閉じる
リーズナブルながら家庭的で美味しい料理の数々、創業昭和46年の懐かしい昔ながらの雰囲気、居心地の良い親切で丁寧な接客…。諫早市民はもちろん、市外からも足を運ぶお客様も多い人気店「力寿司」の魅力のひとつが2代目の黒田昭さん・たかねさんご夫婦です。
「高校の同級生なんですけど、昔から仲が良くて。昭さんが大阪で修業している時は遠距離恋愛だったんですよ。24歳で結婚して去年(2024年)で30年。本当にあっというまで、子どもたちはみんな成人しています」
寿司職人として調理場で黙々と腕をふるう昭さん、ハキハキと明るい笑顔でお客様と接するたかねさん。家庭でも職場でも一緒に過ごしてきたおふたりに30年の結婚生活を振り返っていただきながら、夫婦のおもしろさやこれからの目標についてお聞きしました。
たかねさん:先代夫婦のおもてなし。みんなが喜ぶ顔を見たいという気持ちがすごく強くて、これは見習わなきゃと思いましたね。ただ、ふたりとも「商売人は働かなきゃいかん!」という考えだったので、土日祝は休んだことがなくて。子どもを遊びに連れていくために平日の夕方に学校まで迎えに行ったこともありました(笑)。その生活スタイルに慣れるのに10年以上はかかったんじゃないかな。
昭さん:私がどちらかというと口下手な方なので、妻の社交的な性格は本当にありがたいんですよ。接客もする、調理もする、経理もする、営業もする…。今じゃ妻が力寿司の一番の顔。私の両親のことや子どものことで喧嘩したことはあっても、お互いのことで喧嘩したのは数えるほど。夫婦であり、頼れる相棒のような存在ですね。
たかねさん:この店を手伝いだした頃、「海苔巻きを頼む人も特上握りを頼む人も大切なお客さん。値段の高い・低いは関係ない。力寿司の料理を食べたい、とお金を使ってくださる気持ちを忘れちゃいけないよ」と昭さんに言われたんですよ。私にとってはすごく大事な言葉。口数は多くはないけれど、ちゃんと引っ張っていってくれる優しい人ですね。
昭さん:朝から晩までずっと一緒というのが私たちの日常だったので、熟年夫婦にありがちな「パートナーと何を話せばよいかわからない」という感覚が逆にわからないんですよ。ふたりとも黙っていても気まずくないし、気も使わない。かといって束縛もなくて用事がある時は勝手にどうぞという感じで。お互いに自然体でいられるので、家でも仕事場でもすごく居心地はいいですね。
たかねさん:私たちはアナログ世代なのでSNSの拡散力には本当に驚きました。20代くらいの女の子がひとりでふらっといらっしゃって「インスタに載っていた料理をください」みたいな。情報の速さがありがたい反面、仕入れによって内容が変わる寿司屋としては「この投稿を見て来たお客さんに提供できなかったらどうしよう」という不安もありましたね。
たかねさん:それで息子に相談したら「母さん、それが良いんだよ。反響があってなくなっちゃったら、今度は早く来ようと思ってもらえるからさ」と言われて。「なるほど、確かに」とその意見が腹に落ちたんですよ。それから美味しく見える写真の撮り方を教えてもらいながら、料理や食材、仕事道具などマメに投稿するようになりました。
昭さん:そうですね。元々、ウチは大衆寿司屋なので敷居は高くない。SNSを見て初めていらっしゃるお客さんが増えるのは嬉しいなと思っています。ただ、Instagramはあくまでもツールのひとつ。ほかの飲食店さんの投稿やフォロワーはあまり気にせず、自分たちは自分たちらしくやっていければと考えています。
昭さん:今、私たちは55歳。10年、20年と経っていくうちにできることが少なくなっていくんだろうなという感覚は持っています。だからこそ、無理をせず細く長くやっていく。無理して出前も宴会もやって提供が遅れて迷惑をかけるよりも、誠心誠意、真心こめてお客様に向き合いたいなと。70歳を過ぎても変わらず美味しいものを日々作っていけたらと思っています。
「3人の息子も立派に成長して子育ても落ち着いたので、最近は定期的に連休をとるようにしてるんですよ。今までは中々行けなかった遠出もするようになった。楽しみを作りながらコツコツがんばっていきたいですね」
2024年には真珠婚の節目を迎えた昭さんとたかねさん。その優しく温かな絆は自慢の看板メニュー・夫婦蒸しのよう。これからも夫婦二人三脚で先代から受け継いだ街の大衆寿司屋を守り続けます。
取材・執筆/Komori Daigo
長崎県諫早市東小路町12-16 ( Google MAP )
営業時間:
昼11:30~14:00、夜17:30~22:00
TEL: 0957-22-1468