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暮しを楽しむの手帖
イル ロスパッチョ#1 工業高校出身の青年がミシュランにも評価された熟練のピッツァイオーロになるまで

長崎県大村市の郊外にあるイタリアンレストラン「イル ロスパッチョ」。

2012年のオープン直後から薪窯で焼いた本格的なナポリピッツァを味わえると人気を集め、2019年には「ミシュランプレート」掲載、今年(2023年)4月には「食べログ ピザ 百名店」に選出された実力店です。

そんなイル ロスパッチョを訪れたのは真夏日の午後。平日にもかかわらず多くのお客様で賑わう店内の様子に、地域に愛されているレストランだな、と感じます。

オーナーを務めるのは富永望さん(45歳)。オーダーが入ると手際よく成形した生地をパーラーで窯の中へ。吹き出す汗をぬぐいながらベストな焼き加減を見極める様は、熟練のピッツァイオーロ(ピザ職人)の技を感じさせます。そこで今回は、富永さんが料理の道に進んだきっかけやイタリアンの魅力についてインタビュー。夢を追いかけた青年のエネルギーに満ちた半生をぜひお読みください。

独立するなら大村でイタリア料理店を・・・。ピザづくりの情熱と故郷へのリスペクトから生まれたピッツァリア

料理人になろうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。

富永さん:高校生の頃、テレビで料理関連の番組がたくさん放送されていてよく見てたんですよ。『料理の鉄人』の調理対決とかピザ窯を巡る旅行記とか「すげーおもしれー」って。それで料理の世界って楽しそうだなと思ったのがきっかけ。自分は工業高校に通っていて機械の勉強をしていたので、全く畑違いの進路に進みました。

若者らしい思い切った決断ですね。

富永さん:高校卒業後は大阪の専門学校で調理の基礎を学び、そのまま就職。大阪で修業したのは15年くらいかな。最初の10年くらいはアジア料理屋やステーキ屋といった飲食店で勤務して厨房はもちろん、フロアサービスの仕事もしましたね。

10年間いろいろな経験を積まれる中で、最後はイタリアンを選ばれました。

富永さん:修業する中で「生まれ育った大村で自分の店を出したい」と考えるようになったんです。だったら自分の好きなイタリアンをやろう、と。そこにタイミングよく大阪にナポリピッツァの専門店ができたので門を叩きました。約5年、先輩からピザやパスタの調理方法をみっちりと学びました。

本場・イタリアへ訪れたこともあるそうですね。

富永さん:初めてイタリアの地を踏んだのは勤務していたピザ屋の研修旅行。写真や映像ではわからない現地の雰囲気や香り、本場ナポリのピザやパスタを味わえたことは私にとって大きな経験になりました。その後、研修とプライベートあわせてイタリアを訪れたのは10回ほど。その度に良い刺激をもらって自分のピザづくりに活かしています。

陽気なイメージの強いイタリアですが、南北に縦長だったり四季があったりとヨーロッパにありながら日本と親和性の高い国ですよね。

富永さん:料理に関しても「素材を活かす」という部分が共通しているんです。特にナポリピッツァはその代表格。小麦粉、水、塩、イーストを混ぜて形成した丸い生地の上に食材を乗せて窯で焼く。まさに素材の味を組み合わせるというシンプルさがイタリア料理の魅力だと感じています。

素材、という部分にフォーカスすると、イル ロスパッチョではできるだけ地元で採れた野菜を使っていらっしゃいます。

富永さん:常にフレッシュな野菜を味わってもらえるようその日その日で食材を厳選しています。大村ではトマトをはじめピザやパスタにぴったりな野菜が収穫されているんですよ。これからも大村の野菜をPRできるようなメニューを提供していきたいですね。

「店のすぐ近くにはJAの産直市場がありますし、何より地域の農家の皆さんと仲良くしていただいています。島原や諫早に比べると比較的小規模な農家さんが多いのですが、その分コミュニケーションがとりやすく距離感もちょうど良いのが大村の良さだと思っています」

18歳で料理という未知の世界に踏み出した富永さんが10数年の修業を重ね故郷にオープンした「イル ロスパッチョ」。オープンから11年経った今も、生まれ育った大村と大好きなナポリへのリスペクトを忘れない素敵なイタリア料理店としてお客様に本場の味を届けています。

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
イル ロスパッチョ

長崎県大村市坂口町520-3 ( Google MAP

営業時間:

営業時間:ランチ11:30~14:00、ディナー17:30~21:30(月曜定休/不定休あり)

TEL: 0957-52-5056