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暮しを楽しむの手帖
新中国料理 謙張#2 料理人として親父を越えたい。若き二代目の情熱と夢

熊本県八代市にある「新中国料理 謙張」。平成元年に小さなちゃんぽん屋としてスタートし、今では豊富で美味しいメニューが味わえる大衆中華の店として地域の方々に愛されています。

そんな謙張を23歳という若さで任されているのが松永大陽さん。「小さい時からチャーハンやエビチリを食べてきたから僕の血液は中国料理でできています」と笑う二代目はフレッシュなアイデアと溢れ出すエネルギーで店舗を切り盛りしています。

中学生までは柔道やサッカーに打ち込んでいたスポーツ少年が料理人を志し、持ち前の明るさと行動力でさまざまな経験を積み家業を継ぐ・・・。松永さんにお聞きしたドラマのような半生、ぜひお読みください!

謙張の味は守りつつ、イノベーションを起こしていきたい

中学校卒業後に調理師学校へ進学した松永さん。料理人になろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

松永さん:きっかけは父ですね。僕の父は頑固者でいわゆる昭和の男。怒られたことは星の数ほどありましたが、褒められたことなんてほとんどなかった。だから中学生の頃には「何かで親父を追い越したい」「母ちゃんを楽させてやりたい」と思うようになりました。

「何か」で?・・・最初は料理ではなかったんですね。

松永さん:そう、追い越せるなら何でもよかったんです(笑)。それが変わったのが父と一緒に入ったお祭りの屋台。芋飴(大学芋)の実演販売だったのですが、普段は不機嫌そうな雰囲気の父が、白衣をまとって子どもから年配の方に囲まれながら笑顔で説明していて・・・。その姿がかっけーなって。それからですね。「料理人として親父を追い越してやろう」と心に決めました。

専門学校に通いながら系列のテイクアウト専門店で働いていたとお聞きしました。

松永さん:父から「お客さんとふれあいながら料理を作るのは良い経験になるから頑張ってみろ」って言われて学校に通いながら3年間やっていました。あと、調理師学校を卒業してからは外に修行に行きたいと考えていたので、東京や福岡の中華料理店を調べてよさそうなお店に直接電話して「1ヶ月、インターンで働かせてください!」とお願いしたりもしましたね。

フットワークが軽い!

松永さん:学生の身ながらすごく良い経験になりました。その中で「この人についていきたいな」という方と出会って、福岡にある広東料理SESSIONで働くことに。当初は5年くらいを予定していたのですが、新型コロナウイルスの流行を受けて1年半ほどに短縮することになりました。

これから、というタイミングでコロナが流行してしまったと。

松永さん:そうです。飲食店はほとんどそうだと思うのですが、謙張も売上が落ちて人員もギリギリという状況になってしまって。ここがなくなってしまっては元も子もない、と八代に戻ることにしたんです。1年半という短い期間でしたが、広東料理SESSION ではたくさんのことを学ぶことができ、今の自分の糧となっています。

八代に戻ってきたのが3年前。松永さんが20歳の時ですね。そこから謙張を任されたわけですが、どんなことに取り組まれたのでしょうか?

松永さん:店の基本的な部分を組みなおしたり、若い人材を集めるためにいろんな調理師学校に会社説明に行ったり。コロナ禍でもウチの料理を楽しんでいただけるようにテイクアウトメニューの開発も行いましたね。

調理だけではなく、経営にもしっかり関わっていらっしゃる。

松永さん:今は全く新しいメニューづくりにも取り組んでいます。父が育ててきた「日本人のための新しい中国料理」の味は守りつつ、新しいことを取り入れてイノベーションを起こしていきたいなと。その役割を担っているのが今年(2023年)4月からウチで働いている大藤桂汰シェフ。今は調理全般を彼に任せています。

松永さんが全幅の信頼を寄せている大藤シェフはどんな方なんですか?

松永さん:大藤シェフは福岡出身で中華の鉄人・陳建一さんの四川飯店グループの本店で働いていた経歴の持ち主。私がインターンで1ヶ月働いた時に指導してくださった縁があり、ウチの店に来てくださいました。24歳ですが技術も料理への向上心も非常に高い。特に陳さんから受け継いだ麻婆豆腐はぜひ味わっていただきたいですね。

四川飯店グループの本店から熊本に料理人が来るのって35年ぶりなんですよ。中華の鉄人仕込みの味を八代でお客様に提供できる。夢は一気に広がりました」と目を輝かせながら話す松永さん。相棒としてスカウトした大藤さんも創業34年の町中華の味をしっかりと継承し、陳建一から直接教えを受けた四川料理とともにお客様も舌を楽しませています。

不易流行。お互いに20代という若きふたりの料理人が九州のど真ん中で起こす中国料理のイノベーションに今後も大注目です!

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
新中国料理 謙張の入り口
新中国料理 謙張

熊本県八代市横手町1680-2 ( Google MAP

営業時間:

11:00~22:00(ランチ/11:00~15:00)

TEL: 0965-35-0575

URL:https://ken-chan.info/