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「地元の料理に合う酒を造り続けます。
技術の伝承と創造を旨とし、 新しい価値の酒を提供します。
酒や酒を体験いただく場を通じて お客様の人生を豊かにします。」
これらをブランドプロミスとして掲げ、180年の歴史ある蔵元として酒づくりはもちろん、地域活性化や海外への売り込みなどさまざまな活動に取り組んでいる諫早市の老舗酒蔵「杵の川」。今年(2023年)10月には観光プロジェクトの第一弾として古い工場をリノベーションした直売所「蔵元ファクトリーきのかわよかよか」をオープンしました。
そんな杵の川で“社長室室長”と“蔵の中のデザイナー”という2つの肩書で、企画立案や広報業務などを一手に引き受けているのが江口正和さんです。元々、地元の印刷会社に勤務していたという江口さん。不惑を越えて杵の川へ入社した経緯を伺う中で、柔和なお人柄の中に秘めた熱い郷土愛にふれることができました。
江口さん:そうなんです。杵の川に関わらせていただく中で、代表の瀬頭が掲げている「良か人と良か酒を育む酒蔵」というミッションや旨い日本酒を作るという皆さんの熱量など心を打たれることがたくさんあり、諫早になくてはならない会社だと当時から強く感じていました。
江口さん:前職に在籍して20年の節目を迎えたタイミングで「新しいことに挑戦したい」と退職。一ヶ月間、今後の人生でやりたいことはなんだろうか・・・と考える中で「日本の文化を応援したい」という想いにたどり着き、長い歴史を持つ杵の川とのご縁をいただきました。入社当時、杵の川は全国の酒類製造メーカーと同じようにコロナ禍の影響が残っていた。そんな状況の改善に経験やスキルを活かしていくことが私の使命だと感じています。
江口さん:とはいえ、業界全体の売上が落ち込んでいる中で私を迎え入れてくれた杵の川の懐の広さには感謝してもしきれません。だからこそ商品開発や企画立案、営業、広報など多岐にわたる業務も全力で取り組んでいます。インハウスなので高い目標を掲げて伝えるべきことはどんどん言っていますが、メンバーはとても協力的ですし、結果的に会社の成長につながるんじゃないかと考えています。
江口さん:大変、というよりも私が外から来た人間だからこそ不思議に感じたことはいろいろありましたね。例えば、杵の川にはもともと直売所があったのですがそこまでPRはしていなかった。個人的には「もっとガンガンPRしてガンガン売ればいいじゃん」と考えていたのですが、主なクライアントは酒屋さんや量販店なので自分たちが小売りに力を入れてしまうと競合関係になってしまうんです。
江口さん:なので、観光酒蔵と銘打って大々的に「蔵元ファクトリーきのかわよかよか」をオープンするに当たり、取引先や営業先には事前にしっかりと説明させていただきました。その後も定期的に営業スタッフがヒアリングを行っていますが批判的な意見はなく、メーカーがSNSでの発信やイベントへの出店といった活動をすることで小売店様にも新たな顧客が生れることをわかってくださっているんだなと感じています。
江口さん:私が入社して1年余りですが、杵の川の地道な活動や地域貢献への想い、チャレンジングな取り組みを通じて、地元の方々からはたくさんの応援をいただいています。「杵の川」の歴史を守り続けてきた先輩方の技術や想いを受け継ぎ、「良か人と良か酒を育む酒蔵」というアイデンティティを守っていくことが私たちの大きな使命だと思います。
江口さん:お酒って人間関係を潤滑にするひとつのツールだと思うんです。みんなで集まって酌み交わすことでコミュニケーションが生まれる。そういう日本酒を製造する私たちだからこそ、地域のお店や行政、交通機関などいろんなネットワークの中でしっかりと連携をとりながら諫早の魅力を発信していきたいですね。
実は、中学生になる江口さんのご子息も「ちびっ子イラストレーターSYOTARO」として活躍中。杵の川のグッズや地元イベントのチラシなど父から子へオーダーすることもあるんだとか。
「これ言っちゃうと親バカかもしれませんが、息子のイラストはすごく味がある。親子で地域活性化に取り組めることが誇らしく、本当に頼りになる息子ですね」と嬉しそうに話す表情からは優しいパパの顔が伺えます。
「杵の川で過ごした時間は1年ちょっとですが、酒米・山田錦の田植えや稲刈り、新幹線開業イベント、新製品開発・・・と密度の濃い経験をさせていただいています。仕事を通じて地元の魅力的な方々と知り合うことができたことも大きな財産。私個人としてもクリエイティブな力で地元に貢献をしていきたいなという想いがありますので、感謝を胸にこれからも活動していきますよ」
取材・執筆/Komori Daigo
長崎県諫早市土師野尾町17番地4 ( Google MAP )
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