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暮しを楽しむの手帖
串揚げ旬菜晴#1 たくさんの縁と出会いに育まれて・・・。アラフォーの大将が営む八代の小さな居酒屋

創作串揚げと旬の料理をこだわりのお酒とご一緒に――。
そんなコンセプトを掲げる居酒屋が八代市中心エリアにあります。「串揚げ旬菜晴」。カウンター6席、テーブル3つのこぢんまりとした居酒屋ながら、大将・吉村嘉英さんのつくる絶品料理の数々に胃袋を掴まれた人々が通う隠れた名店です。

「スーツを着て会社に出社する自分が想像できなかった」と振り返る吉村さんが飲食業界に足を踏み入れたのは熊本大学法学部に在籍していた学生時代。当時、行きつけだった居酒屋の店長からアルバイトに誘われたことがきっかけでした。

飲食店大変そうというイメージはあったものの、働けば働くほどその面白さの虜になっていった吉村さん。彼の修業時代から2017年の独立・開業までの半生を伺いながら、改めて“居酒屋の魅力”について考えてみたいと思います。

熊本の有名居酒屋で経験を積んだ修業時代。たくさんの縁を胸に地元・八代へ

大学卒業後、アルバイトをしていた居酒屋に社員として入社した吉村さん。修業時代はどのような生活をなさっていたのでしょうか。

吉村さん:自炊するなど多少は料理の経験はあったのですが、やはりそこはプロの世界。最初は盛付係で包丁なんて握らせてもらえませんでした。練習するのは営業終了して片付けが終わった後にこっそりと。4年くらいはそんな生活をしていたかなと思います。

大卒1年目からすごい努力をされていたんですね。

吉村さん:いやいや、自分は不器用なのでできるようになるまでに人一倍時間がかかるんですよ。大変でしたけど、好きだからこそ続けることができた。それに在籍していた居酒屋は「居酒屋甲子園」という大会で日本一に輝いた店ということもあり、1日1日がすごく濃い経験の連続。結婚した頃には店長として店舗を任されるまで成長させてもらいました。

多い時で同時に4店舗のマネジメントを任されていた吉村さん。自分の夢にチャレンジしようと独立を決意なさいます。

吉村さん:修業時代に熊本市内の飲食店オーナーさんや料理長さんとの繋がりがあったので、そういった方々に「独立前に勉強させてください!」と直談判して3ヶ月~半年くらいのスパンで働かせてもらったのはすごく良い経験になりましたね。

それまでずっと熊本でお仕事をされていたわけですが、故郷である八代で店を構えた理由はなんだったのでしょうか。

吉村さん:元々は熊本で開業を考えていたのですが親父が倒れてしまって。こちらに帰ってきた方がいいのかなと思い、八代の状況を見てまわることにしたんです。いろいろ調査してみるうちに「八代でやってみたい」という気持ちが膨らみ、妻もOKしてくれたので地元に帰ることに決めました。

“晴”の屋号に流れる師弟の絆、夫婦で実現した大きな夢

吉村さん31歳の2017年にオープンした「串揚げ旬菜晴」。この屋号の由来を教えてください。

吉村さん:熊本時代に担当していた店舗の名前を譲り受けました。当時は「晩酌屋晴」で営業していたのですが、ボヤで閉店してしまったんです。私自身、すごく気に入っていた店だったので、オーナーに「自分の店に“晴”の屋号を使っても良いですか?」と確認したところ、「ぜひ使ってくれ」と快諾してくれました。

お師匠様から愛弟子へ最高のプレゼントですね。

吉村さん:本当にすごくいい人なんですよ。この渋い斜め皿も「晩酌屋晴」の形見として譲ってくださったもの。ひっくり返すと高台裏に「晴」の文字が入っているんです。男気というか人情というか・・・。素人同然だった私をここまで育ててくれたことも含めていくら感謝しても足りないですね。

比較的小さめの店舗にもこだわりがあると聞きました。

吉村さん:カウンターもテーブルも自分で見られるくらいの店が良かったんです。ここは居抜き物件でちょうど良い広さだったのですが、かなり内装が古かったのでDIYで店舗改装をすることに。扉だけはプロに頼みましたが、入り口に柱を建てたり、カウンター席と小上がりを分けたりと自分たちで1から作りました。

手作りだからこそ味のある内装になっていると思います。

吉村さん:ありがとうございます。素人同然の私たちが調べながら作業したので、完成するまでにかかった時間は3ヶ月。今思えば業者さんに任せた方が上手く言った部分も多かったように思いますが、苦労した分、私たち夫婦にとっては小さいながらもとても愛着のある店になりましたね。

2017年のオープンから7年。「串揚げ旬菜晴」の店に明かりが灯ると地域に住む方々や近くで働く人達が集い、活気あふれる小さな店舗には賑やかな時間が流れます。額に汗を流しながら常連さんとコミュニケーションをとっている対象に、居酒屋の魅力を尋ねるとこんな答えが返ってきました。

「老若男女、職業関係なくいろんな人に出会えて話を聞けること。そして悩んでたり困ってたりする人がいたら『あの人だったら解決できそうだな』と別のお客さんにつなぐこともあります。そういう出逢いを演出できるのも居酒屋オーナーのおもしろさですし、何より喜んでもらえればそれが一番ですね」

こぢんまりとした店だからこそ、お客様との間にあまり壁を作らずに懐に飛び込んでいくのが吉村流。学生時代から居酒屋という空間の中でたくさんの縁と出会いにふれて成長してきた大将だからこそ、また来たくなる居心地よい場所を提供できているのではないでしょうか。

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
串揚げ旬菜晴

熊本県八代市本町1-7-12 梓会館1階 ( Google MAP

営業時間:

18:00~last(定休日:月曜)

TEL: 0965-43-0088

URL:http://syunsai-haru.com/