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雄大な不知火海と険しい九州山地、そして日本三大急流のひとつに数えられる球磨川が流れる八代市。豊かな自然と長い歴史が育んできた熊本第二の都市で、夫婦ふたりで20年に渡って営業を続けている小さな居酒屋があります。
「旬彩葉琉舟(しゅんさいはるしゅう)」。中学卒業後に料理人の世界に飛び込み鹿児島や熊本の寿司屋・料亭・ホテル等でキャリアを積んできたご主人・吉田智司さんが作る料理の数々は、八代市民はもちろん県外のビジネスマンや観光客の舌を楽しませています。
「主人は10歳年上で私が21歳の時に結婚しました。当時はまさか自分たちのお店を持って20年も続けているなんて思ってもみなかったです」と笑うのは妻の貴美子さん。主に接客を担当しているという貴美子さんにお店のこと、夫婦のことについてお話を伺いました。
貴美子さん:元々、自分の店を持つつもりはなかったんですよ。でも、この場所で居酒屋を経営していた知り合いから「辞めるけん、居抜きでどがん?」って話をいただいて。当時、主人はホテルに勤めていたのですが、「もうすぐアラフォーやし、これも良い転機かな」という感じで、前向きに独立を考えるようになりました。
貴美子さん:子どもの名前ですね。娘が「はるか」、息子が「しゅうや」。私が子どもたちを呼ぶときに「はる~、しゅう~」と声をかけていたんですけど、その響きがいいと主人が「はるしゅう」と決めました。
貴美子さん:ただ、漢字は完全に当て字だったので「はるしゅう」って読めない方も多い。だから、初めて来たお客様からはよく店名の由来は聞かれるんですよ(笑)。6歳、4歳だった子どもたちも今では立派な社会人。長いようであっという間でした。
貴美子さん:仕事をしている間は店主(智司さん)と従業員(貴美子さん)という関係性なんですよ。元々、私がアルバイトしたお寿司屋さんに料理人として勤めていたのが主人だったので、その頃の立場が今でも続いている感じ。だからこそ20年一緒にやってこられたのかなと思います。
貴美子さん:役割としては主人が調理、私が接客と盛り付け。夫婦でやっている小さな店なので、お客さんが全然来ない日があっても「ふたりでゆっくり過ごせている」と気持ちを切り替えられたことも長く営業を続けてこられた一因かなと感じています。
貴美子さん:たまに理不尽なことがあると仕事が終わった後に文句を言う時もありますけどね(笑)。でもそれは主人が仕事とプライベートを切り分けて、ちゃんと話を聞いてくれているということ。あと何年やっていけるかわかりませんが、主人が納得するまで夫婦二人三脚で頑張っていきたいと思います。
「常連さんは主人の目利きや技術を信用していて、『こいがよかですよ』と勧めると『じゃあそいで』と注文してくださる。好みのメニューがあると毎回同じものを食べる方もいて、こっちが『いつも同じで飽きないんですか?』と聞きたくなるくらいなんですよ」
朗らかな人柄で楽しくお話をしてくださる貴美子さんの横で、多くを語らずに黙々と仕込みを続ける職人気質の智司さん。20年という月日を一緒に歩いてきたおふたりの間にある“信頼”という大きな絆が旬彩葉琉舟の魅力のひとつなのかもしれません。
取材・執筆/Komori Daigo
熊本県八代市本町2丁目1-1 ( Google MAP )
営業時間:
17時30分~22時(日曜日)
TEL: 0965-32-8894