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長崎県長崎市銅座町
2002年に長崎初の角煮専門店として「角煮家こじま」の事業をスタートさせた有限会社こじま。長崎卓袱角煮や皮付き三枚肉の角煮まんなど、長崎ご当地グルメとしてヒットを飛ばしてきた同社はそのポテンシャルの高さを買われ、2021年、ミタニ建設工業(高知市)に事業を譲渡しました。
「話を持ち掛けたのはこじまから。ミタニ建設工業が得意なSNSの発信力に魅力を感じたのがきっかけだったそうです」と教えてくれたのは取締役社長の川中康之さん。こじまが子会社として再スタートを切る中で、2024年に現在の役職に就任なさいました。
40代で営業職として入社し、卸先への訪問、地元のイベントや全国の催事・フェアへの出店など、企画・販売に関わる業務に携わってきた川中さん。そんな彼が思い描く、これからの角煮家こじまについてお話をお聞きしていきます。

川中さん:今から十数年前の話になりますが、入社して最初に参加した広島・天満屋での催事ですね。私自身、初めての催事部隊ということでとても緊張していたのですが、ご購入いただいたお客様が本当に温かくて。長崎から遠く離れた場所なのにたくさんの方が足を運んでくださる姿を目の当たりにして、「角煮まんってこんなに親しまれているんだ…!」と衝撃を受けましたね。
川中さん:もちろん、角煮まんの認知度を高めるために、毎年、広島市で開催されるフラワーフェスティバルへ出店していたことも大きかったと思います。それでも美味しさが評価されなければ何年も行列はできません。そういう意味でも「こじまが作る角煮は長崎伝統の味なんだ」と実感できたことは私にとってすごく大きな財産になりました。

川中さん:あとはミタニ建設工業(高知)のM&Aによる子会社化(2021年)。当時、ほとんどの社員は全く聞かされていなくて。私もその一人だったんですけど、食堂でテレビを見ていたらニュースが流れてきて本当に驚きました。新体制になった後、営業から経営企画の室長に異動。1年半ほど前に取締役社長の打診があったのですが、自分でいいのか…という不安は大きかったですね。
川中さん:スタッフの皆が笑って働ける環境づくり、でしょうか。私自身、営業職として勤務していた期間が長いのでどうしてもそちら(従業員)側の目線になってしまうのですが、従業員ファーストは意識していますね。従業員のご家族の方々が自然とこじまのファンになってくれる。そんな会社であり続けることができたらと考えています。

川中さん:今、私たちが取り組もうとしているテーマは2つあります。1つ目は「長崎への地域貢献」。地元のさまざまなメーカーさんにお声かけしながら、当社の技術を活かして長崎に密着した活動を行っていきたいと思っています。
川中さん:すでに動き出している新ブランドとして「BunsLABO(バンズラボ)」があります。当社のまんじゅう生地に特化したキッチンカー事業で、角煮の代わりに松浦のアジフライや島原ハムといった県産品を挟んだオリジナルバーガーを開発・販売する予定です。今年(2025年)8月には浜屋百貨店で試験的に期間限定店舗をオープンしましたが、非常に好評でした。

川中さん:2つ目は「子どもたちへの食育」です。“こじまの角煮”は、長崎の卓袱料理を基礎とした昔ながらの製法で作っています。その伝統的な味を長崎の歴史・文化とともに子どもたちに伝えていく。そして、こじまの角煮を食べて美味しさに感動した子どもたちが、大人になっても長崎の郷土料理として誇りに思ってもらえれば嬉しいですね。
川中さん:そうですね。だからこそ、まずは地元に住む方々に「長崎と言えば、こじまの角煮だよね」「角煮を食べるなら割烹こじま」と言っていただける存在になることが大切。そのためにも、長崎に貢献できるような企業活動を展開して、長崎市民に愛される企業として成長していきたいと考えています。

自社の商品の中でも、特に「角煮まん」については全国的な認知度をもっと高めていきたいと話す川中社長。同じく長崎の角煮まんじゅうを販売している競合の岩崎本舗(長崎市)について尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「岩崎本舗さんは知名度もありますし、ライバルとして『追い越したい』という気持ちもあります。でも個人的には、角煮まんじゅうの魅力を全国に広めていくための同志だ、という感覚が強いんですよね。ですから、これからも一緒に業界を盛り上げていければと思っています」
取材・執筆/Komori Daigo

長崎県長崎市銅座町6-12 ( Google MAP )
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9時~19時
TEL: 095-822-7811
通販サイト:https://www.kakuniya.jp/