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世界有数の活火山・雲仙岳がもたらす豊かな土壌と橘湾・有明海という日本有数の漁場に恵まれている島原半島。雲仙温泉郷のひとつ、小浜温泉がある雲仙市小浜町でも農業・水産業が盛んで、さまざまな特産品が生産されています。
そんな小浜町で約20年、リーズナブルな金額で旬の魚と旨い焼鳥を提供し、地元の人々の胃袋をがっちりと掴んできたお店が「居酒屋仁」。小浜で生まれ育ったオーナー・田中智さんの茶目っ気のある人柄も相まって、毎日のように小浜人が集う赤ちょうちんです。
「始めたころは20代だったから、若気の至りというか、勢いでなんとかしてるとこはありましたね。今はもう40代で体力も衰えているので、だいぶ守りに入ってます」と昔を思い出しながら目を細める田中さん。人生の半分を捧げて経営を続けてきた居酒屋仁の“これまで”と“これから”にスポットを当てていきたいと思います。
田中さん:そうですね…。田舎の居酒屋だから20年近くやってれば、色んなことがありますよ(笑)。でも、特に印象に残っているといえば、“ぐっさん”かな。2013年に小浜を舞台にしたNHKドラマが放送されたんですけど、そのロケ期間中に出演者の山口智充さんがプライベートでよく来てくださったんですよ。
田中さん:そうです。ウチのことをかなり気に入ってくださって、ロケチームの皆さんとの親睦会に使っていただいたり、東京に戻る前に「もう一度、大将のサバを食べたい」って寄ってくださったり…。テレビの最前線で活躍している方が、小浜の海の幸をウマいと言いながら食べる姿は料理人冥利に尽きました。
田中さん:ぐっさんは本当に良い方なんですよ。打ち上げの時なんか、自前のギターを持参してくださって、お世話になったお返しにと生歌を披露してくださった。私が若いころにぐっさんがテレビで歌っていた曲を目の前で聴けるなんて…、もう本当に感動しました。他のお客さんもみんな2階に上がってきて、さながら即興のライブ会場。床が抜けるんじゃないかとヒヤヒヤしたのも良い思い出です(笑)。
田中さん:実は1年ほど前から動いている計画があって。それが「おばまレモン栽培プロジェクト」。この辺りの使っていない畑を活用して、自分たちでレモンを育てようというプロジェクトです。すでに140本くらいのレモン苗を植えていて、2年後には実が収穫できる予定なんですよ。
田中さん:ウチの看板ドリンクのひとつ「たっぷりレモンサワー」の人気がきっかけ。たっぷりレモンサワーには輪切りにした無農薬・減農薬の国産レモンをたくさん入れているのですが、昨今のレモン人気でなかなか手に入りにくくなってきたんです。そこで「同じ柑橘類のミカンが栽培されている小浜ならレモンもいけるやろう」と思い立ち、自家栽培することに決めました。
田中さん:収穫したレモンはウチの店で使うだけではなく、ゆくゆくはブランド化して「おばまレモン」として商品展開していきたい。果実はもちろん、加工して「おばまレモンスカッシュ」や「おばまレモンサワー」といった土産物を作るのもいいですよね。…ただ、プロジェクトは始まったばかり。夢物語のような計画ですが、しっかりと実を結ぶように一歩一歩進めていきたいと思っています。
養蜂場をやっている知人がいるので、そことコラボしてハチミツレモンを作るのも面白そうですよね、とアツく未来予想図を語ってくださる田中オーナー。プロジェクトの一つの案として、地元農家の方々と連携することも視野に入れています。
「苗はこちらが用意して無償提供。それを農家さんの畑で育てていただき、収穫したレモンはウチが直接買い取る。そうすれば、私は自分で管理する手間が省けますし、農家さんは安定した収入を得ることができる。そういうWin-Winの関係でやっていけたらいいなと思っています」
食を通じて小浜を元気に。居酒屋仁の挑戦はまだまだ続きます。
取材・執筆/Komori Daigo
長崎県雲仙市小浜町北本町905−4 ( Google MAP )
営業時間:
17:30~24:00
TEL: 0957-74-4129