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西に大村湾、東に多良岳と豊かな自然に囲まれている長崎県大村市。多良山系の西側斜面を流れる郡川中流のほど近く、琴平岳の麓でイタリアンレストラン「イル ロスパッチョ」は営業しています。
「最近は店の周りも住宅地になりましたが、オープン当初は田んぼに囲まれた一軒家。夏になるとカエルの鳴き声が聞こえてくるような場所だったので、“ロスパッチョ(Rospaccio/ヒキガエル)”と名付けたんです」
オーナーの富永望さんがこの店を開いたのは2012年。昭和の民家をリノベーションした店内には古き良き田舎らしさを残した雰囲気とナポリの本格ピザ窯で焼くピッツァの香ばしい匂いが漂っています。そこで今回は、イル ロスパッチョのコンセプトやピザ窯について富永オーナーにお伺いしていきますよ。
富永さん:地元・大村に戻って独立しようと考えた時にイメージしたのが田舎のイタリアンレストラン。この物件を初めて見た時に「周りは田んぼだし、窓を開ければ風が入ってきて気持ちがいいし、内装も良い古さだな」と思い、この場所に決めました。10年でだいぶ開発が進んじゃってかなり様変わりしちゃったんですけどね(笑)。
富永さん:赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまで幅広い世代の方に来ていただきたいなという思いがあったので、テーブル、カウンターのほかに小上がりの個室を作りました。接客もお客様の世代や構成を見て寄り添ったサービスが提供できるように心がけています。
富永さん:独立を意識した時から本場の薪窯でやろうと決めていました。それで注文したら、窯に貼るタイルを自由にカスタマイズできますよ、と言われて。そこでイメージしたのがイタリアのプロサッカーチームのSSCナポリ。クラブカラーをイメージした青と白の色合いにすることで田舎っぽさの中に南イタリアの雰囲気を取り入れようと思ったんです。
富永さん:薪に使っているのは樫(カシ)。燃えにくい硬い木なので火持ちが良く、火力も安定しているので焼き加減を調整しやすいんですよ。木材が跳ねることがあまりないのも特徴で、今は熊本から取り寄せた薪を使用しています。
富永さん:一言で表すなら「火が生きている」ところですね。
富永さん:薪には水分が含まれているので窯の中が蒸し焼きのようになるんです。加えて、石の輻射熱(遠赤外線)を利用して幅広い温度帯で焼き上げるのが伝統的な薪窯。約450度の高温・短時間で加熱することで生地に含まれる水分の蒸発を抑え、表面はカリッと中はもっちりした食感のナポリピッツァができあがります。
富永さん:ありがとうございます。火加減を調整しながら窯の中をベストな状態にするというのはいまだに難しい。特にランチは0の状態の窯に朝から薪をくべて温めていくので、営業中も輻射熱を安定させるために調整をしているんですよ。
富永さん:ピザを焼く時間は1分半程度。お客様に最高の状態で召し上がっていただきたいという想いがありますので、オープン当初から基本的に1枚ずつ焼き上げてきました。ただ、一度にたくさんの注文が来た時に時間がかかってしまうというジレンマもあって、それが大きな課題ですね。
オープンから10年以上、薪窯に向き合い続けてきた富永さん。ピザ職人として窯の特性を熟知しているからこそ、商品の美味しさや焼き上がりには妥協を許しません。その背景には富永さんのこんな想いがありました。
「私にとってピザとは“飽きない遊び”のようなもの。窯の状態、生地の成形や伸ばし方、焼き方、気温や湿度、天気・・・。同じ種類のピザを焼いても1枚1枚違うんですよ。その中で“どうしたら美味しくなるかな”と考えるのがすごく楽しいんですよね」
自然体で楽しくピザを焼く。薪窯の中で膨らんでいく生地を見つめる富永オーナーの真剣な眼差しからは「美味しいピザをお客様に食べてもらいたい」という強い想いが溢れているようでした。
取材・執筆/Komori Daigo
長崎県大村市坂口町520-3 ( Google MAP )
営業時間:
営業時間:ランチ11:30~14:00、ディナー17:30~21:30(月曜定休/不定休あり)
TEL: 0957-52-5056