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暮しを楽しむの手帖
ちわたや#1 茶バターのちわたや、大村でジェラート屋さん始めるってよ

長崎県大村市西本町

今年(2025年)7月、大村市西本町の国道34号線沿いに1軒のジェラート屋さんが誕生しました。そのお店の名前は「ちわたや」。そう、日本一の長崎そのぎ茶を使った『ちわたや茶バター』で大手メディアにも取り上げられた「ちわたや」が、大村市で新たな事業としてスタートさせたお店なんです。

オープンの2ヶ月前にSNSにアップされた「ちわたや、アイス屋さん始めます」という投稿は瞬く間に拡散。乳化安定剤や添加物を極力使わずに長崎の食材などを使って美味しいアイスクリームを作る、という挑戦はとても大きな反響を呼びました。

2017年、熊本から長崎へ移住してきた前野高宏さん・麻琴さん夫妻が東彼杵町にオープンした「ちわたや」。8年の営業を経て東彼杵の店舗と閉め、新天地・大村で新たな一歩を踏み出すことになったおふたりに、移転リニューアルの経緯やジェラートを選んだ理由などをお聞きしました。

コロナ禍で手づくり酵母パンから茶バターに事業チェンジした「ちわたや」の新たなチャレンジ

まずは移転リニューアル、おめでとうございます!お店の外観も内装も、シンプルながらすごく洗練されていてすごく素敵ですね。

麻琴さん:ありがとうございます。私たちの新店舗に対するイメージを汲み取って建築士さんが設計してくださったので、内装や外観の工事が進んで形になっていくのはすごくワクワクしました。新しいお店を始めるにあたってロゴマークも一新。入り口の暖簾にも大きく描かれているので、目についた方も多いんじゃないかなと思います。

おふたりが熊本から長崎・東彼杵町へ移住なさったのが2016年。翌年、古民家をリノベーションして「ちわたや」をオープンなさるわけですが、最初は熊本県産有機小麦と自家製酵母で作る手づくりパンのお店でした。

高宏さん:当時はたくさんのお客様にご来店いただいて、平日でも行列ができるほど盛況でした。大きな転換点となったのは2020年のコロナ禍。パン屋としてお店を開けられない状況が続く中、大手WEBメディアや有名雑誌、全国放送のテレビ番組などで“パンのおとも”として『ちわたや茶バター』を紹介していただいたんです。

※ちわたやオンラインショップより
おうち時間、お取り寄せがブームになっていた時期ですもんね。

麻琴さん:『ちわたや茶バター』自体はコロナ以前から製造・販売していたんですけど、オンラインショップで一気に3,000件とか爆発的に注文が入るようになって。夫婦2人で製造していたので、とてもじゃないですけど追いつかないんですよ。この状況下で手間のかかる自家製酵母パンとの両立は難しいと判断。徐々に茶バター事業だけにシフトしていきました。

2023年には法人格を取得した「ちわたや」。移転リニューアルの構想はいつ頃から練っていらっしゃったんですか?

高宏さん:計画は5年くらい前から。東彼杵の店舗は築70年以上の古民家だったから、衛生面とかバックヤードの狭さとか色々気になっていたんです。全国から注文は入るし、県内で小売りしてくださるお店も増えてきて、このままだとリスクが大きいかなと思って。でも、なかなか良い場所が見つからず…。諦めかけていた2024年の春にここを紹介していただいて、本当に運命的な出会いでしたね。

※ちわたやSNSより

長崎や九州の美味しいものを全国に伝えられるようなお菓子を作っていきたい

今年(2025年)2月、東彼杵の旧店舗を閉店し、大村の事務所へと移転。ジェラート専門店のオープンに先駆けて茶バターの製造所として稼働を始められました。

麻琴さん:縁もゆかりもなかった私たち家族を受け入れてくださった地域の皆さんには感謝しかありません。約8年に渡って生活してきた東彼杵。最後の製造の日は、胸にこみあげてくるものがありました。この場所で学んだことを力に、大村では自由に楽しく、自分達らしくがんばっていきたい。新しいことを始める不安もありましたが、それ以上に楽しみな気持ちが大きかったですね。

ところで、なぜ大村の新店舗では茶バターの製造と並行して、新事業としてジェラートの店をやろうと思われたのですか?

高宏さん:新しい事業をやる、と決めた時、「ちわたや」の強みはなんだろうって考えたんです。ひとつは茶バターの製造で取り組んできた“乳製品の製造”の技術、もうひとつは、地元の食材を使った“商品開発”の経験。これらを活かせるのはなんだろうと突き詰めた結果、たどり着いたのがアイスクリーム屋さんでした。

※ちわたやSNSより
そのぎ茶、壱岐の塩、ゆめのか苺、長崎ぶどう。アイスショーケースには美味しそうな色とりどりのジェラートが並んでいます。

麻琴さん:とにかく試作は毎日、試行錯誤の繰り返し。地元の生産者にいただいた食材の味を引き出すにはどうすればいいのか、本当にお客様に喜んでいただける味なのか…。夫婦であーでもないこーでもないと意見を出し合っていました。気づけば、オープン前にも関わらず試作品で業務用の冷蔵庫がギュウギュウになるほど。納得いくまで試したので、自信をもって商品を提供しています。

7月にオープンしたばかりの大村の「ちわたや」。新しいアイス屋さんとしてプレオープンから多くの方が訪れて話題になっていますが、これからどういうお店にしていきたいですか?

高宏さん:一番はお客様がいろいろ楽しめるお店。今はジェラート、フロート、ドリンク、茶バターというラインナップですけど、クレープとか出せるようになったら面白いですよね。あと、ゆくゆくはジェラートもオンラインショップで販売できるようにして、長崎や九州の美味しいものを全国に伝えていけたら最高だなと思っています。

※ちわたやSNSより

茶バター&ジェラートの会社として新しいスタートを切ったちわたや。大村市の新店舗オープンに合わせてロゴマークも新調しました。

そのモチーフとなったのが、約200年前に編纂された菓子図鑑『百菓之図』に描かれた和菓子。『百菓之図』は平戸藩10代藩主・松浦熈が平戸の菓子文化を後世に伝えるために作ったもので、和菓子・南蛮菓子など約100種類がイラストとレシピで紹介されています。

「ヨーロッパやアジアとの貿易の拠点だった長崎には、異文化が交差したようなユニークな菓子文化が生まれました。そんな長崎へ移住し、美味しい食材や生産者の方々に出会い、“食のものづくり”に真摯に向き合ってきた8年間。長崎や九州の美味しいものを全国に伝えられるようなお菓子を作りたい、という私たちの想いが表現された素敵なロゴマークだと感じています」

次回はちわたやの新事業・ジェラートについて紹介していきます。お楽しみに!

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
ちわたや

長崎県大村市西本町540-3 ( Google MAP

営業時間:

10:00~16:00(定休/日・月)

TEL: 0957-46-8806

URL:https://chiwataya.stores.jp/