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美⾷都市研究会と雑誌『料理王国』が共同で創設した“美食都市アワード”。地域の食文化と魅力を融合させた都市に贈られる名誉あるもので、なんとその第1回の受賞都市に九州で唯一、雲仙市が選出されました。
古くから外国人の避暑地として知られる雲仙温泉の洋食メニュー、高温の泉質を活かした小浜温泉の蒸し料理、そして自然な農法で栽培される伝統野菜が評価され、日本初の美食都市アワードに輝いた雲仙市。「ゆやど雲仙新湯」の若女将・豊田桐子さんも「長年の地域の取り組みが評価されたことはとても嬉しい」と目を細めます。
雲仙温泉郷で明治時代から営業を続ける「ゆやど雲仙新湯」も、「島原半島15マイル宣言」を打ち出すなど“食”に力を入れている旅館のひとつ。第3回となる本記事では、伝統的な和食にこだわらないオリジナル会席を提供している同館の食事へのこだわりを伺っていきたいと思います。
豊田さん:「島原半島15マイル宣言」は先代の父が設けたコンセプト。火山が生んだ肥沃な土壌と3方を囲む豊かな海があり、農業・畜産業・水産業が盛んな島原半島の食材をできる限り使っていくことを表明したものです。当館を中心にした半径15マイルの円に島原半島がすっぽりと収まったことから、このフレーズを採用しました。
豊田さん:やはり、島原半島の魅力あふれる料理をお客様に堪能していただきたいので、食材選びは常にこだわっています。例えば、魚介類は毎朝市場でその日水揚げされた新鮮なものを仕入れ。そのほかにも、美食アワードで評価された自家採取の伝統野菜や地元で製造されたドレッシング、料理長お手製の醤油や味噌など、自然の恵みを詰め込んだ会席で提供しています。
豊田さん:まずは基本会席の「月仙(つき)会席」。鯛をメイン食材とし、素材の味を活かした鯛しゃぶは自家製のぽん酢とともにご好評いただいております。続いては「風仙(かぜ)会席」。月仙会席に鮑のしゃぶしゃぶが付いたワンランク上の会席で、贅沢な海の幸の食べ比べが人気なんですよ。
豊田さん:ありがとうございます。最後に紹介するのは「雅仙(みやび)会席」。長崎県産牛やアワビなど、料理長が厳選した旬の食材を贅沢に使った特選会席となっています。海の幸と山の幸に恵まれた島原半島。その真ん中に位置する雲仙だけでしか味わえない、贅沢な夕食をご堪能いただければ幸いです。
豊田さん:基本的には私の母である大女将が料理長にアイデアを相談し、それを形にしている、という感じですね。母は昔から料理好きで、料理本を集めたり食べ歩きをしたりしてとにかく勉強熱心。面白いものがあると「こういうの作ってみて」とアイデアを出すんですよ。それを基に料理長が試作品を作って、みんなで試食して意見を出し合いながら完成させていきます。
豊田さん:料理長はものづくりを楽しむクリエイター気質なんですよね。料理はもちろんなんですけど、調理器具も使いやすいものを自分で手作りしちゃうんですよ。先日もデザートに使う枠が気に入らなかったらしく、自分で納得いくものを制作していましたね。釣りも好きなので、魚介類の知識も豊富。私よりも宿に長く携わってもらっているので本当に頼りにしています。
豊田さん:やっぱりその食材の持つ味わいを大切にすること。だから基本的に味付けは薄めのものが多いと思います。先ほど2ヶ月ごとに料理内容を見直しているという話をしましたが、その季節に合った料理や旬の食材だけでなく、お客さまが目でも楽しんでいただけるように盛り付けや器選びも工夫してくれているんですよ。
豊田さん:当館では基本的に有田焼の器を使用。春夏秋冬、その季節を感じられるような食器をチョイスしていますので、器好きのお客様からはとても喜ばれています。そうそう、お部屋の湯のみは雲仙焼なんですよ。釉薬に普賢岳の火山灰を使った独特な風合いが特徴。うちだけのオリジナルデザインですので、ぜひそちらもご覧いただけたらと思います。
ゆやど雲仙新湯では用途や人数に合わせて5つの食事処をご用意。最後に、それぞれの食事会場を紹介していきましょう。
まずは5 室限定の半個室「あしかり」。雲仙ひのきの温かみと落ち着いた印象のお食事処となっています。続いては6 室限定の個室「月の庄」。掘りごたつ式のプライベート空間でゆっくりとお寛ぎいただけます。そのほかにも、庭を眺めながら食事ができるレストラン「ル・ベルジュ」や2種類の宴会場「月の舎」「秀峰」もあります。プランにより食事会場は異なりますので、公式サイトの予約ページにてご確認ください。
次回はいよいよ最終回。テーマは「雲仙の魅力」です。お楽しみに!
取材・執筆/Komori Daigo
長崎県雲仙市小浜町雲仙320 ( Google MAP )
営業時間:
チェックイン15:00~18:00、チェックアウト10:00
TEL: 0120-73-3301