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暮しを楽しむの手帖
焼肉八屋#4 稼げる仕組みをデザインする。商業建築のプロが自社店舗を“生きたモデルルーム”として公開する理由

長崎県諫早市上町

2026年1月、長崎県諫早市上町の歴史ある通りに誕生した「焼肉八屋」。古民家を見事に再生させたその佇まいは、単にお腹を満たす場所という枠を超え、街に新しい活気と彩りをもたらす拠点として早くも注目を集めています。

このプロジェクトを牽引したのは、地元で建築業を営むミヤマディベロップメント株式会社の代表、山本道雄さん。連載最終回となる今回は、山本代表が語る「地域貢献」、そしてこれから自分の店を持ちたいと願う人々へ贈る「建築士としての使命」について、深くお話を伺いました。

焼肉店の2階を中高生のためのフリースペースに

これまで「焼肉八屋」の誕生秘話や空間のこだわりを伺ってきましたが、この場所が今後、地域の中でどのような存在になっていくことを願っていますか?

山本さん:そうですね。現在は1階の焼肉店をメインに稼働させていますが、実は2階の活用についても大きな構想があるんです。ゆくゆくは、諫早の中高生たちがリラックスして勉強したり、放課後を過ごしたりできるフリースペースとして開放したいと考えているんですよ。

飲食店の2階が学生たちの居場所になるというのは、とてもユニークな取り組みですね。

山本さん:私はこの諫早で生まれ育ちましたから、建築や設計という自分の仕事を通じて、少しでも街の未来に貢献できればという想いが、根底に強くあるんです。そのために、2階もしっかりとリフォームして準備を整えてきました。

最近の教育現場では『探究活動の時間』が重要視されていますよね。そうした自主的な学びや活動の拠点としてここを使ってもらえたら、非常に面白い化学反応が起きるんじゃないかとワクワクしているんです。

さて、ミヤマディベロップメントとしては、この自社店舗の運営という大きな一歩を踏み出されました。ここから見える、次の展望についてもお聞かせください。

山本さん:私たち建築士が提供すべき価値は、単にお洒落な図面を描くことだけではない、と私は考えています。最も重要なのは、その空間でお客様が自然と足を運んでくださる「仕組み」そのものをデザインすることなんです。

ですから当社では、設計の段階から業種に応じた想定客単価や損益分岐点までを詳細に計算し、経営的な視点を持ったご提案を行っています。建てる前のワクワクだけでなく、建てた後の持続可能な経営までをサポートするのが、私たちのスタイルです。

経営の根幹まで一緒に考えていただけるのは、これから起業・独立を考えている方にとって何より心強いですね。

山本さん:ただ、これまでは当社の強みを具体的にお見せできる場所が限られていて、イメージしていただくのに苦労していた部分もあったんです。

ですが今回、自社店舗として「焼肉八屋」を作ったことで、小規模店舗の実践的なモデルケースとしてお見せできるようになりました。営業時間外の日中の時間帯であれば、実際に内見していただくことも可能です。現場の空気を感じながら、設計上の細かな意図を直接ご説明できるのは、大きなメリットだと自負しています。

まさに「生きたモデルルーム」ですね。最近はコロナ禍を経て、店舗に求められる形も変わってきているのではないでしょうか?

山本さん:おっしゃる通りです。実際に「独立して飲食店を始めたい」というご相談を多くいただきますが、特に最近は、少人数かつ効率的に運営できる小規模店舗へのニーズが格段に高まっているのを実感しています。

例えば、思わず足をとめたくなる外観のデザインやスタッフが最小限の動きでサービスできる動線設計。これらは建築士の知見で十分にカバーできる領域です。独立を志す方々が、焼肉八屋の空間を肌で感じることで、ご自身の夢をより具体的にイメージできるのではないかと考えています。

それでは最後に、これから自分の店を持ちたい、あるいは新しい挑戦をしたいと考えている読者の方へメッセージをお願いします。

山本さん:自分のお店を持つということは、大きな喜びであると同時に、不安もつきまとうもの。だからこそ、建築士が論理的な根拠に基づいて「成功のための設計」をしていることを知っていただければ、それは大きな安心材料になるはずです。

私たちはこれからも、本業である設計・建築を通じ、新たな一歩を踏み出そうとする人たちの一番の理解者であり、一番近い伴走者であり続けたいと思っています。どんな小さな不安でも構いません。ぜひ、私たちにその夢をお聞かせください。

さまざまな視点から全4回にわたってお届けしてきた、諫早市のミヤマディベロップメント株式会社と「焼肉八屋」の物語、いかがだったでしょうか。

自社物件として古民家を再生させ、小さな焼肉店を誕生させた裏側には、単なる事業拡大ではない、山本代表の「街を想う、人を支える」という揺るぎない信念がありました。

美味しい焼肉で人々を笑顔にし、2階のフリースペースで次世代を育み、そして新たな挑戦者の夢を建築の力で支えていく。山本代表が描く「仕組みのデザイン」は、これからも諫早の街に温かな光を灯し、より豊かな未来を形作っていくことでしょう。

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
焼肉八屋

長崎県諫早市上町1-2 ( Google MAP

営業時間:

17:30~(不定休)

TEL: 0957-33-9132

URL:https://miyamadevelopment.bsj.jp/