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和食の定番である天ぷら、秘伝のタレをたっぷりと使った鰻料理、ランチに注文しやすい定食メニューなど、老舗の和食を味わうことができる大村市の「和風れすとらん浜田」。全国展開する京懐石の名店で修業を積んだ濵田宏久さんが手掛ける器には季節を感じる飾り切りが添えられるなど、お客様の目・鼻・口を楽しませています。
そんな濵田さんが先代から代表を継承したのが2019年。老舗料亭で副料理長を務めた経験を基に、令和の時代にあった事業スタイルへ転換してきました。最終回となる本記事では、代表就任から5年を振り返ってのエピソードや今後の展望をインタビュー。濵田さんが思い描く「和風れすとらん浜田」の未来図をお聞きして生きたと思います。
濵田さん:家族経営だからやりやすい部分もありますし、反対にそうでない部分もあります。先代と大きく衝突したのは、私が多すぎるメニューの数を絞って整理しようという方針を打ち出した時。父も何十年と商売人・料理人として店を守ってきた自負があったんでしょうね。「都会の料亭のやり方は大村では通用せんやろ」と結構強く反対されました。
濵田さん:子どものころから厨房で働く後姿を見てきたので、店の将来を案じる父の気持ちがわからなくもなかった。ただ、お客様に丁寧な料理を出すのは大前提として、私が重視しているのは売上や利益率といったデータ。「やってみらんとわからんやろう」と父の意見を押し切ってメニューを整理した結果、ちゃんと数字が出たので今は父も納得しているみたいです。
濵田さん:Instagramをはじめ、SNSは“無料でできる集客ツール”と言われたりしますが、個人的には広報・宣伝をしているという感覚はないんですよね。どちらかというと、実際にご来店くださるお客様とのコミュニケーションツールという感じ。だから、フォロワーを増やすというよりはストーリーズやDMでのやり取りを重視していますね。
濵田さん:エンタメ系なら数が多い方がいいんでしょうけど、ウチは飲食店ですからね。頑張って毎日投稿してしても来てもらえなければあまり意味がない。たくさん投稿して“いいね”が分散するよりも、更新頻度は少なくても一度でたくさんの“いいね”をもらえることが大事だなと。だからこそ自分自身がSNSを楽しんでいきたいと思っています。
濵田さん:私個人の将来の夢として据えているのが、外部の飲食店へ経営コンサルタントや料理の講師として関わること。どうしても自分の店のこととなると、経営者脳が働いて料理人として本当にやりたいことを抑えてしまうんです。だから、経営は別の人がしているところで、職人として理想の料理やアイデアを追求してみたいなという想いはありますね。
濵田さん:そうですね。私は20年近く大村から離れて生活していたので、先代から事業を引き継いでからはいろいろな場所に顔を出して少しずつ人脈を築いているところ。今、次男が通っている小学校のPTA会長も引き受けているんですけど、息子の同級生はもちろん、学区の子どもたちがすごく声をかけてくれるので嬉しい限りです。
濵田さん:とはいえ、まだ年に2~3回くらいですけど(笑)。2024年は耕作放棄地で牛の放牧をしている森川放牧畜産(西海市)さんにお声かけいただいて「海里森めぐりごはん」という企画で出張料理させていただきました。自然放牧で育った牛肉と大村湾の海底湧水…。これまでやった事の無い調理法でしたが自分でも驚くほど素材の味が生きていて、すごく良い経験になりました。
濵田さん:先ほども話した通り、個人的には突き詰めていく料理道が私にとって一番楽しいのかなと思っているので、ゆくゆくはもう少し規模を小さくして気分で開けるくらいのスタイルも考えています。ただ、小6の次男は「この店を継ぎたい!」と言っているので、もしかしたら数十年後は息子が私の代わりにこの店を経営しているかもしれませんね。
来年は長男が大学、次男が中学にそれぞれ進学。特に夢もなく『勉強したくない』という理由で料理人への道を選んだ私と違って、二人ともしっかり将来を見据えているようなので父としては頼もしい限りです」
お子さんたちの話題になると、優し気なパパの表情を浮かべて饒舌になる濵田さん。真剣な表情でお客様のために丁寧な仕事をする姿も、軽快なトークで楽しませようとするひょうきんな一面も、全てが彼の魅力です。
取材後、挨拶をして玄関を開けると後ろから「ありがとうございました!」と元気な声。軽く会釈をして歩き始めると、秋晴れの空のように私の心にも爽やかな風が吹いていました。
取材・執筆/Komori Daigo
長崎県大村市東三城町7-1 ( Google MAP )
営業時間:
昼11:30~14:00、夜17:00~19:00(水曜定休)
TEL: 0957−53−2188