インド料理＆カフェディル#1 ネパールから来日した若きオーナーが諫早で叶えた父の夢

2025年3月。たくさんの住宅が立ち並ぶニュータウンで暮らす人々の生活を支えている商業施設・西諌早地区センターに本格的なインド料理が楽しめる「インド料理＆カフェディル」がオープンしました。

インドと日本で30年以上の経験を持つカレー職人が独自のレシピと最高級のスパイスを用いて仕上げるインドの伝統料理は絶品。2024年に諫早市高来町で開業した1号店「インド料理ディル」は日本人顔負けの温かい接客で人気店へと急成長し、お客様の声に応える形で西諌早へ2号店を構えました。

そんなディルを経営しているのがオーナーのパウデル・シリ・キシナさん（24歳）。実はディルのシェフを務めるのはパウデルさんのお父様で、息子は経営、父は料理と二人三脚で事業を展開していらっしゃいます。今回はそんなパウデルさんが日本で会社を立ち上げた経緯について伺っていこうと思います。

第2の故郷・長崎の人たちに本格的なインド料理とおもてなしの時間を楽しんでほしい

パウデルさんはネパールのご出身でいらっしゃいます。来日されたのはいつ頃なのでしょうか？

パウデルさん：私が日本へ来たのは2017年。当時16歳だったんですけど、父がずっと働いている国を見てみたいと思いビザを申請しました。ネパールは海がないので人生で初めて見た海や公共交通機関の正確さ、日本人のおもてなしの心にとても感動したのを覚えています。

その時にお父様が勤務していらっしゃったのが長崎県の飲食店なんですよね。

パウデルさん：実は最初は2、3ヶ月で帰ろうと思っていたんです。でも、日本の素晴らしさに刺激を受けて「ここで学びたい、何かを成し遂げたい」と思うようになりました。そこで長崎工業高校に編入し、コンピュータ関連の専門学校へ進学。ネパールにいたころは東京のIT企業に入社してシステムエンジニアとして働くことになるとは思ってもみませんでした。

2024年に独立して会社を設立。お父様がシェフを務める「インド料理＆カフェディル」を諫早市高来町にオープンなさいます。

パウデルさん：きっかけは父の「いつか自分の店を持ってみたい」という言葉。父はインドで10年、日本で17年、家族に年数回しか会えなくてもインド料理のシェフとして頑張ってくれたから、私は日本に来ることができた。そんな父に恩返しをしたいという想いから、「独立して会社を興すから一緒に店をやろうよ」と提案しました。

素敵な親子愛。現在は経営・接客をパウデルさん、調理をお父様が担当と役割を分担していらっしゃるんですよね。

パウデルさん：父はお客様に自分のベストの料理を提供したい、という想いが強いので、そこは任せています。一方で経営のことはからっきしなので、価格設定やセットの考案、売上などを考えるのは私の役目。前職でデザインの仕事もしていたので、ホームページやメニュー表なんかも私が作っているんですよ。

ところで、なぜ諫早で飲食店をやろうと思ったんですか？

パウデルさん：私にとって長崎県は日本で一番好きな場所。日本語を学び、高校にも通い、バイトもしました。飲食事業をやるなら人口の多い東京みたいな大都会の方がいろいろと便利なんでしょうけど、諫早を選んだ最大の決め手は居心地の良さ。私にとって第二の故郷である長崎県の皆さんに最高のインド料理と文化を届けたいと思ったんです。

高来店の開業から約1年。今年（2025年）3月には西諌早地区センターに2号店がオープンしました。

パウデルさん：会社を立ち上げた時は不安もあったんですけど、高来の1号店では地域の皆さんや常連さんがすごく応援してくださって。その後押しのおかげで西諌早地区センターへの出店を決めました。まだオープンして2ヶ月ほどですが、足を運んでくださるお客様も徐々に増加。ぜひ、ディルの本格的な料理でインドの風土を味わっていただけたら嬉しいです。

流暢な日本語でインタビューに答えてくださったパウデルさん。ユーモアを交えながら自身の半生を語ってくださる言葉の節々から、日本が好きという気持ちが伝わってきます。そんなパウデルさんが大切にしているのが日本で学んだ“おもてなしの心”。祖国ネパールから来日した従業員に対しても、接客の大切さを伝えています。

「飲食店は料理とサービスの両方が大事。どちらか一方が欠けていてはお客様に心からの満足感と食の幸福を提供することはできません。だから私は常にお客様目線で判断するように心がけています。父が作る最高のインド料理を楽しみつつ、お客様がゆったりと自分の時間を過ごせる…。そんな店にしていきたいなと思っていますね」

取材・執筆／Komori Daigo

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