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長崎県大村市玖島
長崎県大村市。歴史情緒あふれる城下町の一角に、ふわりと小麦の香りを漂わせるお店があります。「あさころパン」。ここはパン職人の北川智浩さん・麻衣子さんご夫婦が二人三脚で営む“ちいさなパン屋さん”です。
「パン屋さんって、毎日のルーティンなんですよ」。そう言って朗らかに笑う麻衣子さん。毎日同じリズムを刻みながら、地域の人々に焼きたてのパンと笑顔を届けるお二人ですが、その裏側にはどのような日々があるのでしょうか。早朝の静寂から、閉店後の家族団らんまで。ご夫婦の奮闘ぶりと温かい日常の風景をお届けします。

麻衣子さん:朝は5時に夫婦そろって起床し、5時半からは2人で並んで生地の成形に入ります。私はメロンパンや総菜パンなど、大体7種類ほどの成形を担当し、その横で主人は別の種類のパンを成形しながら、少しずつオーブンで焼き上げていく……という流れですね。夫婦で呼吸を合わせながら、開店に向けて準備を進めています。
智浩さん:そうですね、パンの種類によって生地を仕込むタイミングは全く異なります。例えば、高加水のフランスパンなどは前日に仕込んで冷蔵庫で一晩ゆっくりと熟成させますが、逆にお湯でこねる「湯種(ゆだね)生地」の食パンなどは、当日仕込みの方がもちもちとして美味しく焼き上がるんですよ。それぞれのパンが一番輝くタイミングを見極めながら、パズルのように作業を組み合わせています。

麻衣子さん:まさにその通りです(笑)。ここは店舗兼住居になっているので、仕事の合間の朝7時くらいに一度手を止めて、「起きなさい!」と娘たちをたたき起こしに行きます。子どもたちの通学・通園準備と開店準備が同時並行で進むので、本当に目が回るような忙しさで…。子どもたちを送り出した後、息つく暇もなくすぐにお店の準備に戻るのが毎朝の光景ですね。
智浩さん:全体の6割から7割くらいですね。開店してからも手は止めず、お昼のピーク時に向けてパンの成形と焼成を繰り返していきます。大体11時半から12時くらいに全てのパンが焼き揃うイメージでしょうか。ある程度パン作りのめどが立った段階で、妻には厨房から接客や販売の方へ回ってもらっています。

智浩さん:午後になりお客様の波が落ち着いてきたら、夕方の分や翌日の仕込みを始めます。実はお店の近くに学童保育があって、夕方お迎えに来たお母さんたちがウチにも寄ってくださるので、17時頃にもう一度ピークが来るんですよ。今年(2026年)で9年目を迎えることもあって、「小さいけれど比較的遅くまで開いているパン屋さん」として地域の方に知っていただけているのは嬉しいですね。
麻衣子さん:もうそこは、店を営業しながらですよね。家事をしに自宅へ戻って、また店に戻ってきて……の繰り返しなので、仕事とプライベートの境目はほとんどありません。夫婦で家のこともお店のことも、協力しながらなんとか回しています。ただ、「ただいま!」と帰ってくる子どもたちの声を聞きながら仕事ができるのは、この環境ならではの良さかもしれませんね。

智浩さん:そうですね。私が料理担当なので、時間が空いた時に厨房で夕食の準備もしています。この店の厨房はガラス張りでお客様から見える構造になっているので、夕食を仕込んでいると「それ、何のパンになるんですか?」と聞かれることもしばしばで。そんな時は正直に「これ、今日の晩ご飯なんです」とお答えすると、皆さん「あらー!」と笑ってくださいます(笑)。
麻衣子さん:夜7時に閉店した後は、1時間ほど片付けを行います。そのあとも必要に応じて、ラスクやライ麦パンなど、特別な商品の仕込みをすることもありますね。全ての業務を終えて、私たちが床に就くのは午後10時から11時ごろです。毎日があっという間に過ぎていきますが、明日も美味しいパンを届けられるよう、しっかりと体を休めてまた明日の朝に備えます。

夜7時の閉店後、片付けや翌日の仕込みを終え、おふたりが眠りにつくのは午後10時から11時頃。あっという間に過ぎ去る1日の中で、手間ひまを惜しまず、愛情を込めた優しいパンが毎日焼き上げられています。
夫婦二人三脚で美味しいパンを創り出す、あさころパンのルーティン。それは慌ただしくも愛おしい、パン屋さんのリアルな毎日でした。「毎日、大変ですよ」と笑いながら話してくださる北川さんご夫妻。その様子からは、お互いを支え合い、地域の中で生きる素敵な関係性が伝わってくるようでした。
取材・執筆/KomoriDaigo

長崎県大村市玖島1-62-6 ( Google MAP )
営業時間:
9:30-19:00(定休日:日、月、祝/時々不定休)
TEL: 0957-54-3525