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暮しを楽しむの手帖
たこやきたこ助女の都口店#2 ウマさの秘訣は焼き方にあり!味を引き立てる自家製天かすとオリジナルソースにもこだわりが

1983年に創業し、外はカリッと中はふわふわの食感で地域の人たちを虜にしてきた「たこやきたこ助長崎女の都口店」。長崎市と長与町をつなぐ県道113号沿いにある店舗にはタコのイラストが描かれたレトロ調の看板が掲げられ、胸の内にノスタルジックな感覚が去来します。

「今年(2024年)で41年目やけど、若者から年配の方まで客層は幅広いですね。最近は昼から夕方にかけてがピークですけど、昔は飲んだ後にタクシーに乗ってお土産を買いに来るサラリーマンも多かったとですよ。やけん、当時は夜23時まで開けていましたね」

店主の原口博明さんが長年積み重ねてきた経験とこだわりが詰まった“たこ助のたこ焼き”。その味を求めて来店するお客様も多いそう。今回の記事では、そんなたこ助の美味しさの秘密を紐解いていきたいと思います。

たこ焼きと向き合い幾年月。濃度が薄い生地をカリっと焼き上げる熟練の職人技

たこやきたこ助のこだわりポイントを教えてください。

原口さん:一番はやっぱり焼き方。ウチのたこ焼きは生地の濃度が薄いので、表面をカリっと焼き上げるのが難しい。最近は調理しているところを見せるチェーン店が増えてきて、誰でも簡単に丸いたこ焼きを作れると思われがちなんですけど、あれは生地が濃いからできること。ウチの食感と味わいは長年かけて培った熟練の技で生み出されてとっとですよ。

実際、どれくらい修業すればたこ助のたこ焼きとしてお客様に出せるようになるのでしょうか。

原口さん:最低でも10年は焼き続けんといかんと思います。実はかなり前に、アルバイトに焼かせてみたことがあったとですよ。正直、その時は「そんな難しくないやろ」くらいに思っていたんやけど、味見してみると同じ材料・同じ工程で作ったとは思えないほど美味しさの違いがくっきり。その時に、改めてたこ焼きの奥深さを再確認しましたね。

土日祝や年末年始・お盆になると1日でかなりの来店があるたこ助。お客様をできるだけお待たせしないように、回転率を上げる“ある工夫”をなさっていると聞きました。

原口さん:ああ、“七分焼き”やね。まず、たこ焼きを普通に作るっちゃけど、完成まで70%くらいの状態(七分焼き)になったら一端止めてホットケースで保管。注文が入ってから取り出して、表面がカリっとなる最後の仕上げを行います。もちろん、味は普通に焼いたものと遜色なし。美味しさと効率、どちらも大切にしたからこそ生まれた工夫たいね。

外はカリっと、中はふわふわ。その食感と味わいで約40年に渡って人気の「たこやきたこ助」。意外なことに、イベントなどへの出店はほとんどされたことがないそうですね。

原口さん:イベントは集客がすごいので興味がなかったわけじゃなかですし、出店オファーもたくさんいただきました。でも、ウチのたこ焼きをちゃんと焼けるのは自分しかおらんけん、イベントに出ると店舗を閉めなくちゃならない。そしたらせっかく店に買いに来てくれた人がかわいそうでしょう。イベントの売上は魅力的でしたけど、大切なのはベースの部分。それもひとつのこだわりやね。

たこ焼きの主役から味を引き立てる名わき役まで。細部までこだわる姿勢がたこ助流

前半では焼き方についてお話しいただいたわけですが、後半は具材やソースに焦点を当てていきたいと思います。まずはたこ焼きには欠かせない“タコ”について。

原口さん:ウチで仕入れているのは西アフリカにあるモーリタニア産のタコ。馴染みの魚屋さんにお願いして、毎日約5kg、刺身用の新鮮なタコを持ってきてもらっとる。食べたときに噛み応えがでるように大きめサイズのぶつ切りに。たこ焼きの半分ほどを占めているタコのサイズ感に驚かれるお客様も多かとですよ。

長崎近海ではタコ漁も行われているので地ダコを使用されているのかと思っていました。でもなぜモーリタニア産のタコなんでしょうか。

原口さん:長崎の地ダコは程よい弾力と甘味があって刺身で食べると最高!本当にうまかですよね。でも残念ながら、たこ焼きの具材にすると弾力が強すぎて合わなかったとですよ。その他にも中国産やベトナム産などいろんな場所のタコを試した結果、一番美味しかったのは身が緩めのモーリタニア産。ただ、最近は仕入値が上がってしまって…。でも妥協はせずにこれからも使っていきたいと思います。

たこ焼きの名わき役である“天かす”はお店で揚げた自家製のもの。

原口さん:天かすは「味にコクを出す」「とろみを安定させる」といった役割があるけん、たこ焼きには欠かせない食材です。ウチの天かすは生地に少し調味料を加えているのがポイント。また、天かすの油がにじみ出ることで、表面がカリっとした仕上がりになる。自前で天かすを用意するというひと手間で、一味違う風味と食感を生み出しとっとですよ。

そして、味の決め手となる“ソース”にもこだわりがあるそうですね。

原口さん:ソースも自家製で、ベースになっているのは長崎人にとってなじみ深い金蝶ソース。長崎のソウルフード・皿うどんの味を引き出すために生まれたウスターソースに、いろいろな調味料と小麦粉を加えることでトロミのついた濃厚でコクのある味わいになっとるんですよ。創業当初、苦心しながら生み出した秘伝のソース。長年、変わらない味を楽しんでほしかね。

1年前、車での移動販売でスタートした「たこ焼きたこ助」。最初は思うように売上が伸びず苦しい時期が続きましたが、美味しさを追求して試行錯誤を重ねた結果、その食感と味わいが徐々に認められ、人気店の仲間入りを果たしました。

「景気が良い時にはフランチャイズ化の話もありました。ただ、たこ助の屋号をつけるのであれば、この焼き方をマスターしてもらわないといけない。そうなると私が指導してまわるので、この店が開けられなくなる。そいは嫌やったけん、自分のできる範囲でやってきました」

フランチャイズ展開しない代わりに、たこ助のたこ焼きづくりを学びたいという人にはその技術を伝えてきたという原口さん。どこまで行っても相手のために。その真心がたこ助のたこ焼き最大の隠し味なのかもしれません。

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
たこやきたこ助女の都口店

長崎県西彼杵郡長与町高田郷600 ( Google MAP

営業時間:

10:00~21:00(月曜定休)

TEL: 095-843-9586