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暮しを楽しむの手帖
すずめの食堂#2小浜温泉の裏路地で。梁を活かした隠れ家的空間と無添加料理へのこだわり

長崎県雲仙市小浜町北本町

古くより湯治場として親しまれてきた雲仙市の小浜温泉。橘湾を望む風光明媚なメインストリートには、夏場でも白い湯気が立ちのぼり、日本一の熱量を誇る105℃の源泉温度と全国屈指の豊富な湯量をうかがい知ることができます。

そんな温泉街の散策コースとして人気なのが、路地裏にある小浜温泉散歩道。車がすれ違うのがやっとのレンガ畳を歩いていくと、小浜郵便局の先に1軒の小さな食堂が見えてきます。「すずめの食堂」。控えめに光る真鍮の看板に刻まれた屋号を見ながら扉を開けると、店主の坂元忠相さんが笑顔で迎えてくれました。

剝き出しの梁と裸電球のようなデザインの照明がレトロさを演出している店内。そんな温かい空間で坂元さんがこだわっているのが、野菜、魚介類、豚肉・鶏肉など地元の食材を使用した無添加の料理です。今回の記事では、すずめの食堂の空間と地元食材、そして無添加の魅力に迫ります。

梁を残した古民家リノベーション。11席の小さな食堂ができるまで

すずめの食堂は裏路地にあるので、お店に向かって歩いている時からなんだかワクワクしました。

坂元さん:この散歩道沿いには湯煙が立ち上るレトロな街並みや歴史あるお寺、湧水スポットがあるので、歩いて巡る観光客も多いんですよ。オープンしたばかりの頃は、地元の方はもちろん、近くのホテルに泊まっている人が散策の途中で寄ってくださったこともありましたね。

店内の雰囲気も隠れ家みたいで素敵ですよね。

坂元さん:この建物は4軒つながった長屋で、そのうちの1室を大工さんにお願いしてきれいにリノベーションしました。最初に内装を解体してスケルトンにしたのですが、その時に天井裏から現れたのがこの立派な梁。非常にカッコよかったので、「これはぜひ残してほしい」と伝え、梁を活かしたデザインに仕上げていただきました。

坂元さんが大好きだというすずめグッズも印象的です。

坂元さん:そうなんですよ。箸置きは鳥をモチーフにしたものですし、カトラリーケースにホコリが入らないように掛けている手ぬぐいもスズメ柄。出窓のスペースにもガラス製のすずめの置物を飾っています。実は、外国のすずめの仲間って日本みたいにコロコロしてないんですよ。ほっぺの丸もない種類が多いので、外国人観光客から「キュート!」と言われることも多いですね。

ちなみに、座席は何席あるのでしょうか?

坂元さん:カウンターが5席、2名様用のテーブルが1つ、4名様用のテーブルが1つ。全部で11席です。よく「駐車場はないんですか?」と聞かれるのですが、専用の駐車場はないので国道の反対側にある小浜マリンパークの有料駐車場をご案内しています。また、店内は禁煙となっていますのでご協力いただければ幸いです。

島原半島の恵みを大切にしたいから。手作りの「返し」が生む優しい味

では続いて、食材のこだわりについてお聞きしていきましょう。

坂元さん:食材はほぼ長崎県産を使っています。仕入れ先も基本的に地元のお店で、魚介類は小浜・雲仙の飲食店や旅館からの信頼も厚い田中鮮魚店さんと荒木鮮魚店さん。東京から来た友人が「九州の魚が美味しいのは知ってるけど小浜は別格だね」と驚くほどの質の高さ。野菜は近くの直売所を何箇所か回って仕入れています。島原半島の野菜の一番の魅力は味が濃くて力強いところですね。

島原半島のブランド豚、ブランド鶏も使用していらっしゃいます。

坂元さん:そうなんですよ。雲仙岳の裾野の豊かな自然環境下で育った「長崎じげもん豚」や「雲仙しまばら鶏」のほか、出荷前に米を食べさせることで旨み成分のオレイン酸を多く含む柿田ファームの「雲仙あかね豚」、南島原市の芳寿牧場で育てられた脂身が甘くてジューシーな最高品質のSPF豚「芳寿豚」と、島原半島ならではの食材を用意しています。

※Instagramより
坂元さんのこだわりは地産地消だけではありません。可能な限り無添加での料理を追求していらっしゃいます。

坂元さん:プライベートでもずっと素材の味を大事にしてきたので、無添加の料理を提供したいという想いがありますね。もちろん、うまみ調味料を使えば美味しくなるのは分かっているんですが、慣れてしまうと自分の味覚が変わってしまう気がして…。オイスターソースなどもアミノ酸が入っていない無添加のものを選んで使っています。

調味料や麹なども自家製なんですよね。

坂元さん:はい。醤油とみりん、砂糖を煮詰めて作る「返し」は、大阪時代からずっと継ぎ足しで使っているもの。小浜に来てからは少し甘めに配合を変えたのですが、醤油の角が取れて、まろやかになりました。自家製の麹調味料は長崎県産のお米を使った生麹を使ってじっくりと仕込んでいます。優しい塩味と自然な甘さ、そして料理に深みを与えてくれる「すずめの食堂」の味の要ですね。

※Instagramより

雲仙岳の豊かな土壌が育む山の幸、三方を海に囲まれた島原半島の海の幸…。坂元さんが惚れ込んだ長崎の食材を捌く時に愛用しているのが、小中学校の同級生から開業祝いとしてプレゼントされたイチョウのまな板です。

「友人が材木屋の社長をしていて、『プロの板前さんも使っている木材だ』と教えてもらったんです。予算と大きさを伝えて作ってもらったところ、届いた包みには「開店祝い」の文字。代金は頑なに受け取ってもらえなくて。彼の厚意に応えるためにも長く使っていきたいと思います」

食材を盛り付ける器も長崎ゆかりの波佐見焼。「せっかく長崎に住むことになったのだから」と、現地まで足を運んで一つひとつ選んだといいます。古い建物の記憶を残した空間、そして丁寧に選び抜かれた食材と器。そのどれもに、坂元さんの手間を惜しまない姿勢がにじんでいます。

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
すずめの食堂

長崎県雲仙市小浜町北本町905-22-4 ( Google MAP

営業時間:

朝 8:00~10:00、昼11:30~14:30
※定休日/月・火及び第1・3水曜

TEL: 090-7705-0645