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暮しを楽しむの手帖
白水堂思案橋本店#1 長崎の歴史と文化を感じる明治創業の老舗菓子店。熟練の職人がつくる「桃かすてら」と「五三焼かすてら」はいかが?

江戸時代、日本の玄関口として開港した長崎市。その中心的繁華街で明治20年に創業し、5代続く老舗菓子専門店として地域に愛され続けるお店があります。

その店の名は「白水堂」。思案橋本店には第26回全国菓子大博覧会で名誉総裁賞を受賞した銘菓「桃かすてら」や季節の和菓子、さまざまな土産物など、職人がひとつひとつ手づくりで仕上げた長崎自慢のお菓子が賑やかに並んでいます。

「ウチの商品は全て本店の奥にある工場(こうば)で作っているんですよ」とにこやかな表情で教えてくださったのは販売・総務を担当している楠本颯さん。29歳という若さながら5代目の白水竜也さんからの信任も厚い楠本さんに白水堂のコンセプトや人気のお土産品について伺いました。

温故知新。130年以上続く伝統の味と最先端の技術で長崎の味を全国へ

長崎の老舗菓子店として人気の白水堂。まずはその歴史を簡単にお教えください。

楠本さん:白水堂は初代の白水喜八が和菓子屋として創業してから130年以上にわたりこの地で営業を続けています。江戸時代に海外との貿易港として栄えた長崎は南蛮菓子や中華菓子を扱うお店が多かったこともあり、和菓子・主菓子を製造・販売している白水堂は地域の皆様に長くご愛顧いただけているのだと思います。

明治、大正、昭和、平成、令和と1世紀以上営業を続けているわけですが、現在、大切になさっているコンセプトはなんでしょうか。

楠本さん:5代目の白水竜也が継いだのが1992年。世の中のさまざまな技術が革新的に発達する中で、白水堂は「温故知新」を大きなテーマとして掲げました。長年、積み重ねてきた伝統の味を大切にしながら最先端の技術を有効活用する。例えば、クール便で長崎銘菓を全国へ届けるオンラインショップの運営もそのひとつなんですよ。

思案橋の本店以外にも、浜屋百貨店、ゆめタウン夢彩都、長崎駅のかもめ市場に出店。長崎市内に4店舗を展開していらっしゃいます。

楠本さん:それぞれの施設の客層に合わせて扱う商品を変えています。季節の和菓子を取り揃え併設の和風喫茶「志らみず」では甘味が楽しめる思案橋本店、デパ地下の和菓子屋としてギフトのご利用が多い浜屋店。2023年にオープンした夢彩都店はフードコートのそばにあるので、定番の生菓子・土産菓子のほかにテイクアウト用のミルクセーキやぜんざい、和菓子と抹茶のセットなども販売しています。

※テイクアウト用ミルクセーキ(Instagramより)
市民の来店が多い本店、浜屋店、夢彩都店に対して、長崎駅構内にある長崎街道かもめ市場店には観光客向けのお土産品がズラリと並んでいます。

楠本さん:かもめ市場店では観光客から人気の高いカステラの種類を豊富にラインアップしています。特に人気なのはかもめ市場店限定の「朝イチかすてら」。朝に焼きあがったばかりのかすてらは生地がふんわりしていて絶品なんですよ。その他にも「ミルクセーキ大福」や五三焼かすてら「ひとくち巻」など長崎ならではのお土産をご用意。観光でお越しの際にはぜひお立ち寄りくださいね。

かもめ市場店(ホームページより)

代表格の商品は「桃かすてら」と「五三焼かすてら」。オンラインショップでも販売中です

130年以上の伝統ある白水堂。その中でも代表的なお菓子はなんでしょうか。

楠本さん:やはり「桃かすてら」ですね。中国で縁起の良いとされる“桃”と南蛮貿易によって伝わったカステラを融合させた長崎らしい銘菓のひとつ。しっとりと焼きあげたかすてらの上に、熟練の職人が特製のフォンダン(すり蜜)を丁寧に重ね付けすることで、甘さ控えめながら柔らかくとろけるような食感を生み出しているんですよ。

※桃かすてら(Instagramより)
桃をかたどった砂糖細工のインパクトが大きい桃かすてら。長崎では桃の節句の縁起菓子としても親しまれていますよね。

楠本さん:白水堂では大・小・こももの3種類をご用意。特に一人でも軽く食べやすい「こもも」は手土産・お土産としても人気で、チョコレート生地の「チョコもも」やレモンケーキをイメージした「れもも」といった派生シリーズも誕生しました。賞味期限は冷蔵で7日間と長くはありませんが、これは保存料を使用していないから。縁起物だからこそ安心・安全にもこだわっています。

※れもも(Instagramより)
白水堂の桃かすてらはオンラインショップでも購入可能。“クール便での配送”からは綺麗な形のままお客様へお届けしたいという想いが伝わってきます。

楠本さん:そんな「桃かすてら」と並ぶ商品のひとつが「五三焼かすてら(※)」。通常のカステラよりも卵黄を多く使用することで、より濃厚でしっとりした味わいをお楽しみいただけます。卵黄と卵白の割合は5対3で、これが“五三焼”という名前の由来。昔ながらの製法で焼き上げた白水堂自慢の高級かすてらとなっています。

注)思案橋本店の「五三焼かすてら」は予約販売のみ

※五三焼かすてら(Instagramより)
かすてら系商品は全て五三焼というところに白水堂のこだわりを感じます。

楠本さん:ありがとうございます。五三焼かすてらを食べやすいスティックタイプに加工した「長崎かすてら巻スティック」もオススメ。直径3cm、長さ10cmほどで個包装されているので、手土産・お土産にご購入されるお客様も多いんですよ。かすてらもオンラインショップで販売していますので、「食べてみたい」という方はご注文いただければ嬉しいです。

※かすてら巻スティック(Instagramより)

白水堂の魅力ある商品を丁寧に説明してくださった楠本さんは、長崎の秋の風物詩・長崎くんちの踊町で生まれ育った生粋の長崎っ子。7年に1度の奉納踊に情熱を注ぐ中、在学していた学校のOBである5代目・白水社長と縁ができ、高校卒業後すぐに白水堂へ入社したと振り返ります。

「当時、桃かすてらという商品は知っていたんですけど、文化的な面はよくわかっていなくて。2・3月の桃かすてら、4・5月の鯉菓子の繁忙期を経験して、注文の多さに驚くとともに親御さんのわが子を思う願いの強さを実感しました。桃の節句、端午の節句という大事な日に、白水堂を選んでいただける感謝を胸に、もっと多くの方に知っていただければと思っています」

自分の踊町は4年後で白水堂141年目の年なんですよね、と笑う楠本さん。長崎くんちでは御花と呼ばれるお礼の品に白水堂の商品を選ぶ方も多いそう。長崎文化を感じる街中の老舗菓子屋。観光で長崎にお越しの際は一度立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
白水堂思案橋本店

長崎県長崎市油屋町1-3 ( Google MAP

営業時間:

9:30~18:00(和風喫茶志らみず11:00~17:00)

TEL: 095-826-0145

URL:https://hakusuido.jp/