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古くより湯治場として親しまれ、肥前風土記にも記されている島原半島の小浜温泉。源泉温度105度、放熱量は日本一とされており、高温で豊富な湯量を誇る塩化物泉を求めて国内外からたくさんの人が訪れています。
海沿いの温泉街には旅館・ホテル・共同浴場が立ち並び、オーシャンビューの露天風呂や昔ながらの浴場など個性豊かな温泉を楽しめるのも魅力のひとつ。そんな小浜温泉の中で、昭和にタイムスリップしたかのような入浴体験ができるのが「味処湯処よしちょう」です。
男女別の内湯のみ。大人400円、子ども200円というリーズナブルな入浴料ながら、広々とした浴場で源泉かけ流しの温泉を楽しむことができる「よしちょう」。多くの人に支持されている“レトロな公衆浴場”の特徴について、店長の田中邦昭さんにインタビューしましたよ。
田中さん:この建物は元々、昭和40年代に建てられた宿泊施設で、廃業して空き物件になっていたのをよしちょうが買い取り、平成17年にオープンしました。2階の食事処や玄関は大幅に改装しましたが、浴場については補修のみ。高度経済成長期の大衆風呂をそのまま残しているので、「懐かしい」とおっしゃるお客様も多いんですよ。
田中さん:初めて入浴されるお客様は湯船の大きさにビックリされますね。源泉は100度前後とかなり高温のため加水して温度を調節していますが、豊富な湯量を活かしたかけ流しでご提供。湯口からは勢いよく熱々の温泉を放出していますが、大浴場の湯船をゼロから満杯にするのに7時間ほどかかっているんです。
田中さん:泉質はナトリウム塩化物泉。入浴すると温泉の中に含まれる塩分が皮膚をパックのように覆い、しっとりした美肌効果があると言われています。また、神経痛・冷え性・疲労回復・婦人病・五十肩・皮膚病といった効能も。熱めに設定されているので体の芯から温めてくれ、湯船からあがった後はしばらくポカポカの状態が続くのが特徴ですね。
田中さん:泉質については「無色透明のお湯で、汗が止まらないくらい体の芯まで温まった」「ややトロミがあって肌に吸い付くような湯ざわり」といったお客様の口コミも。また、この古さを良しとする感想も多く、「昭和の荒々しく豊かだった時代の名残を感じさせてくれる」「薄暗く、湯気が立ちこめるほど熱いがそれが良い」といった評価をいただいています。
田中さん:大人400円という入浴料でサウナまで楽しめるということでお客様にはご好評いただいています。10人くらいが入れる木製のサウナ室を80~90℃まで蒸し上げるのは年季の入った電気ストーブ。しっかり汗を流した後は水風呂でクールダウンできますので、ゆったりと心身を整えていただければと思います。
昭和レトロな大衆浴場をリーズナブルに楽しむことができる「よしちょう」ですが、メインは2階の食事処。オーシャンビューの広々とした店内で、自家製麺のちゃんぽんや地元の旬な海の幸を使った海鮮料理を味わうことができます。
そしてなんと!2階で食事をすると、入浴料が無料になるという太っ腹なサービスもオープン当初から実施。田中店長は「『維持費もかかるから有料でもいいんじゃない?』と言ってくださる方もいるんですけど、食事をしていただいた方に喜んでいただきたいので」と微笑みます。
年季の入った湯口から満杯の浴槽へ勢いよく注がれる源泉。湯気が立ち込める薄暗い空間に響く水しぶきのリズムに心地良さを感じます。熱めの塩化物泉に肩まで浸かれば体中がぽっかぽか。のんびりと手足を伸ばしながら、昭和の日本へ想いを馳せるひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
取材・執筆/Komori Daigo
長崎県雲仙市小浜町北本町905-32 ( Google MAP )
営業時間:
食事:11時~16時、17時~21時
入浴:9時~22時30分
定休:第2・4水曜、元旦
TEL: 0957-75-0107