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暮しを楽しむの手帖
白水堂思案橋本店#2 熟練の技術と柔軟な発想で生み出される極上の和菓子。季節の移ろいを目と口で感じる自慢の逸品です

地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を伝える文化庁の日本遺産。そのストーリーのひとつとして、長崎・佐賀・福岡を中心とした「砂糖文化を広めた長崎街道~シュガーロード~」が登録されています。

江戸時代以降、出島から入ってきた砂糖や菓子技術によって、カステラを代表とする南蛮菓子やよりよりなどの中華菓子といった独自の菓子文化が花開いた長崎市。その中で、和菓子・主菓子の店として明治20年に産声を上げ、1世紀以上、長崎一の繁華街で営業を続けているのが「白水堂思案橋本店」です。

白水堂と言えば、名物の「桃かすてら」やお土産にぴったりの「五三焼かすてら」ですが、思案橋本店のメイン商品は「季節の和菓子」。店内のショーケースには職人がひとつひとつ丁寧に手づくりした、季節の移ろいを綴る繊細な色使いの和菓子が並びます。

そんな白水堂の和菓子について、販売・総務の楠本颯さんにインタビュー。菓子づくりのこだわりや地域の皆さんが愛してやまない和菓子の魅力をご紹介します。

※Instagramより

常にひとつ目を作る気持ちで向き合う…。老舗の看板を背負う職人たちに受け継がれる想いとは

130年以上の歴史がある白水堂では、さまざまなモチーフの和菓子を熟練の職人さんが手づくりで仕上げていらっしゃいます。その中で大切になさっていることはなんでしょうか。

楠本さん:先代から受け継がれる「常にひとつ目を作る気持ちで向き合う」ということです。手づくりだからこそ「ひとつくらい…」といった気持ちの緩みが評価を落としてしまう。ちょっとしたバラつきはあるかもしれませんが、10個目でも100個目でも“ひとつ目”という気持ちで作るという和菓子への真っ直ぐな想いを大切にしています。

慢心せず愚直に。その意識で職人ひとりひとりが励んでいる、と。

楠本さん:そうですね。菓子づくりの工場(こうば)は思案橋本店の奥にあって、和菓子・洋菓子・かすてらの各部門が同じ空間で作業しています。140年近く積み重ねられてきた“伝統の味”と“職人の技術と経験”。それを基本にしながらも、時代のニーズに寄り添う発想や感性も柔軟に受け入れていく“温故知新の精神”が白水堂のこだわりです。

※公式サイトより
思案橋本店にはたくさんの和菓子がズラリ。秋桜や栗など職人さんの繊細な技術が光る商品がショーケースを華やかに飾っています。

楠本さん:思案橋本店では常時10~15種類くらいの和菓子を販売。固定商品が半分、もう半分が季節によって入れ替える「季節の調べ」シリーズとなっています。春はさくら、夏はひまわり、秋は紅葉、冬は水仙etc…。その春夏秋冬をモチーフにした色鮮やかな上生菓子の数々は、季節の風情を感じられる白水堂自慢の逸品ですね。

節分、父の日、七夕、ハロウィン、クリスマスなど年中行事に合わせた和菓子も期間限定で販売していらっしゃいます。

楠本さん:生菓子なので賞味期限は冷蔵で3日ほど。冷凍してしまうと味が落ちてしまうため、店頭のみでの販売を行っています。お客様に店舗まで足を運んでいただくからこそ、季節の移ろいを感じる商品をご用意させていただく。今年はどんな和菓子があるのかしら、と毎年楽しみにしてくださる常連さんも多いんですよ。

※Instagramより

ピンポン玉サイズで表現される季節のアート。自分へのご褒美に、大切な人への贈り物に、ワンランク上の和菓子はいかが?

大切な方への手土産やおもてなしなどにピッタリな白水堂の和菓子。改めて、その魅力を教えていただけますか。

楠本さん:ひとつは「見た目」。職人の手から1つ1つ手作業で生み出される商品は、モチーフを表現する細やかな色使いと匠の造形美という熟練の技を感じます。特に、1~2ヶ月のサイクルで5~8種類の商品が入れ替わる「季節の調べ」シリーズはその最たるもの。まるで季節を味わうかのように、目と口の両方で愉しむことができます。

見た目はもちろん、しっとり柔らかなくちどけも特長のひとつですよね。

楠本さん:パッと見た感じは同じに見える和菓子ですが、実は、商品によって材料や作り方が異なります。例えば、あんこは黒・白の2種類。それを練り切りで包んだり、求肥で包んだり、デザインによっては餡の中に求肥を入れたり…。ひとつずつ味わいや食感が違うのも、上生菓子ならではの魅力だと思っています。

※公式サイトより
思案橋本店に和菓子をお買い求めにいらっしゃるお客様はどんな方が多いのでしょうか。

楠本さん:20~30代の若い方からご年配の方まで、年齢層は広めの印象です。和菓子が好きでご自宅用に購入されるお客様もいらっしゃいますし、敬老の日や父の日・母の日、誕生日などの贈り物として詰め合わせをお求めになる方も多いです。割とコンパクトに収まるのも、白水堂の和菓子をお選びいただく要因なのかなと感じています。

白水堂のInstagramアカウントでは、季節感を演出した生菓子の画像も多く並んでいます。

楠本さん:和菓子をひとつのアートとして楽しむ方も多いんですよ。なので、当社のInstagram公式アカウントでも“商品を魅せる”ことを意識した写真を投稿しています。そのほか、イベントや新商品・季節の商品などさまざまな情報も発信していますので、ぜひフォローしていただけたら嬉しいですね。

※Instagramより

ちなみに、Instagramで#白水堂と検索してみると、季節の生菓子や名物のミルクセーキなど、ユーザーの皆さんが投稿した画像がズラリ。楠本さんは「丁寧に作り上げた和菓子がたくさんの方の日常に彩りを添えていることが実感でき、社員一同嬉しく思っています」とほほ笑みます。

「現在、菓子作りに関わる職人さんは8名。普段は生菓子や焼き菓子など部門に分かれて、ほぼ手作業で白水堂の様々な商品を製造しています。限定商品がある時や繁忙期には朝早く出勤し、社長のアイデアを形にする商品開発にも関わっている。本当に職人の皆さんにはリスペクトしかありませんよ」

130年以上続く老舗菓子店の屋台骨として会社をガッチリと支えている白水堂の菓子職人。繊細で美しい和菓子を口に運べば、「常にひとつ目をつくる気持ちで向き合う」という真っ直ぐな想いを味わうことができるでしょう。

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
白水堂思案橋本店

長崎県長崎市油屋町1-3 ( Google MAP

営業時間:

9:30~18:00(和風喫茶志らみず11:00~17:00)

TEL: 095-826-0145

URL:https://hakusuido.jp/