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暮しを楽しむの手帖
旬の肴菜よね田#2 小さい店だからこそ、私もお客さんも居心地がいい

25年間、料理人としてのキャリアを積んできた米田尚弘さんが切り盛りする「旬の肴菜よね田」。大阪の高級割烹で10年以上修業して磨き続けてきた腕から生み出される料理の数々は、今日も諫早の人たちの舌を楽しませています。

そんな米田さんが独立して「旬の肴菜よね田」を開店したのは2011年。諫早市泉町の一軒屋を活用した店舗には大勢のお客様が足を運んでいました。それから10年が経った2021年。米田さんは現在の場所への移転リニューアルを決意します。カウンター6席という規模の縮小にこだわった理由とは何だったのか。米田さんの想いを伺いました。

偶然、隣に座ったふたりが仲良くなる。よね田が生み出す結びつき。

2021年に移転リニューアルオープンした現在の店舗。何かコンセプトはあるのでしょうか。

米田さん:自分が楽しく、ですね。独立した時(2011年)にオープンした店はカウンターと個室がある40席くらいの広さだったのですが、今の店はカウンター6席のみ。狭いと思われるかもしれませんが、私ひとりでゆとりをもって調理・接客できるちょうど良いキャパシティにしたかったんです。

あえて、こぢんまりした空間になさった、と。

米田さん:はい。店舗が広いということはそれだけお客さんの数も増え、一度に受ける注文も多くなります。もちろん売上は大きいのでやりがいはあったのですが、ずっと調理しているのでせっかく来てくれたお客さんとはしゃべれないし、スタッフのマネジメントや人員確保問題もあって、思い切って方向転換しようと思いました。

ご自身の負担が少なく、お客様が気軽に立ち寄れるような居酒屋を目指したわけですね。

米田さん:ウチにとって一度来店してくださった方は常連さん。コロナ対策が緩和されて新規の方も増えましたが、ありがたいことに皆さんリピーターになってくださいます。「この店は居心地のよかもんね」なんて言ってくださる方もいて、リニューアルして良かったなと感じることも多いです。

画像はInstagramより
カウンターに座って米田さんのお話を聞いていても、ちょうどいい距離感だなと感じています。

米田さん:元々、場が盛り上がるのが好きなんです。調理とお客さんとの会話を平行して行うのは結構大変なのですが、割烹での修業時代にカウンター越しにお客様の対応をしながら料理を作っていた経験が生きているなと思っています。

よね田の“居心地の良さ”ってどこにあると感じていらっしゃいますか?

米田さん:お客さん同士の会話、じゃないかな。この店って私と話がしたいってお客さんもいらっしゃるんですけど、ひとりで聞ける話なんて限界があるじゃないですか。だから、その話題を別のお客さんに振るんですよ。お客さん同士をくっつけるというのかな。そしたら意外に話に花が咲いて、自然と「二軒目行こうか~」ってなることもよくあります。

袖振り合うのも他生の縁。偶然、隣に座ったふたりが仲良くなれるなんて素敵だと思います。

米田さん:ありがとうございます。お客さん同士の話が弾んでいると店全体の雰囲気も明るくなるんですよね。ここで知り合った人が酒を酌み交わしながら話すことで親交を深めていく。偶然同じ日にきたお客さん同士が「おーい」って声をかけて隣に座る。地域の人にとって、ふとした時に立ち寄りたくなるような、そういう居場所になっていけたらいいなと思います。

画像はInstagramより

カウンターに焼酎の瓶を並べながら「前の店ではお酒もたくさん用意していましたが、今は数えるほどしかありません。置かないというよりはキャパ的に置けないんですけどね」と笑う米田さん。ついついおしゃべりをしたくなる親しみやすい人柄に心がほっこりします。

カウンターの壁には“言えなかったことをついぽろっとこぼしちゃうようなうかつな場所が、人生にはいるんじゃないかなあ”と書かれた某飲料メーカーのポスター。その文言を体現しているような「旬の肴菜よね田」は今日も訪れる人のおなかと心を満たしているのでした。

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
旬の肴菜よね田

長崎県諫早市上町2-3 ( Google MAP

営業時間:

17:00~24:00(不定休)

TEL: 0957-35-8088