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九州第二の人口を有しながら、温暖な海岸島嶼エリア・中央部の広大な平野・標高の高い山間地域まで豊かな自然が広がる熊本県。その変化に富んだ地形・気候を活かし、米や野菜、果樹、畜産、漁業と多彩な農産物が生産されています。
「川に行けばアユが、干潟に行けばシャクが採れる。豚・牛・鶏に加えて馬刺しもある。本当に熊本は食材の宝庫だと思います」。そう語るのは八代市にある居酒屋「串揚げ旬菜晴」の代表・吉村嘉英さん。オープンから7年目を迎える同店には30~50代の男性を中心に様々なお客様が足を運んでいます。
吉村さん自らが直売所やスーパー、鮮魚店、精肉店等を訪れて購入した食材は新鮮そのもの。仕入れ状況によって日々メニューを変え、手書きのお品書きを毎日作っているという「串揚げ旬菜晴」の“食”へのこだわりをお聞きしたいと思います。
吉村さん:状態の良さですね。以前、大阪や京都のお店で働いた経験があるのですが、やはり大都市ということもあって全国から食材が集まってくるんですよ。ただ、新鮮さでは産地のスーパーで販売しているものの方が良かったりするんですよね。
吉村さん:やっぱり、その街に住む人って地の物を食べるんですよ。京都の人は京都の、北海道の人は北海道の、熊本の人は熊本の食材を。だからこそ、八代で店をやるんだったら地産地消にこだわりたいという想いは強いですし、他の産地の食材を仕入れるときはより状態の良いものを選ぶようにしていますね。
吉村さん:私はお皿から料理の発想を得ることが多いんです。作った料理をどの器に盛りつけようかなというよりも、「このお皿には煮つけが合いそうだな」「あの器には刺身よりもカルパッチョだな」という感じ。そういう意味ではこだわりがある方だと思います。
吉村さん:質感、色味、そして形。個人的にそろえてみたいなと思っているのが、八代の「高田焼(こうだやき)」。象嵌(ぞうがん)という技法で製作された焼き物は、渋い色味でシンプルながらかっこいいんです。400年の伝統ある食器や酒器を見ていると、料理人としての創作意欲が湧きたちますね。
吉村さん:地元の食材についてはできるだけ農家さんから直接仕入れるようにしていること、化学調味料を使わないこと。あと、新しいメニューを考えるときには料理の三要素である「味」「温度」「食感」に気をつけています。
吉村さん:例えば「酒蒸し」ってあるじゃないですか。あれって酒と水を混ぜて茹でているお店が多いんですけど、ウチは100%酒だけで蒸しています。あとは完全無添加の自家製ゆず胡椒。毎年冬になったら手作りしていて、黄ゆずと赤唐辛子の風味豊かな味わいが人気なんですよ。瓶詰めで売って欲しいと言われることもあるのですが、こればっかりは売りません(笑)。
吉村さん:できるだけお客様の状況を観察するようにしています。1回目のオーダーなのか、2回目のオーダーなのか、そもそもウチが一軒目なのか二軒目なのか。それによって少し味付けを変えているんですよ。お客様との距離が近いからこそ、そういう心配りを意識していますね。
吉村さん:客商売だからといって自分の店が儲かることをだけを考えるのではなく、串揚げ旬菜晴の価格帯の中で常に良い食材を選ぶことも大事なこと。たまに高いけどすごく良い食材が入った時なんかは利益度外視で提供することもあります。やっぱり料理は食べてもらってなんぼですからね。
平日でもオープンから間もなく満席になる「串揚げ旬菜晴」。代表がカウンターの常連さんとコミュニケーションをとりながら料理を作る傍らで、奥様の奈美さんとアルバイトスタッフがドリンクの提供を提供したりオーダーを伺ったりと気持ちの良い接客でテキパキと働いています。
「料理をひとりでやる分、妻やバイトの子には接客を任せていて、できるだけお客さまとコミュニケーションとってもらうようにしています。その内容を私に持ち帰ってもらうことで、手が空いた時にいろんな方とお話しできるんです」
アルバイトスタッフの中にお客様の顔と名前を覚えるのがすごく得意な子がいるのでめちゃくちゃ助かっていますね、と笑う吉村さん。おそろいのTシャツの背中に大きく描かれた屋号のように賑やかな店内で過ごしていると、なんだか心も晴れ晴れとしてくるようでした。
取材・執筆/Komori Daigo
熊本県八代市本町1-7-12 梓会館1階 ( Google MAP )
営業時間:
18:00~last(定休日:月曜)
TEL: 0965-43-0088