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暮しを楽しむの手帖
ピアットコジマ#4 料理とは「考えさせてくれるもの」。八代の名店のシェフが語る、師から受け継いだ美学と10年先の未来

熊本県八代市横手新町

Googleクチコミ評価4.5(2026年3月現在)という、驚異的な支持を得ている熊本県八代市のイタリアン・ピアットコジマ。ネット上では「落ち着いた雰囲気で居心地がいい」「一品一品が丁寧で大満足」「八代でイタリアンならここ!」といった絶賛のコメントが絶えません。

なぜ、小島賢大シェフが紡ぎ出す一皿は、これほどまでに食べる人の心に響くのでしょうか。そこには、単なる技術を超えたシェフの信念と10年先を見据えた深い想いがありました。今回は、名店が歩んできた軌跡と未来への展望をじっくり伺います。

「基本をちゃんとやる」という矜持。食材の声を聴き、引き算で魅せる一皿の真髄

料理人として、日々これだけは譲れないという信念はありますか?

小島さん:一言で表すなら、基本こそ「ちゃんと」やる、ということに尽きます。私の料理人としてのベースは、長崎・ハウステンボスのホテルヨーロッパで学んだ経験が非常に大きい。下ごしらえのひとつひとつから、切る、焼くといった基本的な作業に至るまで、いかに丁寧に行うかが重要であると徹底的に叩き込まれました。今でも厨房に立つ際は、自分自身に「ちゃんとやれ!」と言い聞かせています。

基本に忠実であることが、おいしさの絶対的な土台になるのですね。

小島さん:調理が適当だったり基本を疎かにしたりして「おいしくない料理」ができちゃうことはあっても、この世に「おいしくない食材」なんて存在しない、というのが僕の持論なんです。食材の個性をちゃんと理解して正しく組み立てれば、料理は必ずおいしくなる。常に100点満点を維持するのは簡単じゃないですけど、クオリティの平均値をグッと高めていく努力は絶対に欠かしませんね。

※Instagramより
ピアットコジマの料理において、小島シェフならではの技法やこだわりはありますか?

小島さん:イタリアンって、実は和食と同じで「引き算」の料理なんです。かつての師匠から「3つの食材で一皿を作るのはベター、2つならベスト、1つで完成させるならパーフェクトだ」と言われた言葉を、今もずっと大切にしています。あれもこれもと盛り込むんじゃなく、あえて引くことで、基本の「ちゃんとした調理」を際立たせる一皿を目指しているんですよ。

フレンチの基礎とイタリアンの引き算。その融合が独自の味を作っていると。

小島さん:うちは奇をてらった新しい料理を目指しているわけじゃなくて、クラシックなものを自分なりに噛み砕いて解釈した料理をお出ししています。これは、自分一人で方向性を決めることができる個人店だからこその強みですね。自分らしさをしっかり出しつつ、いつも変わらないクオリティでお客様に楽しんでいただきたいなと思っています。

揺るぎない信念で歩んだ10年。地域に根ざし、遊び心と共に進化し続ける「考える料理」

2015年のオープンからこれまでを振り返って、特に印象に残っていることはありますか?

小島さん:うーん…。嬉しいことも大変なことも、いろんなことがあったのでひとつに絞るのは難しいですね(笑)。ただ、独立したばかりの頃は不安や焦りもあって迷走してしまうこともおおかったのですが、長く続けるうちに「自分の信念を見失わないこと」の大切さを学びました。

2020年には現在の場所へ移転されましたが、ちょうどコロナ禍という大変な時期でしたよね。

小島さん:実は2018年頃から店舗兼住宅の計画を進めていて、いよいよ移転!というタイミングが、たまたま緊急事態宣言と重なっちゃったんです。外食が難しい厳しい状況でしたけど、もう「やるしかない」って腹を括りました。リスクを怖がって止まるよりも、目の前の課題をひとつずつ丁寧にクリアしていくべきだと、改めて覚悟が決まった出来事でしたね。

そして昨年(2025年)には10周年を迎えられました。今後、新しく挑戦してみたいことはありますか?

小島さん:料理については、これからはもう少し「遊び心」を取り入れたメニューにも挑戦してみたいなと思っています。展望としては、これまで歩んできた10年と同じように、これからの10年もコツコツと頑張り続けること。そして10年後も変わらず、この八代という地域にしっかり根を下ろして、皆さんに愛され続けるお店でありたいですね。

最後に、小島シェフにとって「料理」とはどんな存在ですか?

小島さん:僕にとって料理は「考えさせてくれるもの」なんです。食材への向き合い方や生産者さんの想い、料理人としての哲学まで、向き合えば向き合うほど考えが深まっていきます。食材、料理、そしてお客様と対峙しながら、過去の経験を噛み砕いてまた新しいものを作る。その繰り返しのプロセスがあるからこそ、少しずつでも進化していけるんだなと感じています。

※Facebookより

「今お話ししたことは、あくまで現時点での僕の考え。5年後には、また全然違うことを言っているかもしれませんよ」と明るく笑う小島さん。現状に満足することなく、常に自問自答を繰り返しながら、より良い一皿を求めて進化し続ける姿は、厳しい自然の中でも自らの思考を深め続ける「考える葦」のようでもあります。

10年という月日を積み重ね、さらにその先の未来へ。進化を止めない小島シェフが、次はどんな「驚き」と「おいしさ」を届けてくれるのか。これからもピアットコジマから目が離せそうにありません。

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
ピアットコジマ

熊本県八代市横手新町14-15-1 ( Google MAP

営業時間:

lunch 11:30~15:00(13:30ラストイン)
dinner 18:00~22:00(20:00ラストイン)
※日曜定休

TEL: 090-6426-4305