キーワード検索

閉じる

暮しを楽しむの手帖
いけす料理 宗弘#1 波乱万丈の半生から掴んだ経営哲学。熊本・八代の名店を築いた63歳代表の物語

熊本県八代市本町

江戸時代、肥後熊本藩の第2の城下町として栄えた八代市中心部。当時の美しい地割りが今も残り、武家屋敷や町屋の面影を感じる本町エリアに2006年から店を構えているのが「いけす料理 宗弘」です。

代表を務める近宗道弘さんは御年63歳。経営者でありながら現役の漁師という顔も持ち、毎朝5~6時には愛船・馨丸で出漁し、水揚げした魚を市場に出し、昼過ぎから店舗に移動するという多忙な日々を送っています。

「父が68歳、母が48歳。今でいう超高齢出産ですごく珍しかったと思います」と笑顔で出自を教えてくれる近宗さん。そんな代表がいかにして、故郷・八代で市民に愛される飲食店を作り上げたのか、その歴史に迫ります。

スーパーの精肉部で磨いた目利き。母の余命宣告で決めた、八代への帰郷

近宗さんは八代のご出身とのことですが、宗弘を開業するまでにどのようなキャリアを歩んで来られたのでしょうか。

近宗さん:高校を出た後、年の離れた兄が北九州で魚屋を営んでおり、私もそちらで働き始めたんです。ただ、土地や水がなかなか合わず、半年ほどで八代へ引き上げました。その後は地元の魚屋に就職。朝4時に起きて夜8時まで働いて当然というような時代だったので、なかなか大変でしたね。

約1年勤務されたのち、デパートの精肉部スタッフへと転身なさいます。

近宗さん:きっかけは知り合いの方からの紹介でした。最初はアルバイトからのスタートだったのですが、なぜか気に入っていただいて無試験で社員として採用していただきました。勤務したのはアルバイト時代も含めて約8年。当時、日本一の売り上げを誇っていた鹿児島店へ栄転させてもらえたことも本当にありがたかったです。

精肉部での経験は、今のお仕事にどうつながっていますか。

近宗さん:私は現在も牛肉を丸ごと1本買い付けて自分で捌いているのですが、この目利きの技術はまさにこの時代に培ったものです。当時のデパートはお歳暮・お中元などの進物や特別な日のごちそうを買いに来る場所。ハレの日のための高級食材を毎日のように扱っていたことが、今の食材へのこだわりにつながっていると思います。

お聞きしていると順風満帆な人生のように感じます。なぜ、27歳の時に仕事を辞して八代に戻ることになさったのでしょうか。

近宗さん:母が末期がんで余命宣告を受けたことがきっかけですね。漁師だった父は私が15歳の時に他界していましたし、兄は独立して漁業・水産業の会社を経営していたので、自分が母の面倒を見なければ、と帰郷を決意。八代に戻ってからは兄の会社に入り、会社を手伝うようになりました。

※Facebookより

生産・流通・販売の一貫体制を確立。43歳での独立、そしてミシュラン掲載へ

兄弟そろって八代の海で働く。漁師として生計を立てていたお父様の稼業を継いだ形になりますね。

近宗さん:はい。父は廃業する時に漁業権だけは残していたので、兄がそれを活用して漁業を事業に組み込みました。ただ、「漁業1本でやっていくのは難しい」と考えていましたので、私のデパートでの経験を活かし、生産・流通・販売を一貫できる経営体制を確立。「飲食店もやってみよう」と兄に提案し、新事業にも挑戦しました。

一貫体制だからこそ、新鮮な海の幸を使った料理をリーズナブルに提供できると考えたわけですね。

近宗さん:その通りです。市場任せにせず、自分たちで魚を買い付け、都会の市場に卸す水産事業の傍ら、料理屋をオープンしました。せっかく仕入れた新鮮な魚介類を自分の手で美味しく仕上げたいと調理にもチャレンジ。飲食店経営、料理人の2足の草鞋を履きながら経験を積み、43歳で独立して「いけす料理 宗弘」を開業しました。

5年目には現在の店舗がある本町へ移転。豊かな八代海で育まれた鮮度抜群の魚介類を味わえる、と市民にとって馴染みのある名店に成長しました。

近宗さん:最初の店舗は古い建物を居抜きで借りていたので、段差が多かったり、階段が急だったりとハード面で課題があったんです。お客様からの要望もありましたので、思い切って移転し、バリアフリーや大人数での宴会に対応した店舗へリニューアル。活き〆の魚介類を味わっていただくために大きな生け簀も設置しました。

2018年には『ミシュランガイド熊本・大分特別版』にも掲載されました。

近宗さん:2014年に福岡・佐賀版のミシュランガイドが発行された時に、「いつかは自分たちもミシュランに掲載されるぞ!」と従業員一同、ひとつの目標にしていたので本当に嬉しかったです。地元の年配の方は「ミシュラン?」という感じでしたが(笑)、市外・県外からの観光客が来店してくださるようになりましたね。

近宗さんが紆余曲折を経て43歳で創業した株式会社 宗弘。「いけす料理 宗弘」の飲食事業だけでなく、漁業・水産仲買業を担う「宗弘水産」も手掛けており、ご自身の会社でも生産・流通・販売の一貫体制を敷いています。

「以前は私が買い付けも1人で担当していましたが、現在は水産部門に任せています。買い付けた魚は宗弘で使ったり、東京や関西へ出荷したり…。20年という経営の中で従業員が育ってくれたのは本当に心強いです」

次回は、そんな宗弘の厨房を支える県内外の仲買ネットワークや鮮度を保つ巨大いけす、そして270人という収容人数を誇る店内の空間づくりに迫ります。

取材・執筆/Komori Daigo

当記事は2026年7月28日に発生した熊本地震の前に取材させていただいたものです。
店舗様の許可をいただき掲載しております。
なお、営業状況やメニュー等の最新情報については直接店舗へご確認ください。

INFORMATION
いけす料理宗弘

熊本県八代市本町3丁目2-26 ( Google MAP )

営業時間:

11:30~14:30(OS14:00)、17:00~21:30(OS20:30)

TEL: 0965-33-2730

URL:https://munehiro.co.jp/

各種お手続き・お問い合わせ

代表番号(コールセンター)
0120-92-8623

■ 受付時間:平日8:50~17:20(土日、祝祭日、年末年始、お盆を除く)

※ 各支店へのお電話は、コールセンターでの受付となります。

※ 各地区で同じ町名がありますので、ご住所は市町村名からお知らせください。

※ お問合せはファックスでも受け付けています

ファックス(FAX)受付時間 / 9:00~17:00
※ファックス送信後、1~2時間経過後も連絡がない場合はお手数ですが再度ファックス送付をお願い致します。
  • 長崎・諫早エリアFAX 0957-23-8548
  • 佐世保・大村エリアFAX 0957-53-1982
  • 八代エリアFAX 0965-33-4136
  • 島原・小浜エリアFAX 0957-74-5795