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JR大村駅から徒歩10分。煉瓦色が印象的なインターロッキングブロックで舗装された道沿いを歩いていると、“スナック”や“ラウンジ”と書かれた色とりどりの看板が目に飛び込んできます。訪れたのはビルの1階にある「スナックJUN」。扉を開けると笑顔がチャーミングな中尾智子ママが出迎えてくださいます。
「オープンしたのは2008年。開業したオーナーママの名前がジュンコさんだったので、スナックJUNという名前になりました。私はオープンした年にここで働き始めて、2011年、31歳の時にママとしてこの店を継いだんですよ」
聞けば高校卒業後10年間は昼間の接客業で働いていたという智子ママ。そんな彼女がスナックJUNのオーナーとして切り盛りすることになった経緯を紐解いていくことで、その人柄に迫っていきたいと思います。
智子ママ:20代後半で「いつかマッサージサロンを開きたい」と思い仕事を辞めたんです。10年頑張ってきたんだからと羽休めをしている時に、知り合いに「なじみの店が人での足りんっていいよるけん、手伝ってみらんね?」と誘われて市内のスナックで働き始めました。
智子ママ:そのスナックのママが、働きながら施術の勉強をさせてもらえる整骨院の先生を紹介してくださったんです。昼間は整骨院で働きながら、夜はスナックという二足の草鞋の生活を送っていました。
智子ママ:スナックJUNでは私が唯一の20代。先輩やチーママはひと回り、オーナーママはふた回りほど離れていましたし、お客様も50代以上のシニア層が多かった。皆さんにはとてもかわいがってもらえましたし、何より肩ひじ張らずに自然体の自分でいられることがすごく心地よかったんですよね。
智子ママ:先代から「店を閉めようと思っているんだけど、良かったらオーナーママやってみない?」と声をかけていただきました。もちろん、最初は即断。お客さんもそんなについていないし、何よりママという器じゃないし・・・。整骨院の先生に相談したら「やったらいいじゃん」という答えが返ってきて、ママと整骨院を両立できるのか、と本当に悩みましたね。
智子ママ:閉店前の記念に「ご愛顧ありがとうございましたキャンペーン」みたいな企画をやったんですよ。そしたらいろんなお客さんから「智子ちゃんが継げばよかとに」って言われ続けて。私もいちいち否定するのが面倒になったのと、お酒の勢いも手伝って「じゃあ継げばよかとでしょ!」と宣言したんです。そしたら次に日には手続きの書類が届いてました(笑)。
智子ママ:。そんな感じだったので、最初の内は自分がママという意識すらなく働いていました。こだわりも特になかったので店名も内装もそのまま。不安もありましたが、先代からの付き合いのある常連さんたちが約束通り継続して通ってくださったので、ひとまず3年はオーナーママ業をがんばってみようと思いました。
智子ママ:ペーペーだった私を育ててくれたのはお客様と従業員。年上・年下・同世代、さまざまなタイプの人たちと関わっていく中で嬉しいことも大変なこともありました。そんな中、ママとして3年くらいたった時に常連さんたちから「ママ」と呼ばれるようになって。それまでは名前呼びが普通だったので、皆さんに認めてもらえたような気がして嬉しかったことを覚えていますね。
智子ママにとってスナックJUNは素のままの自分でいられる場所。それだけに、お客さまやスタッフにとっても気兼ねなく過ごせる空間にしたい、とほほ笑みます。
「社長・部長といった仕事の肩書、父・母といった家庭での役割を脱いで、ありのままに自分に戻ることができるのがスナックの魅力。だからこそ、お客様とのコミュニケーションでは話を傾聴することを大切にしています」
肩ひじ張らない社交場として、大村の幅広い世代に愛されているスナックJUN。自分の好きなお酒を飲みながらスタッフの皆さんや他のお客様と語らう時間・・・。仕事とも家庭とも違う緩やかな関係性が生み出す心地よさは、智子ママの温かく大きな器が土台になっているのかもしれません。
取材・執筆/Komori Daigo
長崎県大村市東本町379-7 ひまわりビル1F ( Google MAP )
営業時間:
20:00~25:00(不定休)
TEL: 07084349380