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ぶどうの木の下で地元の農畜産物を味わえるレストランや長崎県産の野菜や果物をたっぷり使ったアイス工房など多様な施設が並ぶ、大村市の農業交流拠点「おおむら夢ファームシュシュ」。市街地を見下ろす小高い丘にある敷地からは、穏やかな大村湾を背景に走る西九州新幹線「かもめ」の雄姿を眺めることができます。
食と農の体験ができる大村市の観光スポットとして年間に多くの人が訪れるシュシュ。そこから少し離れた場所で長崎県産の農作物を使用してジュースやジュレといった加工食品を製造しているのが「農産物加工センター」です。
地元の農家の要望を受け、2009年に稼働した同センター。シュシュの6次産業を支える屋台骨として15年にわたり加工食品の開発・製造に携わってきたセンター長の井上美由紀さんに農産物加工センターの歴史をお伺いしました。
井上さん:きっかけは「規格外の農作物を活用できないか」という地元農家さんからの要望でした。ジュースやジャムといった加工品にすることで常温での長期保存が可能になるだけでなく、旬の時期に材料を大量に仕入れて製造することによりお客様へ四季を通じて提供ができるのではないか、と考えたのです。
井上さん:ただ、当時は加工の「か」の字もわからなかったので、まずは長野にある施設で研修を受けて機械の操作や製造技術、ノウハウを学びました。でも、食品加工ってそんなに単純じゃない。そもそも、長野と長崎で採れる農作物って全然違うんですよ。最初の頃は同じように作業してもうまくいかないことも多く、何回も試作を繰り返していましたね。
井上さん:商品化第一号は「黒田五寸人参ジュース」。この商品は人参をすりおろした後、やわらかくなるまで1時間くらい煮込むんですよ。かなりの量があるので力もいりますし、ちょうど良い状態になっているかを見極めたり裏ごしをしたりとすごく手間がかかる。その分、すごく滑らかで口当たりの良い人参ジュースに仕上げることができました。
井上さん:梨ジュースも思い入れが深い商品の1つ。そもそも和梨って生で食べるのが一番おいしいので、当時は参考になる加工品がほとんどなかった。だから、水から煮だしてみたり果汁を絞ってストレートで使ってみたり・・・。和梨の味や食感をそのまま生かすにはどうしたらいいんだろうかとかなり悩みましたね。
井上さん:その通りです。今は10種類以上のジュースがありますが、全て製造方法が違います。加えて保存料・着色料・香料は一切使っていません。代わりに加熱殺菌をすることにより常温での長期保存が可能となり、贈答品としてもご購入いただきやすい安心・安全な商品となっています。
井上さん:いいなと思ったことはやってみよう、ということですね。新しい商品づくりのきっかけって色んな所から入ってくるんですよ。農業系の機関紙だったり、SNSだったり、メディアや業者さんからだったり・・・。センター内はもちろん、他部署から挙がってきたアイデアを試しに作ってみることはよくあります。
井上さん:まあ、ウチにある機械でできるかどうかが大前提なので、どうがんばってもイメージしたものを表現できないということは多々あります。でも、そうしたチャレンジの積み重ねが商品のブラッシュアップにつながっていますので、これからも素材の味を生かすという原点を忘れずに魅力的な商品を開発していきたいですね。
「シュシュの加工食品は市販のものに比べると価格帯は高め。その分、手間ひまかけて体にやさしい商品を作るよう心がけています。口に入るものだからこそ、お客様に安心・安全な商品としてお選びいただけているのではないでしょうか」と井上センター長。
長崎産の野菜・果物を有効活用して新たな付加価値を生み出し消費拡大につなげてきたシュシュの農産物加工センター。生産者の想いを理解している良きパートナーとして、これからも素材の味を生かした「食のものづくり」を模索し続けます。
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取材・執筆/Komori Daigo
長崎県大村市弥勒寺町486 ( Google MAP )
営業時間:
年末年始及び1・2・6・7・11月の第3水曜日
TEL: 0957-48-5582