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長崎県諫早市の中心市街地にあるアーケード商店街。レトロな雰囲気が漂うストリートから脇道に入り赤茶色のレンガ道路を歩いていくと、1軒の食事処の店先で風にゆれる橙色の暖簾が目に留まります。店内に入ると色とりどりの総菜が盛り付けられた大皿がカウンターにずらり。割烹着姿の松竹恵子さんが「いらっしゃい」と明るい声をかけてくれます。
笑顔が素敵な松竹さんが営む「ささや」がオープンしたのは33年前(2023年時点)。以来、地元食材を中心にした手料理と店主との心温まるひとときを求めて多くの常連さんが集まっています。そんな地域に愛される「ささや」が誕生するまでのヒストリーを松竹さんにお伺いしました。
松竹さん:実は、中学生の時に見たテレビドラマがきっかけなんです。雰囲気の良い小料理屋のシーンで、女将役の篠ヒロコさんがカウンター越しに小付けを出しているシーンを見て「私のやりたいことはこれだ!」と感じました。
松竹さん:それからは自分の夢を叶えるためにはどうしたらいいのか、ということ真剣に考えました。なので、進路も将来から逆算。簿記など店舗経営するための必要な知識を学ぶために商業高校へ進学し、卒業後は東京のバス会社にバスガイドとして就職しました。
松竹さん:お給料をもらいながら全国津々浦々へ行くことができるから。各地の小料理屋をまわって勉強したり、その土地のまちやスポットを巡って話材の引き出しを増やしたり・・・。父に3年と期限を決められていたので短い間でしたが、非常に充実した日々を送っていましたね。
松竹さん:諫早に戻ってきてからは地元の文化会館で仕事をしながら着付け教室に通いました。やっぱり小料理屋の女将は着物姿がいいじゃないですか。最初は自分が着るためでしたが、最終的には花嫁さんの着付けができるまでになりました。
松竹さん:開業してから半年間は初めてのことと忙しさとでテンパってしまってほとんど覚えていないんですよ(笑)。ただ、高校時代の恩師が来店してくださった時に入ってくるなり涙を浮かべて喜んでくださったのは本当に嬉しかったですね。
松竹さん:地元の方はもちろん、バスガイド時代の先輩や同僚も開店祝いを送ってくださったり、一緒に仕事をしたバス運転手の方が来店してくださったり・・・。こんなに私を信じて応援してくださる人たちがいるんだ、と改めて感じました。
松竹さん:夢って生きていくうえでの推進力になると思うんです。だから私はやりたいことや前向きなフレーズを口に出すようにしていますし、来店するお客様にもポジティブになっていただきたい。「味と心のおもてなし」を大切に、日々、営業しています。
「お客様とは自分の家族と同じように接します」とほほ笑む松竹さん。昼間は割烹着、夜は着物姿で腕によりをかけて料理をつくっています。やさしい味付けの手料理と明るく元気な店主の人柄で、体と心の栄養を味わえる「ささや」。足を運べばきっとファンになること間違いなしですよ。
※取材・執筆/Komori Daigo
長崎県諫早市東小路町9‐9 ( Google MAP )
営業時間:
11:30~13:30、
17:30~23:00(定休日:日曜・祝祭日)
TEL: 0957-21-3973