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暮しを楽しむの手帖
Bar Roots #4 地域に愛され続けるバーであるために。諫早育ちの40代オーナーバーテンダーが思い描く今後の展望とは

長崎県諫早市栄町

2012年にオープンし、10年以上に渡って諫早のナイトシーンを盛り上げている「Bar Roots(バールーツ)」。オーナー兼バーテンダーである大田尾勝人さんのプロフェッショナルな技術とゆったりと過ごせる落ち着いた空間が印象的なナイトスポットです。

「ウチの客層は20代半ば~50代の男性がメイン。諫早市内では女性のお客様や20代後半の子も多いんじゃないかなと思います。毎年9月がアニバーサリーなんですけど、周年記念を迎えるたびに長く応援してくださっている常連さんのありがたさを感じますね」

今年(2025年)5月に始めたランチ営業が軌道に乗れば営業時間の変更やスタッフの増員を考えているんですよ、とほほ笑む大田尾オーナー。最終回の記事では、まもなく13周年を迎えるBar Roots(バールーツ)の“これまで”と“これから”を伺っていきたいと思います。

お客様との何気ない会話から学んだ柔軟な発想力

2012年にオープンし、今年(2025年)9月で13周年を迎えるBar Roots(バールーツ)。これまでの営業の中で印象に残っている出来事があれば教えてください。

大田尾さん:個人的にはドラマチックなことよりも、お客様との何気ない会話の中で気づかされたことというのが印象に残っていますね。例えば“ニック”事件。20代のお客様だったんですけど、注文を伺うと「ニックください」って言われるんですよ。ニック、なんて名前も銘柄も聞いたことがなかったので「それはどういうお酒ですか?」って伺ったんです。そしたら…

そしたら…?

大田尾さん:笑顔で「ジンとニックの“ニック”ですよ」って。さすがに「いやいや、お客さん!ジン“ト”ニックだから!トム&ジェリーじゃないんだから!」ってツッコミをいれました(笑)。同じようなのでウイスキーの“モーレン寺”っていうのもあったなぁ…。面白い笑い話ではあるんですけど、知らないからこその柔軟な思考って大切だなって思って、すごく印象に残っていますね。

オープン当時と現在で、変わったなと感じることはありますか?

大田尾さん:やっぱりコロナの前後で、皆さんの夜の楽しみ方は大きく変わりましたよね。2010年代は朝の営業終了まで2回転が通常運転。週末は朝7時でも満席なんて日が結構ありました。でも、今は遅くまで飲み歩くという人は減少。それに合わせるように居酒屋さんの営業時間も短くなり、2軒目に当店を選ぶというお客様が増えたなという印象です。

コロナ禍での外食離れ・酒離れに、人手不足と人件費の高騰も重なりましたもんね。飲食業界全体の大きなターニングポイントだったように思います。

大田尾さん:ただ、コロナ禍も悪いことばかりじゃなかった。店を開けないことで時間に余裕ができ、私にとってはいろんなことを見つめ直す良い期間になりました。おそらくコロナがなかったら改修(2022年)してなかったと思いますし。やっぱり10年経つと趣味・嗜好が変わってくるので、個人的にはシックさを増した今の雰囲気はすごく好きですね。

お客様に喜んでいただける店であり続けたい

では続いて、今後、大田尾さんがチャレンジしてみたいことをお聞かせください。

大田尾さん:最近、日本料理に興味があるんです。今はピザとかパスタとか洋食のフードがほとんどなんですけど、もっと和のテイストを増やせたらいいな、と。ただ、日本料理は繊細で高度な技術が必要ですし、私自身、ほとんど経験がない。出汁の取り方や素材を活かした味付けといった基礎からしっかり身につけたいと考えています。

興味を持ったら蕎麦打ちまで始めてメニュー化しちゃうのが大田尾さんなので、遠くない将来に和の料理がお品書きに並びそうです。

大田尾さん:そうなるように努力しなきゃいけませんね(笑)。最終的なゴールは、和のテイストでジンやウイスキーに合うお洒落で美味しい一皿を作ること。ニックやモーレン寺の話じゃないですけど、日本料理の経験が少ないからこそ、知識に縛られない自由で柔軟な発想ができると思うんです。いつか、食べたお客さんを「なんこい!?」と驚かせたいですね。

お客様が食事を選ぶ楽しみがさらに増えますね。

大田尾さん:ただ、個人的にはフードを突き詰めて3品くらいに絞りたいなとずっと考えているんですよ。おつまみにも食事にもなる、「この3種類あれば完璧やろ」くらいの感じで。ただ、料理の勉強をすればするほど、「これもうまそう」「こっちもいいな」となってしまうんですよね(笑)。なので、これはまだまだ先の話。その日を楽しみに待っていただけたらと嬉しいです。

それでは最後に、今後の展望を教えてください。

大田尾さん:一番は、お客様に喜んでいただける店であり続けたい、ということ。これは開業当時からずっと変わらない大きな目標です。美味しいお酒や食事を提供するだけでなく、大人の社交場の主としてニーズを的確に捉え、最高のホスピタリティでお出迎えする…。これからもお客様の素敵なひとときをBar Roots(バールーツ)で演出していけるよう精進していきたいと思います。

Bar Roots(バールーツ)が諫早で開業したのはオーナーが31歳の時。それから10年以上の月日が経ち、バーテンダーとして円熟味を増した大田尾さんのもとには、ランチタイム・バータイム問わず、多くの常連客が訪れています。

「バーテンダーはお酒を作るのがメインなので、料理人に比べて体力を使わない分、選手生命が長い。50代、60代でもバーカウンターに立っていらっしゃる方はたくさんいます。Bar Roots(バールーツ)も地域に愛されるお店として20年、30年と続けられるよう、楽しみながら努力を重ねていきますよ」

穏やかな表情でこれからの展望を話してくださった大田尾さん。その目にはバーテンダーとしての情熱の炎が静かに燃えているよう。おじいちゃんになっても、バーカウンターでスマートにお酒を作る姿を見せてくださいね。

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
Bar Roots

長崎県諫早市栄町6-12林谷ビル1F ( Google MAP

営業時間:

ランチタイム/11:30~14:00(月火木金のみ)
BARタイム/20:00~翌3:00(金・土は翌4:00まで)
※水曜定休
※ランチはたまに土日もオープンしています。まずはGoogleでチェックしてください。

TEL: 0957-47-5630