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長崎の交通の要衝として歴史ある県央のまち・諫早市。かつて高城と呼ばれた城跡を整備して設けられた諫早公園には文化財や記念碑も設けられ、自然の中に歴史を感じることができる市民の憩いの場となっています。
そんな諫早公園の西側に広がる商店街エリア。どこか懐かしさを感じる街並みの一角に1軒の大衆寿司屋があります。昭和46年創業の「力寿司」。半世紀以上に渡り、諫早市民に愛されてきた力寿司を切り盛りしているのが2代目の黒田昭さんです。
「ご家族やグループでご利用いただいたり、宴会に使っていただいたり…。若者からご年配の方まで幅広い年齢層のお客様がご来店してくださっていますね」とほほ笑む黒田さん。そんな2代目の半生を振り返りながら諫早の大衆寿司屋・力寿司の魅力を紐解いていこうと思います。
黒田さん:小さい頃から漠然と「自分も寿司屋になるのかな」という気持ちはありました。やってみてもいいかなと思い始めたのは学生の頃。繁忙期に店を手伝わされていたんですけど、お客さんから「おお、持ってきてくれてありがとう」って声をかけられて。こちらがお金をいただいているのに感謝されたことが嬉しかったのが寿司職人を目指したきっかけですね。
黒田さん:それが両親に「寿司職人になりたい」と伝えたら、苦労を知っているからこそ「大学へ行け」「もっと良か仕事がある」と言われましたね。でも、最終的には私の意見を尊重してくれて、高校卒業後は料理専門学校に進学。大阪の割烹料亭で4年くらい修行した後に、両親から「店の人手が足りない」と相談を受けて23歳で戻ってきました。
黒田さん:父は職人気質で、いわゆる昭和の男。加えて、高度経済成長やバブル景気を経験した世代なので「お客様が喜ぶなら、商売人は働いてなんぼ」という考え方でした。意見が食い違うこともありましたが、常にお客様へのおもてなしを第一に考える父から学んだことも多い。傘寿を超えた今もランチの時間は手伝いでカウンターに入ってくれています。
黒田さん:おかげおかげの精神、ですね。周りに支えてくれる人たちがいるからこそ自分がある。そんな信念を持つ父の口癖が「おかげおかげ」なんです。力寿司が半世紀以上も続いてきたのは皆さんのおかげ。寿司職人として、商売人として、両親が大切にしてきたことを令和の時代も受け継いでいきたいと思っていますね。
黒田さん:やはり“基本を守る”ということですね。料理って生活の中で必要不可欠なもの。だから昔の人たちが「ああじゃないこうじゃない」と試行錯誤した結果、残ったのが料理の基本だと思うんです。例えば「アラ炊きはお湯をかけて汚れを取る」とか。そういった当たり前のことこそ大事にしたいと思っています。
黒田さん:そうですね。毎朝、地元の黒潮市場へ出向いて食材を吟味しています。長崎は近くに漁場がたくさんあるので、アジやサバ、ヒラス、タイなど美味い魚がたくさん水揚げされるのが大きな魅力。長年通っているので市場の方も「良いの入ってますよ!」と教えてくださるんですよ。
黒田さん:格好の良い魚は「あ、これだな」という感じでピンとくるんですよ。ちなみに、魚は種類によって足の速さが全然違う。例えば、イワシは寿司ネタにするなら絶対その日うちですし、タイも新鮮なピチピチした身がウマい。逆にアジは一晩おいても旨味が出て美味しい。その魚の最高の状態で味わっていただけるように工夫しています。
黒田さん:寿司職人というと特別な感じがあるのかもしれないですが、私からすればどんな仕事をしている人でもみんなプロ。自分が手掛けたものが評価されるのが嬉しいというのは変わりません。私の場合はカウンターの中からお客さんがおいしそうに召し上がってくださる姿を拝見すること。そしてもう一度足を運んでくださった時は本当に嬉しいですね。
黒田さんが先代から受け継ぎ、親子2代で守ってきた力寿司の味。口コミでも「ネタが大きく食べ応えがある」「天ぷらや茶わん蒸しも最高」「昔から変わらない味」「接客も丁寧」と高評価のコメントが並んでいます。
昔ながらの雰囲気が漂う力寿司。生まれ育った街で多くの人に美味しい料理を届けたいと営業を続ける黒田さんに諫早の魅力を尋ねるとこんな答えが返ってきました。
「交通の便が良いところ。長崎、島原、佐世保といった県内はもちろん、佐賀、福岡、熊本へも行きやすい。あと、諫早って地元に根付いて会社やお店を頑張っている人が多いんですよ。結構、お店のマスター同士で仲がいいので、そういうのを含めて大好きな故郷ですね」
取材・執筆/Komori Daigo
長崎県諫早市東小路町12-16 ( Google MAP )
営業時間:
昼11:30~14:00、夜17:30~22:00
TEL: 0957-22-1468