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長崎県大村市玖島
大村市にある人気パン店「あさころパン」。香ばしい香りに包まれた店内も、閉店時間が近づけば、どうしても売れ残ってしまうパンが出てきます。「精魂込めて焼いたパンをひとつも無駄にしたくない」。店主・北川智浩さん、麻衣子さんご夫婦のそんな想いから始まったのが、食品ロス削減に向けたある取り組みでした。
シリーズ最終回となる今回は、Instagramでの告知直後に完売することもあるという大好評の「もったいないセット」について、そしてパンが繋ぐ地域のお客様との温かいエピソードをご紹介します。「あさころパン」が目指す、これからのパン屋さんの在り方とは――。

麻衣子さん:売れ残ってしまったパンをその日のうちにラップで包み、冷凍して販売する「もったいないセット」としてスタートさせています。2000円分のパンをランダムに詰め合わせて、1セット1400円というお得な価格で提供しているのですが、これが大変好評で。1日5セットほどと数は多くないのですが、Instagramのストーリーズで「出ました!」とお知らせすると、あっという間に売り切れてしまうほどの反響をいただいています。
智浩さん:圧倒的に子育て中のお母さんや働いている女性の方が多く、「忙しいから助かる~」と仰ってくださいます。冷凍庫にストックしておけば、自分や家族の好きなタイミングで美味しいパンを食べられますからね。実は、当店のパン生地は水分量が多いため、冷凍してもパサつかず、品質を落とさずに提供できるんです。この特性が冷凍販売にぴったりハマって良かったなと感じていますね。

麻衣子さん:そうですね。以前に比べて、冷凍食品に対する抵抗感は減ってきていると感じます。「パンは好きだけど、忙しくて頻繁には来店できない」という方が、まとめて冷凍セットを購入され、ご自宅で楽しまれることも多いんですよ。ただ、解凍の加減が難しいパンもありますので、「こうすれば焼きたてのように美味しくなりますよ」と具体的な方法も丁寧にお伝えするようにしています。
智浩さん:おっしゃる通りです。食品ロスの削減になりますし、当店にとってもありがたく、お客様からも「助かる」と言っていただける。まさに売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方良し」の取り組みだと思っています。パンを廃棄しないという意味でも、これからも大切に続けていきたいですね。

智浩さん:お店の近くに「長崎医療センター」という大きな病院があるのですが、そちらに通院中の方や妊婦検診帰りの方がよく寄ってくださるんです。「今日、検診が終わったので来ました!」と、頑張った自分へのご褒美や病気が治ったお祝いとしてパンを購入してくださる。そんな前向きなタイミングで、あさころパンを選んでいただけるのは本当に嬉しく、パン屋冥利に尽きますね。
麻衣子さん:そうですね。パンは人の気持ちを明るくしたり、楽しくさせたりする力があるのだと改めて感じました実は以前、ご病気でしばらく来店できなかった常連さんがいらっしゃったんです。無事に回復されて、「治ったらここのパンを食べたくなってね」と久しぶりに顔を見せてくださった時は、胸が熱くなりました。

智浩さん:ありがとうございます。基本的には大村市内にお住まいのお客様がほとんどですが、大村には長崎空港がありますので、「空港に向かう途中に寄りました」という観光客の方もいらっしゃいます。地元の方の日常使いだけでなく、旅の思い出の一つとして立ち寄っていただけるのも光栄ですね。
麻衣子さん:私たちは毎日、食べてくれるお客様の顔を思い浮かべながら、一生懸命パンを焼いています。食べた瞬間に「美味しいね」と笑顔になっていただけるパンを作ろう。その想いは開業当初から変わりません。少しでも気になったら、まずは1個でもいいので味わってみてください。きっと私たちの気持ちが伝わると信じています。

早朝5時、夫婦並んで厨房に立つことから始まる「あさころパン」の1日。ここには、素材への真摯なこだわりと、食品ロスを出さない工夫、そして何より「お客様に笑顔になってほしい」という温かい愛情が満ち溢れていました。
取材を通じて感じたその空気感は、きっとパンの味にも表れているはずです。あなたも大村の小さなパン屋さんを訪れて、心もお腹も満たされる幸せなひとときを感じてみませんか?
取材・執筆/KomoriDaigo

長崎県大村市玖島1-62-6 ( Google MAP )
営業時間:
9:30-19:00(定休日:日、月、祝/時々不定休)
TEL: 0957-54-3525