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暮しを楽しむの手帖
ピアットコジマ#1 八代で愛されて10年。名門ホテルで学んだ「料理の心」と独立までの軌跡

熊本県八代市横手新町

熊本県八代市の閑静な住宅街に佇むイタリアンレストラン「ピアットコジマ」。2015年のオープン以来、地元の食材を活かした料理とあたたかなおもてなしで、多くのファンを魅了し続けています。

オーナーシェフの小島賢大さんは、長崎・ハウステンボスの名門ホテルや福岡の最先端ダイニング、そしてアメリカ・ニューヨークで腕を磨いた実力派。そんな小島さんが料理の道を選んだ意外なきっかけから、フレンチの基礎を叩き込まれた修業時代、そして葛藤の末に掴み取った独立への軌跡を伺い、その情熱の源流を紐解きます。

いつか自分の店を。巨匠の下で叩き込まれた料理人としての揺るぎない基礎

まずは、小島さんが料理の道に進もうと思ったきっかけを教えてください。

小島さん:実は「これだ!」っていうドラマチックなきっかけがあったわけじゃないんですよ。もともと勉強に打ち込むタイプではなかったので、勉強以外で自分に何ができるかなと考えた時に、パッと浮かんだのが料理だったんです。中学生の頃には、どこかぼんやりと「料理人になれたらいいな」なんて思っていましたね。

なぜ洋食をやろうと思われたのでしょうか。

小島さん:なんとなく、自分の店を持つなら「洋食がいいな」というイメージがありました。いわゆる“シェフ”という姿への憧れがあったんでしょうね(笑)。なので、福岡の調理師専門学校を卒業して最初に選んだのがハウステンボス。フランス料理を提供しているハウステンボスホテルズで、私の料理人人生がスタートしたんです。

数ある名店の中でも、ハウステンボスを選んだ決め手は何だったのでしょう。

小島さん:当時、ホテルヨーロッパの総料理長を務めていらしたのが、上柿元勝シェフだったんですよ。憧れというよりは、専門学校の先生から「料理人を長く続けるつもりなら、一流の方の下で基本を徹底的に学んだ方がいいぞ」とアドバイスをいただいたのが大きかったですね。入社してからはもう、フレンチのベースを厳しく、みっちりと叩き込まれました。

その後、福岡の「WITH THE STYLE FUKUOKA」へ移られます。そこではどんな経験をされたのですか?

小島さん:イタリアンを軸にした創作料理のダイニングで、イタリアンを本格的に学ぶ大切な場になりました。全国展開している系列ホテルだったこともあって、イタリアン以外にも鉄板料理やブライダル、メニュー開発、さらにはイベントの屋台販売まで、本当に幅広く経験させてもらえたんです。また、ニューヨーク・マンハッタンでの勤務もすごく刺激的で、今でも大きな財産になっていますね。

※Instagramより

華やかさの裏側で抱いた葛藤。天才たちの中で「自分にしかできないこと」を求めて

華やかなキャリアを積む中で、いつ頃から独立を意識し始めたのでしょうか。

小島さん:そうですね…。当時の職場には、まさに天才と呼びたくなるような料理人がたくさんいたんですよ。天性のセンスがあって、しかも努力も惜しまない。そんな仲間たちと切磋琢磨する中で、ふと10年後の自分を想像した時に、限界を感じた瞬間があったんです。「自分はこの組織でずっと生き残っていけるだろうか、彼らと戦い続けられるだろうか」という不安感が、最初のきっかけでした。

その不安を抱えながらも、最終的に「よし、独立しよう!」と決めた決め手は何でしたか?

小島さん:売上管理やマネタイズ、採用、教育といった経営の側面を学べたことが転機になりました。スキルが身につくにつれて、自分の市場価値を数字で想像できるようになったんです。「もし自分で店をやったら、どのくらいの数字が作れるだろう」と計算してみたら、意外にも「十分にやっていけるんじゃないか」という確信に変わっていったんですよね。

料理という技術を「数字」という客観的な視点で捉え直してみたのですね。

小島さん:一人の料理人として、自分にどれだけ稼ぐ力があるのか、正面から試してみたくなったんですよね。その一方で、「いつかはお店を持ちたい」と言いながらも、なかなか一歩を踏み出せない自分にイライラしていたんです。だから「いつか、なんて言ってる奴は一生独立できないぞ!」ってマインドチェンジして、独立という夢に向かって一歩を踏み出しました。

そして2015年、ついに故郷・八代での挑戦が始まったわけですね。

小島さん:ちょうど子どもが小学校に上がるタイミングだったので、妻とも話し合って、親戚を頼りやすい八代市(松江本町)に店を構えることにしました。それから早いものでもう10年。ここまで歩んでこれたのは、お店を愛して支えてくださる地域の皆さんがいてくれたからこそです。今の私にあるのは、本当に感謝の気持ちだけですね。

「独立を発表した時は、友人や調理師仲間から『えっ、お前が!?』ってすごく驚かれましたね。そういうキャラじゃなかったんで(笑)」

2020年には現在の横手新町へと移転リニューアルを果たし、昨年(2025年)には無事に10周年を迎えたピアットコジマ。「地域に根差したイタリアンとして、多くの方に楽しんでいただけることが、料理人として最高の喜びです」と語る小島シェフの笑顔には、確かな充実感が滲んでいました。

次回は、ピアットコジマの根幹でもある、食材へのこだわりと新たな魅力を引き出すアプローチについて小島オーナーにインタビューします。お楽しみに!

取材・執筆/Komori Daigo

INFORMATION
ピアットコジマ

熊本県八代市横手新町14-15-1 ( Google MAP

営業時間:

lunch 11:30~15:00(13:30ラストイン)
dinner 18:00~22:00(20:00ラストイン)
※日曜定休

TEL: 090-6426-4305