・執筆/Komori Daigo
熊本県八代市横手新町18-1 ( Google MAP )
営業時間:
10:00~18:00
TEL: 090-3663-6742