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暮しを楽しむの手帖
白水堂思案橋本店#3 老舗菓子店の中で暖簾をかざす「和風喫茶志らみず」。世代を超えて親しまれる絶品の“和の甘味”をいただきます

長崎駅から崇福寺行きの路面電車に乗り、車窓に映る長崎の繁華街を眺めながら揺られること約10分。小気味よいリズムを刻みながら到着した思案橋電停で下車し、“鍛冶市通り”と書かれた商店街のアーチ門を抜けたすぐ先に、明治20年創業の菓子屋「白水堂思案橋本店」があります。

扇紋の描かれた真っ白な暖簾をくぐると、色彩が美しい季節の和菓子や長崎名物・桃かすてらがお出迎え。熟練の職人が丁寧に作り上げた商品が並ぶ店内を奥に進むと、今回の目的地である「和風喫茶志らみず」に到着です。

暖簾の前に設けられた石畳みのアプローチ。敷き詰められた小石、鹿威しに手水鉢、緑の植物など歴史ある和の雰囲気に別世界に来たかのような感覚を覚えながら店内へ。席へと案内してくださった楠本颯さんに創業当時から続く「志らみず」について話を伺いました。

ゆったりと過ごすことができる“和の甘味処”。豊富なメニューが魅力です

老舗菓子店・白水堂の奥にある和風喫茶志らみず。昔からの素朴な味わいが世代を超えて親しまれているわけですが、いつ頃からこのスタイルで営業されているのでしょうか。

楠本さん:白水堂がこの地に創業した明治20年、和菓子屋に併設した和風喫茶として志らみずは産声をあげました。スタートの音頭をとったのは後に2代目となる白水一二。当時は1階が菓子店で2階が喫茶店。数度の店舗改装で今は菓子店の奥にありますが、130年以上変わらない“和の甘味処”というコンセプトを受け継いで営業を続けています。

和の雰囲気が漂う店内はすごく落ち着いていて、ゆっくりと過ごすことができそうです。

楠本さん:志らみずではお客様からご注文を受けた後に、ひとつひとつ丁寧に手作りをしています。自家製の団子やお餅など創業当時から変わらない味わいが大きな魅力。地元の方がおしゃべりに花を咲かせたり、観光客の方が甘味を食べながら疲れた体を癒したり…。長崎名物のミルクセーキや国産米を使用した白玉のメニューはよくご注文いただいていますね。

お品書きには老舗菓子屋が営む喫茶店ならではの和の甘味がズラリ。この種類の豊富さも志らみずの特徴の1つでだと思います。

楠本さん:人気のミルクセーキのほか、あんみつ豆やフルーツ白玉、にしき餅、焼き団子、和風喫茶ならではのトッピングが楽しめるかき氷などバラエティに富んだメニューをご用意。桃かすてらや季節の和菓子など白水堂自慢の甘味5種からお好みの商品をお選びいただける「志らみずセット」もおすすめですよ。

※Instagramより
食事メニューもあるのは嬉しいですね。

楠本さん:お食事はモチモチの手打ち麺が好評のうどんをご提供。ちらし寿司やたまご丼、甘味から選べるお得なセットもありますので、だし香る旨味たっぷりの極上うどんと一緒にお楽しみいただけます。また、冬は具だくさんの暖かいお雑煮、夏はのどごし爽やかな素麺も期間限定メニューとして登場。ほっと一息つきながらゆっくりと召し上がっていただければ幸いです。

※Instagramより

長崎では“食べ物”なんです。スプーンですくって味わうミルクセーキで口の中が幸せいっぱい

楠本さん、せっかくなので志らみず名物のミルクセーキをいただいても良いでしょうか?

楠本さん:もちろんです!ミルクセーキと聞くと県外の方は牛乳ベースの甘い飲み物をイメージする方も多いと多いますが、長崎のミルクセーキはかき氷を加えたフローズンデザート。パフェグラスから飛び出るほどに盛り付けられたルクセーキをスプーンですくって食べるのが長崎流。当店では一年中通して注文が入る人気商品なんですよ。

頭に乗ったチェリーの赤とクリーム色のミルクセーキのコントラストが美しい…。それではいただきます。……おお、これはおいしい。ジェラートのような滑らかでひんやりとした食感。濃厚なミルクのコクと卵黄や練乳の上品な甘みが絶妙にマッチしています。一度食べれば多くの人に支持されている理由がよくわかる味わいですね。

楠本さん:ありがとうございます。志らみずのミルクセーキのこだわりはその作り方。氷を削ってかき氷にしたところに蜜を絡めるのが一般的なのですが、当店では固形の氷と蜜を一緒にミキサーに入れて攪拌(かくはん)することで、シャリシャリとしたさっぱりとした後味に。軽めの食感なので喉越しも爽やさも人気の秘密です。

ご馳走様でした。これぞ長崎の味。食べ終わるのがもったいないくらいでした。

楠本さん:では、これからの寒い季節にぴったりのぜんざいも召し上がってみませんか?志らみずのぜんざいは、国産餅米を使用した焼き餅を入れた「田舎ぜんざい」と国産米を原料に丁寧に仕上げた「白玉ぜんざい」の2種類。今回はモチモチした食感で女性人気も高い「白玉ぜんざい」をお出ししますね。

趣ある器に張られた粒あんのプールの中で丸い白玉が6個、輪になって泳いでいるよう。では、この和の風情を感じる白玉ぜんざい、いただきましょう。……これは冬の寒い時期に食べるのは体が温まって良いですねぇ。白玉のもっちり感、あんこのなめらかな口当たり、ほんのり感じる豆の風味。どこか懐かしさを感じる味わいです。

楠本さん:国産の上もち粉から丁寧に練り上げている白玉は、噛み応えのある弾力が特徴。添えてある塩昆布を箸休めに食べれば、粒あんの上品な甘さをより感じていただけます。ちなみに、当店の白玉を存分に堪能したいという方には釜揚げ白玉がオススメ。暑い時期にはフルーツ白玉やかき氷など冷たい甘味でも楽しめますので、ぜひお好みでご注文くださいませ。

※Instagramより

記者が食レポしたミルクセーキや白玉ぜんざい以外にも魅力的な和の甘味が揃う、和風喫茶志らみず。創業明治20年の歴史ある老舗菓子店に暖簾をかざす同店には、ゴールデンウィークやお盆、年末年始の時期になると親子3代や親戚同士でいらっしゃるお客様が多くなると楠本さんは話します。

「子どもの頃、大人に連れられて志らみずに来ていた人にとって、ウチの甘味は懐かしさも感じる郷里の味。だからこそ『この味を我が子にも伝えたい』『両親に育ててくれた感謝を伝えたい』という想いで来店されている方も多いのではないでしょうか」

温故知新の精神のもと、130年以上受け継がれる手作りの味わい。世代を超えて愛され続ける理由は、何気ない日常を素敵な思い出に変える魔法のようなひとときなのかもしれませんね。

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
白水堂思案橋本店

長崎県長崎市油屋町1-3 ( Google MAP

営業時間:

9:30~18:00(和風喫茶志らみず11:00~17:00)

TEL: 095-826-0145

URL:https://hakusuido.jp/